更新日:
2026/6/23

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「電子カルテ情報共有サービス」という言葉は耳にするものの、自院にどのような影響があり、いつから何が変わるのかが見えにくいと感じている病院経営者の方も多いのではないでしょうか。本記事では、厚生労働省の公表資料をもとに、制度の全体像と病院経営に直結する論点を整理して解説いたします。
※本記事の情報基準日:2026年6月 電子カルテ情報共有サービスは、厚生労働省において継続的に検討・整備が進められているプロジェクトです。本記事は基準日時点で公表されている一次情報をもとに、サービスの全体像・最新スケジュール・病院経営への影響を整理しています。仕様や運用ルールの細部は今後さらに更新される可能性があるため、新加算の点数・施設基準の実務など個別論点は、本文中で案内する続編記事もあわせてご参照ください。
電子カルテ情報共有サービスとは何か/3文書6情報とは何か/本格運用はいつから始まるのか/2026年3月の仕様見直し(概要案内2.0版)で何が変わったのか/新加算(電子的診療情報連携体制整備加算)とは何か/病院経営者は何を判断すべきか
電子カルテ情報共有サービスとは、全国の医療機関・薬局が、電子カルテの診療情報を支払基金を経由して相互に共有・閲覧できる仕組み。「全国医療情報プラットフォーム」の中核に位置づけられる
共有対象は「3文書6情報」。HL7 FHIRという標準規格に準拠して構築されている
本格運用は、厚生労働省の医療等情報利活用ワーキンググループにおいて「2026年度(令和8年度)の冬ごろ」を目標とする方針が示されている
2026年3月、厚生労働省は「概要案内2.0版」でサービス仕様の見直しを公表。6情報の構成などが整理し直された
2026年6月、診療報酬上で「電子的診療情報連携体制整備加算」が施行。本サービスへの対応状況が算定区分に影響する(点数・施設基準の詳細は続編記事へ)
電子カルテ情報共有サービスとは、全国の医療機関や薬局が、電子カルテに記録された診療情報を、社会保険診療報酬支払基金を経由して相互に共有・閲覧できる仕組みです。政府が推進する「全国医療情報プラットフォーム」の中核として位置づけられており、医療情報の標準規格であるHL7 FHIRに準拠した形で構築が進められています。
引用:厚生労働省「電子カルテ情報共有サービス」(医療機関等向け)
厚生労働省が示すサービスは、大きく4つの機能で構成されます。
診療情報提供書送付サービス:診療情報提供書を電子で共有(退院時サマリーは添付)/健診結果報告書閲覧サービス:各種健診結果を医療保険者・全国の医療機関等・本人が閲覧/6情報閲覧サービス:傷病名、アレルギー、感染症、検査、薬剤等の臨床情報を閲覧/患者サマリー閲覧サービス:患者本人がマイナポータルから閲覧
対象となるのは、いわゆる「3文書6情報」と呼ばれる情報群です。
3文書:診療情報提供書、退院時サマリー(診療情報提供書に添付)、健康診断結果報告書 6情報:傷病名、薬剤アレルギー等、その他アレルギー等、感染症、検査、処方(※後述の2026年3月の見直しで、6情報の構成・取り扱いが整理し直されています)
患者本人もマイナポータルから自身の医療情報を閲覧できる設計となっており、医療機関間の情報の断絶を解消し、切れ目のない医療提供を実現することが狙いです。
電子カルテ情報共有サービスの本格運用は、厚生労働省の医療等情報利活用ワーキンググループにおいて、「2026年度(令和8年度)の冬ごろ」をめどに全国での運用開始を目指す方針が示されています。これは、先行するモデル事業で複数の課題が明らかになり、その対応期間を見込んだスケジュールです。
引用:厚生労働省 健康・医療・介護情報利活用検討会 医療等情報利活用ワーキンググループ 資料
当初の工程表では2025年度(令和7年度)中の本格稼働が示されていましたが、モデル事業での検証結果を踏まえて見直しが行われ、現在は上記の「2026年度冬ごろ」が直近の目標として整理されています。
モデル事業は2025年2月から段階的に開始され、サービスの有用性・機能検証と、現場運用上の課題収集を目的に進められてきました。システム面のみならず運用面の検証も並行して行われ、ここで明らかになった課題が、後述する2026年3月の仕様見直しにつながっています。
2026年3月、厚生労働省は「電子カルテ情報共有サービス 概要案内 2.0版」を公表し、サービス仕様の見直しを明らかにしました。現場運用と仕様の乖離、既存システムとの接続や情報変換における技術的課題などを踏まえた整理です。
引用:厚生労働省「電子カルテ情報共有サービス 概要案内_v2.0」(令和8年3月)
見直しのなかでも病院経営に関わるのは、6情報の構成・取り扱いが整理し直された点です。各情報(傷病名・アレルギー・感染症・検査等)について、本格運用に向けた具体的な対応方針が改めて示されています。仕様の細部は本格運用までに追加で更新される可能性があるため、最新の対応方針は続編記事で随時整理しています。
制度の最新動向(概要案内2.0版での仕様見直し、各情報の対応方針、本格運用までのスケジュール)をタイムライン形式で詳しく知りたい方は、続編記事「電子カルテ情報共有サービスはいつから?本格運用スケジュールと処方情報の扱いを最新解説」をご参照ください。
電子カルテ情報共有サービスの普及は、標準型電子カルテと電子処方箋の整備と一体で進められています。
標準型電子カルテ(デジタル庁で開発中)について、厚生労働省は本格運用の具体的内容を2025年度中に示したうえで、「2026年度中目途」の完成を目指すとしています。あわせて、医科診療所向け電子カルテの標準仕様(基本要件)の策定も進められています。
引用:厚生労働省「電子カルテの普及について」(健康・医療・介護情報利活用検討会 資料、令和8年3月)
電子処方箋については、電子カルテ/共有サービスと一体的な導入を進める方針が示されており、患者の医療情報を共有するための電子カルテを整備するすべての医療機関への導入が目標とされています。
電子カルテ情報共有サービスは、改正医療法と診療報酬の両面から病院経営に影響します。
厚生労働省が社会保障審議会医療部会に提出した資料では、電子カルテ情報共有サービスの法的位置づけについて、次の内容が示されています。
医療機関等が3文書6情報を支払基金等に電子的に提供できる旨を法律に位置づける/システムの運用費用は医療保険者等が負担する/地域医療支援病院等の管理者に、3文書・6情報の共有に関する体制整備の努力義務を設ける
これらは「医療法等の一部を改正する法律案」として整理されたもので、改正法の成立・施行とあわせて本格稼働が見込まれています。
医療DXに関する診療報酬の評価は、令和8年度(2026年度)改定で再編されました。従来の「医療DX推進体制整備加算」および「医療情報取得加算」が廃止され、2026年6月から「電子的診療情報連携体制整備加算」が施行されています。
この新加算では、評価の軸が体制の「整備」から利用の「実績」へとシフトし、電子処方箋および電子カルテ情報共有サービスへの対応状況が算定区分に影響する構造となっています。つまり、電子カルテ情報共有サービスへの対応は、もはや任意のDX投資ではなく、診療報酬の算定区分に直結する経営判断になりました。
引用:厚生労働省「令和8年度診療報酬改定について」
新加算の点数体系(加算1〜3・入院加算)、施設基準、マイナ保険証利用率の要件、経過措置、届出の実務は、続編記事「【実務解説】新加算で『断らない救急』を経営の柱に」で詳しく整理しています。本記事では、本サービスへの対応が算定区分に影響するという骨子までを示します。
公表資料から読み取れる方向性を踏まえると、病院経営者が向き合うべき論点は次の3点に集約されます。
既存の電子カルテが標準規格(HL7 FHIR)に対応できるかどうかが、今後の連携可否を左右します。厚生労働省は、3文書6情報の交換に必要な電子カルテ改修費用について補助を行っており、病床規模や健診部門システムの有無に応じた補助上限が設定されています。次回の電子カルテ更改時期に合わせて、共有サービス対応をどう組み込むかを検討することが求められます。
引用:厚生労働省「電子カルテ情報共有サービス」(医療機関等向け/補助金関連資料)
これまで医療DXの議論は「情報を出す側」が中心でしたが、本格運用が始まれば、外部からの情報をいかに診療に活かすかが問われます。診療情報提供書・退院時サマリー・6情報が電子で届くようになる一方で、表示・参照のオペレーション、患者同意の取得フロー、院内の運用ルールを整える必要があります。情報を受け取った医師が、それを瞬時に判断材料へ変換できるかどうかが、診療の質と効率を左右します。
厚生労働省は、本サービスの効果として、救急時や災害時を含め、全国の医療機関で患者の医療情報を踏まえたより質の高い医療が可能になると整理しています。搬送患者の既往歴・薬剤情報・アレルギー情報が事前に把握できれば、診療開始までの時間が短縮され、医療安全も向上します。情報の受け取り基盤を整備したうえで、それを使いこなせる医師体制を確保することが、救急の受け入れ件数の増加と収益確保に直結します。
電子カルテ情報共有サービスは、モデル事業による検証と2026年3月の仕様見直しを経て、2026年度冬ごろの本格運用に向けて整備が進んでいます。経営者に求められるのは、制度の細部を追うことだけではなく、「情報が共有される前提の医療提供体制」への発想転換です。
ベンダー選定や補助金活用といった投資判断と並行して、共有された情報を活用できる医師・スタッフを揃え、救急受け入れや地域連携の質を高めていくこと——その両輪を進めることが、これからの病院経営の核心となるでしょう。
Q. 電子カルテ情報共有サービスとは何ですか?
A. 全国の医療機関・薬局が、電子カルテの診療情報を支払基金を経由して共有・閲覧できる仕組みです。「全国医療情報プラットフォーム」の中核で、HL7 FHIRに準拠し「3文書6情報」を扱います。
Q. 本格運用はいつから始まりますか?
A. 厚生労働省の医療等情報利活用ワーキンググループでは、2026年度(令和8年度)の冬ごろをめどに全国運用開始を目指す方針が示されています。モデル事業の課題対応を見込んだスケジュールです。
Q. 2026年3月の「概要案内2.0版」で何が変わりましたか?
A. サービス仕様が見直され、6情報の構成・取り扱いが整理し直されました。各情報の対応方針が改めて示されています。詳細は続編記事で解説しています。
Q. 新加算(電子的診療情報連携体制整備加算)とは何ですか?
A. 2026年6月施行の診療報酬上の加算で、従来の医療DX推進体制整備加算等を再編したものです。電子処方箋・電子カルテ情報共有サービスへの対応状況が算定区分に影響します。点数・施設基準・経過措置の詳細は続編記事をご参照ください。
Q. 中小規模の病院でも対応は必要ですか?
A. 新加算の算定区分に直結するため、規模を問わず経営判断が必要です。まず自院の電子カルテが標準規格(HL7 FHIR)に対応予定かをベンダーに確認し、更改計画に組み込むことが第一歩です。
Q. まず何から着手すべきですか?
A. ①自院の電子カルテの標準規格対応予定の確認、②補助金の活用可否の確認、③受け取った情報を診療・救急に活かす院内運用の設計、の3点です。特に救急・地域連携での情報活用は収益に直結します。
続編1:電子カルテ情報共有サービスはいつから?本格運用スケジュールと処方情報の扱いを最新解説(2026年3月の概要案内2.0版・各情報の対応方針・本格運用スケジュールをタイムラインで整理)
続編2:【実務解説】新加算で「断らない救急」を経営の柱に(2026年6月施行「電子的診療情報連携体制整備加算」の点数体系・施設基準・経過措置を解説)
執筆・編集・監修
執筆・編集:ドクターズプライムワーク編集部
「救急車のたらい回しをゼロにする」をビジョンに、100病院を超える支援実績を持つ救急改善プラットフォーム「ドクターズプライムワーク」を運営しています。現状を可視化する「データ分析」と、病院が主体となって医師を確保できる「採用プラットフォーム」を一体で提供し、「自分らしく選べる医療をすべての人に」届けるための基盤を構築しています。 当編集部では、医療機関の変革に伴走する中で得られた現場特有の課題や解決のヒントを整理し、病院運営の質を高める有益な情報を発信しています。
監修:田 真茂(株式会社ドクターズプライム 代表取締役・医師)
聖路加国際病院救命救急センターで当直帯責任者を務めた後、2017年に株式会社ドクターズプライムを創業。詳細プロフィールは、会社紹介ページの監修・運営者情報をご覧ください。
参考情報:厚生労働省、消防庁、中医協、四病協資料、自社実績データ



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