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マイナ救急、病院がやるべき5つの準備─2026年スマホ対応で変わる救急外来の情報連携

マイナ救急、病院がやるべき5つの準備─2026年スマホ対応で変わる救急外来の情報連携

更新日:

2026/7/13

マイナ救急、病院がやるべき5つの準備─2026年スマホ対応で変わる救急外来の情報連携|メソッド

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2025年10月から全国で始まった「マイナ救急」は、救急隊が搬送中にマイナ保険証で患者の受診歴・薬剤情報を確認できる仕組みです。2026年4月にはスマホ搭載のマイナ保険証にも対応が広がりました。本記事では、マイナ救急の概要と、受け入れる病院側が救急外来で何を準備すべきかを、救急応需率という経営の視点から整理します。

この記事の要点(30秒サマリー)

  • マイナ救急は、救急隊が現場・搬送中にマイナ保険証で患者の受診歴・薬剤情報などの医療情報を確認する仕組み。2025年10月1日から全国運用が始まっています。

  • 病院側のメリットは、患者情報が事前に揃いやすくなり「情報が足りないから受けられない」を減らせること。

  • ただしDX(情報連携)は前提であり、最後は「受ける医師と体制」があるかどうかが応需率を分けます。

  • 病院がやるべき準備は5つ:①受入時の情報連携フロー ②院内システムとの突合 ③看護・事務の運用ルール ④本人確認・同意の実務 ⑤「断らない体制」との接続。

※本記事は、当社システム(ドクターズプライムワーク)で2025年12月末時点までに100病院超・累計救急受入患者数16万人の救急体制改善を支援してきた現場知見と、一次情報(総務省消防庁「マイナ救急」、厚生労働省「オンライン資格確認」関連資料)をもとに作成しています。本記事が解説するのは、「マイナ救急で現場の患者情報が揃うようになったなかで、受け入れる病院が救急外来の情報連携と受入体制をどう設計すべきか」です。

※本記事は2026年7月時点の情報に基づいています。運用状況や対応範囲は今後変わりうるため、最新情報は消防庁の公式ページをご確認ください。

マイナ救急とは──制度の概要

マイナ救急とは、救急隊員がマイナ保険証(マイナンバーカードの健康保険証利用)を用いて、オンライン資格確認システム経由で傷病者の受診歴・薬剤情報などの医療情報を確認する仕組みです。2025年10月1日から、全国の720消防本部・5,334救急隊で運用が始まりました(令和8年度の実施体制は約712本部・5,417隊)。2026年4月からは、スマートフォンに搭載したマイナ保険証でも利用できるようになっています。

導入の背景には、救急需要の増加と高齢化があります。意識障害や家族の動揺などで問診が難しい場面でも、カードを通じて病歴・薬歴を把握できれば、搬送先の選定や初期対応を適切に行いやすくなります。制度上、意識がなく同意が得られない場合でも、生命・健康の保護に必要なときは情報を確認できる運用とされています。

何が変わるのか──従来の救急とマイナ救急

マイナ救急によって、救急現場と受け入れ病院の情報のやり取りは次のように変わります。

観点

従来の救急

マイナ救急

情報収集の手段

本人・家族への問診が中心

マイナ保険証で受診歴・薬剤情報を確認

情報が取れない場面

意識障害・独居などで難航

同意が得られない場合も必要時は確認可

搬送先の選定

限られた情報で判断

病歴・服薬を踏まえた選定がしやすい

病院の受け入れ判断

「情報不足」が断る一因に

事前に情報が揃い、判断材料が増える

病院側から見た最大の変化は、受け入れの是非を判断する段階で、患者の背景情報が揃いやすくなることです。「専門外かもしれない」「持病や服薬が分からない」といった不確実性が、応需をためらう一因になってきました。その不確実性を下げられる点に、マイナ救急の実務的な価値があります。

運用で見えてきた効果と注意点

マイナ救急は全国運用の初期段階にあり、活用は段階的に広がっています。消防庁の集計では、2025年12月上旬の1週間で13,249件の利用があり、実施率は17.4%とされています(データ集計期間:令和7年12月4日からの1週間)。現場からは、一命を取り留めた事例や、円滑な病院選定・早期治療につながった事例が報告されています。

一方で、過信は禁物です。マイナ保険証から確認できるのは、オンライン資格確認に反映された範囲の情報に限られます。閲覧できるのは過去5年分の受診歴・薬剤情報・手術情報・診療情報などで、アレルギー情報や5年より前の情報、市販薬などは反映されません。したがって、従来の問診・観察を置き換えるのではなく、補完する位置づけで運用することが求められます。「情報が出てこない=既往なし」と早合点しない運用ルールが、現場の安全につながります。

マイナ救急で"分かること"と"分からないこと"

運用ルールを設計するうえで、マイナ救急で何が確認でき、何が確認できないのかを整理しておくことが重要です。確認できる情報は、オンライン資格確認に登録された範囲に限られます。

分かること(オンライン資格確認に登録された範囲)

留意が必要なこと

受診歴(過去5年分の医療機関名・受診年月)

アレルギー情報は項目として提供されない

薬剤情報(過去5年分の処方・調剤履歴)

5年より前の古い情報は対象外

手術情報・診療情報(過去5年分)

直近の受診・処方は反映に時差が生じる場合がある

特定健診情報(過去5回分)/救急用サマリー(直近3か月の要約)

市販薬・サプリ、マイナ保険証の未登録・不所持のケースは対象外

この整理から言えるのは、マイナ救急は「問診の代わり」ではなく「問診の出発点を早める道具」だということです。確認できた情報を起点に、不足分を問診・観察・家族確認で埋めるという二段構えが、安全で速い初期対応につながります。

病院がやるべき5つの準備

マイナ救急を「受け入れ増」につなげるために、病院側で整えておくべき準備を5つに整理します。

  1. 受入時の情報連携フロー:救急隊がマイナ救急で得た情報を、受け入れ時に院内へどう引き継ぐかの手順を決める

  2. 院内システムとの突合:救急隊経由の情報と、自院の電子カルテ・オンライン資格確認の情報を照合する運用を用意する

  3. 看護・事務の運用ルール:本人確認・情報確認を誰がどの段階で行うか、看護部・事務部の役割分担を明確にする

  4. 本人確認・同意の実務:意識がある場合の同意取得、意識障害時の取り扱いなど、現場が迷わない手順書を整える

  5. 「断らない体制」との接続:情報が揃ったうえで、実際に受けられる当直・救急体制につなげる

これらは、電子カルテ情報共有サービスや、施設基準でマイナ保険証利用率が問われる新加算の動向ともつながる論点です。院内の情報連携を一体で設計することが求められます。

受け入れの流れ──救急隊から院内までの情報連携

マイナ救急を院内オペレーションに落とし込むと、受け入れの流れは次のようなイメージになります。準備した5項目が、どの段階で効いてくるかを確認しておくと設計しやすくなります。

  1. 現場での確認:救急隊が現場・搬送中にマイナ保険証を読み取り、受診歴・薬剤情報を確認する

  2. 収容依頼時の共有:病院への収容依頼の連絡時に、把握した病歴・服薬情報が共有される

  3. 受け入れ判断:病院はその情報も踏まえ、受け入れの可否と担当科をより確度高く判断する

  4. 搬入後の突合:院内のオンライン資格確認・電子カルテと照合し、初期対応・指示に反映する

  5. 不足分の補完:反映されない情報(アレルギー・手術詳細など)は、問診・観察・家族確認で補う

重要なのは、この流れの中で「情報が増えたぶん、受け入れの判断が速く・確実になる」という点です。従来は情報不足がためらいの一因になっていた場面で、判断材料が増えることが、応需の後押しになると考えられます。

応需率向上との接続──情報が揃っても「受ける体制」がなければ断ってしまう

マイナ救急で患者情報が揃うことは、応需率改善の追い風になります。ただし、ここで見落としてはならない点があります。情報が揃っても、夜間・休日にその患者を受けられる医師と体制がなければ、結局は断らざるを得ないという構造です。

救急の情報連携が進むほど、応需率は地域から「見える」ようになります。厚労省が進める救急医療情報連携プラットフォームや、平時と災害時のシステム集約とあわせて、マイナ救急は「救急DXの現場実装フェーズ」を象徴する動きです。だからこそ、DXを追い風に変えられるかは、最終的に「受ける体制」を持てているかにかかっていると言えるでしょう。

実際に、輪番日の救急応需率が60%台にとどまっていた病院が、外部医師の導入と受入ルールの再設計を組み合わせることで応需率90%超へと改善した事例があります。情報が揃う環境が整ういまこそ、受け方の設計を見直す好機だと考えられます。

よくある質問(FAQ)

Q1. マイナ救急はいつから、どこで使えますか。 A1. 2025年10月1日から、全国の720消防本部・5,334救急隊で運用が始まっています。2026年4月からは、スマートフォンに搭載したマイナ保険証でも利用できます。

Q2. 患者が意識不明でマイナ保険証を出せない場合はどうなりますか。 A2. 制度上、意識がなく同意が得られない場合でも、生命・身体の保護に必要なときは同意なしに情報を確認できる運用とされています。なお、カードのマイナ保険証は意識不明時でも利用できますが、スマートフォン搭載のマイナ保険証は本人操作(生体認証や暗証番号)が前提のため、意識不明時には利用できません。

Q3. マイナ救急があれば問診は不要になりますか。 A3. いいえ。閲覧できるのは過去5年分の受診歴・薬剤・手術情報などで、アレルギー情報や5年より前の情報は反映されないため、従来の問診・観察を補完する位置づけです。「情報が出てこない=既往なし」と早合点しない運用が安全につながります。

Q4. 病院として、まず何から準備すべきですか。 A4. 救急隊から院内への情報連携フローの整備です。あわせて、情報が揃ったときに実際に受けられる当直・救急体制を確保しておくことが重要です。輪番日の応需率60%台から90%超へ改善した事例のように、受け方の設計が受け入れ実績を左右します。

Q5. マイナ保険証を持っていない患者は対象外になりますか。 A5. マイナ救急はマイナ保険証(マイナンバーカードの健康保険証利用)を前提とするため、未登録・不所持の場合は利用できません。したがって、すべての搬送に使えるわけではなく、従来の問診・観察を前提としつつ、使える場面で情報収集を補強する位置づけになります。

Q6. 病院側に導入コストや専用システムは必要ですか。 A6. マイナ救急は救急隊側がオンライン資格確認を用いる仕組みが中心で、病院に新たな専用システムを課すものではありません。病院側で重要なのは、救急隊から共有された情報を院内の受け入れ・記録に活かす運用ルールの整備です。設備投資よりも、運用設計と体制づくりが鍵になります。

まとめ──マイナ救急を「受け入れ増」に変える条件

本記事の要点は次の3点です。

  • マイナ救急は2025年10月から全国運用が始まり、救急隊が現場で受診歴・薬剤情報を確認できるようになった

  • 病院側は「情報不足で断る」を減らせる一方、確認できる情報の範囲には限界があり、問診の補完として運用すべき

  • 情報が揃っても受ける体制がなければ断ってしまう。応需率を上げる鍵は、DXを追い風にした「受け方の設計」にある

マイナ救急によって、救急の入り口の情報環境は着実に整いつつあります。次の一手は、その環境を受け入れ実績につなげる院内体制の設計です。自院の救急応需率と不応需理由の現在地を把握することが、その出発点になるのではないでしょうか。

なお、応需率の現在地の可視化や、外部医師を活用した当直・救急体制の設計についてお悩みがあれば、ドクターズプライムワークでもご支援できます。院内体制の整理の一助として、必要に応じてご活用ください。

出典(一次情報)

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執筆・編集・監修

執筆・編集:ドクターズプライムワーク編集部
「救急車のたらい回しをゼロにする」をビジョンに、100病院を超える支援実績を持つ救急改善プラットフォーム「ドクターズプライムワーク」を運営しています。現状を可視化する「データ分析」と、病院が主体となって医師を確保できる「採用プラットフォーム」を一体で提供し、「自分らしく選べる医療をすべての人に」届けるための基盤を構築しています。 当編集部では、医療機関の変革に伴走する中で得られた現場特有の課題や解決のヒントを整理し、病院運営の質を高める有益な情報を発信しています。

監修:田 真茂(株式会社ドクターズプライム 代表取締役・医師)
聖路加国際病院救命救急センターで当直帯責任者を務めた後、2017年に株式会社ドクターズプライムを創業。詳細プロフィールは、会社紹介ページの監修・運営者情報をご覧ください。

参考情報:厚生労働省、消防庁、中医協、四病協資料、自社実績データ 

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