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新・地域医療構想と医師確保|外科・麻酔の集約と医師派遣の再配分が「機能選択」を左右する

新・地域医療構想と医師確保|外科・麻酔の集約と医師派遣の再配分が「機能選択」を左右する

更新日:

2026/8/18

新・地域医療構想と医師確保|外科・麻酔の集約と医師派遣の再配分が「機能選択」を左右する|メソッド

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本記事は、当社システム(ドクターズプライムワーク)で2025年12月末時点までに100病院超・累計救急受入患者数16万人の救急体制改善を支援してきた現場知見と、一次情報(厚生労働省医政局「地域医療構想策定ガイドライン」、地域医療構想及び医療計画等に関する検討会「新たな地域医療構想に関するとりまとめ」、厚生労働省「医師偏在の是正に向けた総合的な対策パッケージ」)をもとに作成しています。本記事が解説するのは、「新・地域医療構想で自院が担う機能を決めるとき、医師の確保・派遣という制約条件をどう織り込むか」です。

※本記事は2026年7月時点の情報に基づいています。今後、都道府県ごとの協議によって運用が具体化していくため、最新の状況は厚生労働省「2040年に向けた地域医療構想」でご確認ください。

新・地域医療構想では、自院が2040年に担う機能を「救急搬送受入件数」や「手術件数」といった診療実績で決めていきます。ところが、その実績を生む土台である医師を、どの診療領域でどれだけ確保できるか——ここを抜きにして機能は選べません。急性期拠点を狙うのか、高齢者救急・地域急性期を担い続けるのか。その分岐は、医師派遣の再配分という、もう一つの制度変化と連動して動き始めています。本記事では、人材という制約条件を軸に、機能選択の実際を一次情報に即して整理します。

この記事の要点(30秒サマリー)

  • 機能は実績で決まるが、実績は人で決まる:ガイドラインは拠点選定の確認項目に「医師をはじめとする医療従事者の確保の見込み」を明記しています。診療実績と人材確保は、切り離せない一対の条件です。

  • 外科・麻酔の集約は「手術の集約」の必然:急性期拠点への人的協力として、ガイドラインは外科医・麻酔科医等を名指しします。これは欠員リスクが両科に限られる意味ではなく、手術を集約する論理の帰結です。

  • 医師派遣が都道府県主導で再配分される:大学病院本院が医局の医師数等を都道府県に共有し、都道府県が地域医療構想を踏まえて派遣が必要な病院を調整する枠組みが示されました。機能決定と医師配置は連動します。

  • 問われるのは「どの領域の医師を、どれだけ」:人材確保の基本は、どの地域に、どの診療領域の医師を、どの程度確保するかの設計です。当直・救急を回す人的体制を維持できるかが、機能選択の制約条件になります。

機能は診療実績で決まる。ただし、その実績は「人」がつくる

機能は診療実績で決まりますが、その実績を将来にわたって支える医師の確保見込みまでが、拠点選定の確認項目に含まれています。ここが本記事の出発点です。

新・地域医療構想では、急性期拠点機能を担う医療機関を、2040年の人口推計をもとに人口20万〜30万人程度につき1か所程度を目安に確保するとされています。決め手は診療実績です。全身麻酔手術件数・緊急手術件数、そして救急搬送受入件数が、判断材料として明示されました。

ここで見落とされがちなのが、ガイドラインが確認項目に「医師をはじめとする医療従事者の確保の見込み」を並べている点です。つまり、いま積み上げた実績だけでなく、その実績を将来にわたって維持できるだけの人がいるか——ここまでが問われます。

背景にあるのは、集約しなければ地域全体として24時間の救急や緊急手術への対応体制を保てない、という問題意識です。ガイドラインは、拠点を確保する数が増えて医師等の資源や症例が分散すると、働き方に不均等や非効率が生じ、医療の質に必要な症例数も集積されなくなると指摘しています。人材と症例をまとめることが、拠点集約の目的そのものだと考えられます。

なぜ「人材」が機能を縛るのか──3つの構造

医師確保が機能選択の制約になる理由は、大きく3つの構造に分解できます。

① 外科・麻酔の集約は、手術を集約する論理の必然 「新たな地域医療構想に関するとりまとめ」は、急性期拠点機能を有する医療機関に対して外科医や麻酔科医等の人的協力を行う場合、地域の連携・再編・集約化の取組に沿って行われることを求めています。外科医・麻酔科医が名指しされるのは、この両科の欠員だけが危ういという意味ではありません。手術という医療資源集約的な機能を1か所に集める以上、それを支える術者と麻酔科医もそこへ寄せる——という一連の論理の帰結です。裏を返せば、拠点にならない病院からは、これらの人的資源が引き上げられていく可能性があります。

② 大学医局の供給力そのものが細っている 医師の主要な供給源だった大学医局は、働き方改革以降、派遣に回せる人員が構造的に減っています。ある地方の医師少数区域にある2次救急病院(150床規模)の院長は、「昔なら大学の医局にお願いすれば医師を派遣していただける環境があったが、現在は大学に残る医師はかつての3分の1程度とも言われる」と語っています。供給元が細るなかで、限られた医師をどの機能に振り向けるかの奪い合いが、すでに始まっています。

③ 医師派遣が「都道府県主導」で再配分される 最も新しい変化が、派遣の意思決定構造です。とりまとめは、大学病院本院が都道府県に対して医局に属する医師数等の情報を共有し、都道府県が地域医療構想を踏まえながら、地域で特に医師の派遣が必要な病院を調整する体制を求めています。あわせて、地域枠の医師について、今後は民間病院も含め、地域医療構想に沿った人的協力や派遣が可能となるよう取組を進めるとしています。医師配置は、大学と病院の個別交渉から、構想区域を単位とした調整へ。都道府県主導の再配分へと軸足を移しつつあります。

この動きは、2024年12月に厚生労働省が公表した「医師偏在の是正に向けた総合的な対策パッケージ」とも方向が一致します。同パッケージは、①重点医師偏在対策支援区域の指定、②医師偏在是正プラン、③経済的インセンティブを柱としています。医師をどこに配置するかが、国・都道府県の政策として設計される局面に入ったと言えるのではないでしょうか。

現場はどう動いているか──「医局に負担をかけない」という共存の設計

制度が医師配置を動かすなかで、現場の病院はどう構えているのか。示唆的な実践が2つあります。いずれも実名は伏せて要点のみ紹介します。

前述の地方2次救急病院(150床規模)は、大学医局からの派遣減少・常勤医の当直制限・若手採用の地域的ハードルという三重苦に直面していました。同院が選んだのは「医局との関係を切る」ことではなく、当直・スポットという負荷の高い業務を外部医師でカバーし、医局とは本流の人事交流・専門医派遣というラインで関係を守るという共存戦略です。院長は「負荷の高い業務を外部でカバーし自院で体制を整えれば、医局に無理な相談をせずに済み、本流の関係性を維持できる」と述べています。結果として、病床稼働率90%超を保ちながら、地域の2次救急の約3割を担う体制を継続しています。

もう一例は、関東の2次救急病院(334床規模)です。救急応需率が50%未満まで落ち込んでいた同院は、担当医のスキル不足・働き方改革による人員制約・高齢者救急の複雑化による診療科間の押し付け合い、という三重構造を抱えていました。着任した救急科の責任医師が、外部医師による夜間体制の安定化、診療マニュアルの整備、入院患者の振り分けルール化を同時並行で進めた結果、年間救急受入台数は約3,000台から約4,800台(約1.6倍)へ、応需率は約70%まで回復しました。

両事例に共通するのは、常勤医の自己犠牲に頼らず、外部医師を「緩衝材」として組み込みながら、限られた常勤の力を専門性の高い領域に集中させるという設計です。医師派遣が再配分される局面では、自院で回せる部分を仕組みで固め、外部から補える部分を明確にしておくことが、機能を主張する足場になると考えられます。

経営判断のフレーム──狙う機能によって、必要な人材要件は変わる

急性期拠点機能と高齢者救急・地域急性期機能は、一つの医療機関が両方を報告することはしません。事実上の二者択一です。そしてどちらを狙うかで、確保すべき医師の領域と体制は大きく異なります。

以下は、機能選択と人材要件の関係を整理したものです。結論から言えば、「手術を軸に集約側へ回るか、救急の受け皿として層の厚い当直体制を敷くか」で、確保すべき医師像が分かれます。

観点

急性期拠点機能を狙う場合

高齢者救急・地域急性期機能を狙う場合

実績の核

全身麻酔・緊急手術件数、重症救急の受入

救急搬送受入件数(年齢区分別・経路区分別)、入院早期からのリハ・退院調整

必要な医師像

外科・麻酔科など手術を支える専門医の集約

二次救急を幅広く受ける当直・救急の層、多疾患に対応する総合力

人材の調達構造

都道府県調整による外科医・麻酔科医等の集約の対象になりうる

常勤の層の厚さ+外部医師で夜間・休日の応需を維持

主なリスク

症例・術者が他院に集約されると拠点要件を満たせない

当直を回す人員が細ると応需率が落ち、実績を示せない

病床機能報告との整合

急性期機能を中心に構成

包括期機能(旧・回復期)を含む構成

表の含意はこうです。拠点を狙うなら、外科・麻酔の集約競争のなかで自院が「集める側」に立てるかが問われます。地域急性期を狙うなら、派手な手術実績よりも、年齢区分別まで整理された救急受入実績と、それを支える当直体制の持続性が根拠になります。いずれの道でも、医師配置の見通しが立たないまま機能だけを宣言することはできません。

自院の人材前提を点検する6項目

☐ 全身麻酔・緊急手術件数を診療科別に把握し、術者・麻酔科医の年齢構成まで見えている

☐ 救急搬送受入件数を年齢区分別・経路区分別に整理できている

☐ 夜間・休日の救急を、常勤医の時間外上限を守りながら維持する見通しがある

☐ 主要な医師派遣元(大学医局等)の供給動向を、都道府県の調整も含めて把握している

☐ 機能転換した場合に、救急応需を維持できるだけの人員が確保できるか試算している

☐ 外部医師の活用で、常勤医の負担を増やさずに応需体制を補える設計になっている

まとめ

  • 機能は実績で、実績は人で決まる:ガイドラインは拠点選定の確認項目に医療従事者の確保の見込みを含めています。人材確保は機能選択と一体の条件です。

  • 医師派遣が再配分される局面に入った:大学病院本院の医師数共有と都道府県主導の調整、地域枠医師の派遣拡大により、医師配置は構想区域単位で動き始めています。

  • 狙う機能で、確保すべき医師像が分かれる:拠点なら外科・麻酔の集約、地域急性期なら層の厚い当直体制。どちらも、当直・救急を回せる人的体制の持続性が最後の分岐点になるのではないでしょうか。

自院がどの機能を担うにせよ、その根拠は日々の診療実績であり、実績を支えるのは医師の体制です。まずは自院の救急・手術実績を求められる粒度で整理し、それを支える医師配置の見通しを描くことが、2028年度の協議に向けた出発点になると考えられます。

なお、応需率の可視化や、外部医師を活用した当直・救急体制の設計にお悩みがあれば、ドクターズプライムワークでもご支援できます。自院の状況整理の一助として、必要に応じてご活用ください。

よくある質問(FAQ)

Q1. なぜガイドラインは外科医・麻酔科医を名指しするのですか。 手術という医療資源を多く要する機能を急性期拠点に集約する以上、それを支える術者と麻酔科医も同じ場所に集める必要があるためです。とりまとめは、急性期拠点への外科医・麻酔科医等の人的協力を、地域の連携・再編・集約化に沿って行うよう求めています。欠員リスクが両科に限られるという趣旨ではなく、手術集約の論理的な帰結だと考えられます。

Q2. 医師の派遣はこれまでと何が変わるのですか。 大学病院本院が医局に属する医師数等の情報を都道府県に共有し、都道府県が地域医療構想を踏まえて、特に派遣が必要な病院を調整する体制が示されました。地域枠の医師についても、民間病院を含めた派遣が可能となるよう取組が進められます。大学と病院の個別交渉から、構想区域を単位とした調整へと軸足が移りつつあります。

Q3. 大学医局からの派遣が減っているなかで、どう人を確保すればよいですか。 一つの考え方が、医局との関係を切らずに「負担をかけない」設計です。当直やスポット対応など負荷の高い業務を外部医師で補い、医局とは専門医派遣や人事交流という本流の関係を維持する。この組み合わせで、常勤医の負担を抑えながら応需体制を保った地方病院の事例があります。

Q4. 「医育及び広域診療機能」とは何ですか。 新・地域医療構想の医療機関機能の一つで、主に大学病院本院が担います。ガイドラインは、広域な観点での常勤医師・代診医の派遣、医師の卒前・卒後教育をはじめとした医療従事者の育成、広域な観点が求められる診療を総合的に担い、これらが地域全体で確保されるよう都道府県と連携する機能と定義しています。医師派遣の供給側を制度上位置づけたものと読み取れます。

Q5. 機能選択と医師確保は、どちらから検討すべきですか。 両者は連動するため、片方だけで決めることはできません。まず自院の救急・手術実績と、それを支える医師配置の現状を可視化したうえで、構想区域の人口規模・競合状況・派遣元の動向と突き合わせて機能を仮決めするのが現実的です。より詳しい判断軸は、関連記事「新・地域医療構想で進む病院の選別」をご参照ください。

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執筆・編集・監修

執筆・編集:ドクターズプライムワーク編集部
「救急車のたらい回しをゼロにする」をビジョンに、100病院を超える支援実績を持つ救急改善プラットフォーム「ドクターズプライムワーク」を運営しています。現状を可視化する「データ分析」と、病院が主体となって医師を確保できる「採用プラットフォーム」を一体で提供し、「自分らしく選べる医療をすべての人に」届けるための基盤を構築しています。 当編集部では、医療機関の変革に伴走する中で得られた現場特有の課題や解決のヒントを整理し、病院運営の質を高める有益な情報を発信しています。

監修:田 真茂(株式会社ドクターズプライム 代表取締役・医師)
聖路加国際病院救命救急センターで当直帯責任者を務めた後、2017年に株式会社ドクターズプライムを創業。詳細プロフィールは、会社紹介ページの監修・運営者情報をご覧ください。

参考情報:厚生労働省、消防庁、中医協、四病協資料、自社実績データ 

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