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【基礎解説】電子カルテ情報共有サービスとは?病院経営者が押さえるべき全体像と3つの経営課題

【基礎解説】電子カルテ情報共有サービスとは?病院経営者が押さえるべき全体像と3つの経営課題

更新日:

2026/5/26

【基礎解説】電子カルテ情報共有サービスとは?病院経営者が押さえるべき全体像と3つの経営課題   |メソッド

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「電子カルテ情報共有サービス」という言葉は耳にするものの、自院にどのような影響があり、いつから何が変わるのかが見えにくいと感じている病院経営者の方も多いのではないでしょうか。本記事では、厚生労働省の公表資料をもとに、制度の全体像と病院経営に直結する論点を整理して解説いたします。

本記事の情報基準日:
2026年5月 電子カルテ情報共有サービスは厚生労働省において継続的に検討・整備が進められているプロジェクトです。本記事は上記時点で公表されていた一次情報をもとに、サービスの全体像と病院経営への影響を整理しています。本格運用の時期や個別の運用ルールはその後アップデートされている可能性があるため、最新動向については別記事をあわせてご参照ください。


電子カルテ情報共有サービスとは何か——医療DXの中核基盤

電子カルテ情報共有サービスとは、全国の医療機関や薬局が、電子カルテに記録された診療情報を、社会保険診療報酬支払基金を経由して相互に共有・閲覧できる仕組みです。政府が推進する「全国医療情報プラットフォーム」の中核として位置づけられており、医療情報の標準規格であるHL7 FHIRに準拠した形で構築が進められています。

全国医療情報プラットフォームの全体像と、医療DXの4つのユースケース・メリット例を示した解説図(厚生労働省「医療DX令和ビジョン2030」推進チーム資料ベース)

引用:厚生労働省全国医療情報プラットフォーム

厚生労働省が示すサービスは、大きく4つの機能で構成されます。

電子カルテ情報共有サービスの概要図。医療機関での情報登録から、電子カルテ情報共有サービスやオンライン資格確認等システムでの保存管理、紹介先や全国の医療機関・保険者・自宅(国民)での取得・閲覧までの流れを示した解説図

引用:医療DX推進体制整備加算等の要件の見直しについて

  • 診療情報提供書送付サービス:診療情報提供書を電子で共有(退院時サマリーは添付)

  • 健診結果報告書閲覧サービス:各種健診結果を医療保険者・全国の医療機関等・本人が閲覧

  • 6情報閲覧サービス:傷病名、薬剤アレルギー等、その他アレルギー等、感染症、検査、処方(※処方情報については、その後の検討で電子処方箋管理サービス側に役割を整理する方針となっています。詳細は続編記事をご参照ください)

  • 患者サマリー閲覧サービス:患者本人がマイナポータルから閲覧

対象となるのは、いわゆる「3文書6情報」と呼ばれる情報群です。

  • 3文書:診療情報提供書、退院時サマリー(診療情報提供書に添付)、健康診断結果報告書

  • 6情報:傷病名、薬剤アレルギー等、その他アレルギー等、感染症、検査、処方

患者本人もマイナポータルから自身の医療情報を閲覧できる設計となっており、医療機関間の情報の断絶を解消し、切れ目のない医療提供を実現することが狙いです。

6情報の構成について:6情報のうち「処方情報」の取り扱いについては、その後の検討で方針が更新されています。最新の整理内容は続編記事で解説しています。


モデル事業の進捗と本格運用に向けたロードマップ

厚生労働省の工程表では、電子カルテ情報共有サービスは2025年度(令和7年度)中の本格稼働、2026年度(令和8年度)以降の本格実施が示されてきました。現在は、本格運用に先立つモデル事業が段階的に進められている段階です。

本格運用の時期について
モデル事業で浮上した課題への対応により、当初のスケジュールから見直しが行われています。最新の運用開始時期については、続編記事で解説しています。

「医療DXの推進に関する工程表〔全体像〕」のロードマップ図。2023年度から2026年度以降にかけての、マイナンバーカード一体化、医療情報共有の拡大、自治体・介護連携、診療報酬改定DXなどの推進スケジュールが示されています。

引用:厚生労働省「医療DX推進体制整備加算等の要件の見直しについて」

モデル事業の概要

厚生労働省の公表資料によれば、モデル事業は令和7年2月3日から愛知県・三重県の藤田学園関連の3医療機関(藤田医科大学病院、藤田医科大学ばんたね病院、藤田医科大学七栗記念病院)を皮切りに開始され、他の地域でも順次開始されています。対象地域には、北海道、山形県、茨城県、千葉県、静岡県、石川県、三重県、奈良県、宮崎県などが挙げられています。

モデル事業の目的は、サービスの有用性検証と機能検証、現場運用上の課題収集にあり、システム面のみならず運用面の検証も並行して行うとされています。

政府の方針

「医療DX令和ビジョン2030」厚生労働省推進チーム第7回(令和7年7月1日)資料では、電子カルテと共有サービスの普及策として、以下の方針が示されています。

  • 標準型電子カルテについて、本格運用の具体的内容を2025年度中に示し、2026年度中目途の完成を目指す

  • 2026年夏までに、電子カルテ/共有サービスの具体的な普及計画を策定する

  • 電子処方箋の新たな目標として「電子カルテ/共有サービスと一体的な導入を進める」こととし、患者の医療情報を共有するための電子カルテを整備するすべての医療機関への導入を目指す

なお、2025年6月時点で電子処方箋を運用開始している医療機関は約1割程度にとどまるとされ、電子カルテとの一体的な普及が今後の焦点となっています。

「電子処方箋・電子カルテの目標設定等の概要①」の資料画像。電子処方箋の新たな導入目標や、2030年に向けた電子カルテ・共有サービスの普及策、標準型電子カルテの2026年度中完成を目指す今後の対応方針などが記載されています。

引用:「医療DX令和ビジョン2030」厚生労働省推進チーム第7回(令和7年7月1日)資料

電子処方箋の最新の導入状況について
その後、電子処方箋の導入は段階的に進んでおり、2026年4月時点では病院で約2割、医科診療所で約2.5割、薬局で約9割の導入率となっています(デジタル庁「電子処方箋の導入状況に関するダッシュボード」)。最新の普及状況は続編記事で解説しています。

標準型電子カルテについて
完成時期のスケジュールはその後も検討が継続されています。最新の整備状況は続編記事をご参照ください。

📌編集部ピックアップ

ドクターズプライム編集部が取材した東京都内のある急性期病院では、院内クリニックとの電子カルテ共通化と病院救急車を組み合わせた運用により、転院搬送の現場滞在時間が平均約13分と、一般的な救急搬送時間の半分以下に短縮されています。事前にカルテで患者背景・投薬・検査結果を把握できることで、申し送りは1分程度で完了し、受け入れ準備も並行して進められると報告されています。


改正医療法と診療報酬——避けて通れない経営インパクト

電子カルテ情報共有サービスは、改正医療法と診療報酬の両面から経営に影響する仕組みとなっています。

改正医療法の方向性

厚生労働省が社会保障審議会医療部会(令和7年2月26日)に提出した資料では、電子カルテ情報共有サービスの法的位置づけについて、以下の内容が示されています。

  • 医療機関等が3文書6情報を支払基金等に電子的に提供することができる旨を法律に位置づける

  • システムの運用費用は医療保険者等が負担する

  • 地域医療支援病院等の管理者に、3文書・6情報の共有に関する体制整備の努力義務を設ける

これらは「医療法等の一部を改正する法律案」として国会に提出されたもので、改正法の成立・施行をもって本格稼働が見込まれています。

「医療DXの推進① 電子カルテ情報共有サービス」の解説図。制度の概要とともに、医療機関から登録された3文書・6情報が、支払基金のサービスを介して全国の医療機関や保険者、自宅(マイナポータル)へ共有される流れが示されています。

引用:第115回社会保障審議会医療部会 資料1「医療法等の一部を改正する法律案の閣議決定について(報告)」

診療報酬上の取り扱い

医療DXに関する診療報酬の評価は、令和8年度(2026年度)診療報酬改定で大きく再編されました。令和8年5月31日をもって従来の「医療DX推進体制整備加算」および「医療情報取得加算」が廃止され、令和8年6月1日から「電子的診療情報連携体制整備加算」が施行されます。新加算は初診時の最高区分が15点(旧加算は最大12点)に引き上げられた一方、評価の軸が体制の「整備」から利用の「実績」へと明確にシフトし、マイナ保険証利用率30%以上が全区分共通の必須要件となりました。

新加算(外来・初診時)は3段階で構成され、加算1(15点)の算定には電子処方箋と電子カルテ情報共有サービスの両方への対応、加算2(9点)はいずれか一方への対応、加算3(4点)はマイナ保険証利用率等の基本要件のみで算定可能です。なお入院加算は加算1(160点)・加算2(80点)の2段階となります(出典:厚生労働省「個別改定項目について」)。電子カルテ情報共有サービスに関する経過措置は2種類設定されており、ウェブサイト掲載等の要件は令和9年5月31日まで、接続インターフェース要件は「当分の間」みなし規定が適用されます。

「令和8年度診療報酬改定 医療DX・オンライン診療に係る全体像」の資料画像。医療DX推進体制整備加算等の廃止に伴う新たな評価の新設や、各種オンライン診療に係る評価・見直しの全体方針が左右のブロックに分けて記載されています。

引用:令和8年度診療報酬改定について 【医科全体版】

※加算の再編と経過措置の最新動向について
新加算の点数体系・施設基準・届出手続きの実務、および経過措置のさらなる延長の可能性については、続編記事で詳しく解説しています。


病院経営者が直視すべき3つの経営課題

公表資料から読み取れる方向性を踏まえると、病院経営者が向き合うべき論点は次の3点に集約されます。

1. 既存電子カルテの標準規格対応と更新計画の見直し

既存の電子カルテが標準規格(HL7 FHIR)に対応できるかどうかは、今後の連携可否を左右します。厚生労働省は20床以上の病院を対象に、3文書6情報の交換に必要な電子カルテ改修費用の1/2を補助しています。上限額は健診部門システムの有無と病床規模に応じて4段階で設定され、健診実施病院は200床以上で約658万円・200床未満で約546万円、健診未実施病院は200床以上で約508万円・200床未満で約409万円となっています。次回の電子カルテ更改時期に合わせて、共有サービス対応をどう組み込むかを検討することが求められます。

「医療機関への補助(電子カルテ情報標準規格準拠対応事業)」の資料画像。20床以上の病院を対象とした電子カルテ情報FHIR形式対応改修への補助金概要と、病院規模や健診部門システムの有無に応じた補助上限額の対比表が示されています。

引用:厚生労働省「医療DX推進体制整備加算等の要件の見直しについて」

2. 「情報を受け取る側」のリテラシー整備

これまで医療DXの議論は「情報を出す側」が中心でしたが、本格運用が始まれば、外部からの情報をいかに診療に活かすかが問われます。診療情報提供書や退院時サマリー、6情報が電子で届くようになる一方で、表示・参照のオペレーション、患者同意の取得フロー、院内での運用ルールを整える必要があります。情報を受け取った医師がそれを瞬時に判断材料に変換できるかどうかが、診療の質と効率を左右します。

3. 救急・地域連携における情報活用体制の構築

電子カルテ情報共有サービスがもたらす効果について、厚生労働省は概要案内のなかで「日常診療のみならず、救急時や災害時を含めて、全国の医療機関等で、患者の医療情報を踏まえた、より質の高い〔医療〕」を可能にすると整理しており、具体例として「患者の傷病名や検査結果等を把握することにより、救急や災害時に患者へのより安全な診療が可能になる」ことを挙げています。搬送患者の既往歴・薬剤情報・アレルギー情報が事前に把握できれば、診療開始までの時間が短縮され、医療安全も向上します。情報の受け取り基盤を整備したうえで、それを使いこなせる医師体制を確保することが、受け入れ件数の増加と収益確保に直結します。

📌編集部ピックアップ
過去に配信したセミナーでの発言によると、ある医療情報領域の専門医は、医療DXで期待される効果を「業務効率化」「医療の質の向上」「救急・災害時の迅速対応」の3点に整理しています。とりわけ救急領域では、情報の壁が解消されることで「断り判断が臆測から根拠ある情報へ転換し、受け入れ文化そのものが変わる」可能性が示唆されています。


まとめ——制度対応と人材戦略を両輪で進める

電子カルテ情報共有サービスは、モデル事業による検証を経ながら、2026年度以降の本格実施に向けて段階的に整備が進められています。経営者に求められるのは、制度の細部を追うことだけではなく、「情報が共有される前提の医療提供体制」への発想転換です。

ベンダー選定や補助金活用といった投資判断と並行して、共有された情報を活用できる医師・スタッフを揃え、救急受け入れや地域連携の質を高めていくこと——その両輪を進めることが、これからの病院経営の核心となるでしょう。

ドクターズプライムワークは、救急のたらい回し解消と病院経営の黒字化を支援する救急改善プラットフォームです。「断らない医師」のマッチングとデータ分析を組み合わせ、本格運用時代の救急医療体制づくりをサポートします。お気軽にご相談ください。


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シリーズ:電子カルテ情報共有サービス

本記事の続編として、最新動向と実務対応を整理した記事を公開しています。あわせてご参照ください。

  • 続編1電子カルテ情報共有サービス、見直しを経て本格運用へ 2026年5月以降にアップデートされた制度の最新動向を、タイムライン形式で整理。「概要案内2.0版」で示された仕様の抜本見直し、第31回ワーキングで提示された傷病名・アレルギー・感染症・検査の各情報の対応方針、本格運用までのスケジュールを解説しています。

  • 続編2実務解説】新加算で「断らない救急」を経営の柱に 2026年6月施行「電子的診療情報連携体制整備加算」の点数体系・施設基準・経過措置を整理し、新加算が「断らない救急」と直結する経営構造を解説しています。


参照資料

執筆・編集・監修

執筆・編集:ドクターズプライムワーク編集部
「救急車のたらい回しをゼロにする」をビジョンに、100病院を超える支援実績を持つ救急改善プラットフォーム「ドクターズプライムワーク」を運営しています。現状を可視化する「データ分析」と、病院が主体となって医師を確保できる「採用プラットフォーム」を一体で提供し、「自分らしく選べる医療をすべての人に」届けるための基盤を構築しています。 当編集部では、医療機関の変革に伴走する中で得られた現場特有の課題や解決のヒントを整理し、病院運営の質を高める有益な情報を発信しています。

監修:田 真茂(株式会社ドクターズプライム 代表取締役・医師)
聖路加国際病院救命救急センターで当直帯責任者を務めた後、2017年に株式会社ドクターズプライムを創業。詳細プロフィールは、会社紹介ページの監修・運営者情報をご覧ください。

参考情報:厚生労働省、消防庁、中医協、四病協資料、自社実績データ 

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