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【実務解説】新加算で「断らない救急」を経営の柱に

【実務解説】新加算で「断らない救急」を経営の柱に

更新日:

2026/5/26

【実務解説】新加算で「断らない救急」を経営の柱に          |メソッド

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【実務解説】新加算で「断らない救急」を経営の柱に

2026年6月1日、医療DXに関する診療報酬が大きく再編されます。従来の「医療DX推進体制整備加算」「医療情報取得加算」が再編され、新たに「電子的診療情報連携体制整備加算」が新設されます。本記事では、新加算の点数体系・施設基準・経過措置といった実務ポイントを整理しつつ、この再編が「断らない救急」を経営の柱に変える機会となる理由を解説します。

本記事の情報基準日:2026年5月 本記事は、基礎記事「【基礎解説】電子カルテ情報共有サービスとは?病院経営者が押さえるべき全体像と3つの経営課題」、続編1「電子カルテ情報共有サービス、見直しを経て本格運用へ」のシリーズ続編です。電子カルテ情報共有サービスの全体像と最新動向は、基礎記事・続編1をご参照ください。


評価軸の大転換──「整備しているか」から「活用できているか」へ

2026年度診療報酬改定における医療DX関連加算の再編で、最も重要な変化は評価軸そのものが変わったことです。

旧加算(医療DX推進体制整備加算・医療情報取得加算)では、「オンライン資格確認や電子カルテといったツールを導入しているか」という体制整備が評価の中心でした。これに対し、新加算「電子的診療情報連携体制整備加算」では、「それらのツールを使って実際に診療情報を連携できているか」という実績ベースの評価へとシフトしています。

「医療DX推進体制整備加算及び医療情報取得加算の見直し」と題されたスライド。令和6年(2024年)中の診療報酬の改定スケジュールを図解している。上段では「医療DX推進体制整備加算」が、10月からマイナ保険証の利用率実績に応じた3段階の評価(加算1〜3)へ移行し、段階的に要求利用率が引き上げられることが示されている。下段では「医療情報取得加算」が、12月から従来の保険証とマイナ保険証の点数差をなくし、初診・再診・調剤ともに一律1点に簡素化されることが説明されている。

引用:厚生労働省『医療DX推進体制整備加算等の要件の見直しについて』(中医協 総-2-1、令和7年7月23日) ※令和7年4月時点の見直し議論の資料です。令和8年6月施行の新加算「電子的診療情報連携体制整備加算」は本資料の延長線上で再編されています。

象徴的なのが、施設基準にマイナ保険証利用率30%以上が組み込まれたことです。これは「マイナ保険証対応の仕組みがあるか」ではなく、「実際に患者がマイナ保険証で受診しているか」を問う要件であり、医療DXの普及フェーズが「整備」から「活用」へと移行したことを示しています。


新加算の全体像──点数体系と施設基準のポイント

新加算は、外来(初診料・再診料・外来診療料)と入院(A207-5)の双方に設定されました。

外来における点数

区分

初診時

再診時

電子的診療情報連携体制整備加算1

15点

2点

電子的診療情報連携体制整備加算2

9点

2点

電子的診療情報連携体制整備加算3

4点

2点

※いずれも算定上限は月1回です。再診料および外来診療料の加算(2点)は、加算1〜3いずれかの施設基準を届け出ている保険医療機関が算定します。

入院における点数

区分

入院初日

電子的診療情報連携体制整備加算1

160点

電子的診療情報連携体制整備加算2

80点

※入院加算には加算3はありません。

加算1〜3の判定構造

施設基準は、全加算共通の要件と、加算2・加算1で追加的に求められる要件で構成されます。

  • 加算3:共通要件を満たす

  • 加算2:共通要件+追加要件の一部

  • 加算1:共通要件+追加要件すべて

共通要件には、オンライン資格確認体制、マイナ保険証利用率30%以上、電子処方箋を発行する体制または調剤情報を電子処方箋管理サービスに登録する体制、電子カルテ情報共有サービスとの接続インターフェース、医療DX推進体制の院内掲示・ウェブ掲載などが含まれます。

各加算の正式な要件項目および順序は、厚生労働省「基本診療料の施設基準等」(告示第70号)および「基本診療料の施設基準等及びその届出に関する手続きの取扱いについて」(保医発0305第7号)をご参照ください。

「医療DX推進体制整備加算の見直し(令和7年4月1日から適用)」と題されたスライド。令和7年(2025年)4月以降の同加算のさらなる改定内容を示している。左側の表では加算区分が6段階(加算1〜6)に再編された医科・歯科・調剤の点数体系が、右側の表ではマイナ保険証の要求利用率がさらに引き上げられること(例:加算1・4は30%から45%へ)や小児科向けの特例措置が記載されている。下部には、電子処方箋管理サービスや電子カルテ情報共有サービスへの対応など、算定に必要な9項目の施設基準が列挙されている。

引用:厚生労働省『医療DX推進体制整備加算等の要件の見直しについて』(中医協 総-2-1、令和7年7月23日) ※令和7年4月時点の見直し議論の資料です。令和8年6月施行の新加算「電子的診療情報連携体制整備加算」は本資料の延長線上で再編されています。


経営者が押さえるべき算定実務の重要ポイント

新加算は、要件の細かさに比して、いくつかの「見落とすと算定機会を失う」実務上の特殊ルールがあります。経営層が押さえるべきポイントを4つに整理します。

ポイント①:旧加算からの自動移行はなし、再届出が必須

令和8年5月31日時点で旧加算を届け出ていた医療機関も、6月1日以降に新加算を算定するには、改めて届出が必要です。届出を失念すると、加算自体を算定できなくなるため、地方厚生(支)局への届出手続きを確実に行う必要があります。

届出の具体的な期限・手続きについては、地方厚生(支)局のウェブサイトまたは厚生労働省「令和8年度診療報酬改定について」のページをご確認ください。

ポイント②:マイナ保険証利用率は「過去の実績」で判定

マイナ保険証利用率30%以上の要件は、算定月よりも一定期間前のレセプト件数の実績で判定される仕組みです。つまり、6月から算定したい場合、過去の実績が要件を満たしている必要があります。今からの努力で直近の利用率を上げても、現時点の算定可否には間に合わない可能性があるため、すでに利用率が30%を下回っている医療機関は、加算3または届出見送りの判断も視野に入れる必要があります。

利用率の具体的な算定期間・判定方法については、厚生労働省の疑義解釈資料および地方厚生(支)局の案内をご確認ください。

ポイント③:電子カルテ情報共有サービスの要件は「当面みなし」

電子カルテ情報共有サービスとの接続インターフェース要件は、当面の間、基準を満たしているものとみなされる経過措置が設定されています。これは、サービス自体がまだ本格運用を開始していないためで、続編1で解説した通り令和8年度冬頃の運用開始が目指されています。本格運用が開始された場合には、速やかに導入するよう努めることが求められます。

ポイント④:同月内の初診・再診で併算定不可

電子的診療情報連携体制整備加算を初診時に算定した場合、同月内の再診では算定できません。逆に、再診時に算定した場合、同月内に他疾患で初診を行っても算定できません。同月内の二重算定はできない仕組みです。

「> 保険証利用率(レセプト件数ベース・4月実績)について」と題されたスライド。病院、医科診療所、歯科診療所、薬局の4つの施設類型別に、マイナ保険証利用率の分布を示すヒストグラムが配置されている。各グラフには施設数、平均値、最大・最小値、四分位数が記載されており、平均値はいずれの施設も31%〜34%程度であること、薬局の中央値が36.2%と他よりやや高い傾向にあることが示されている。

引用:厚生労働省『医療DX推進体制整備加算等の要件の見直しについて』(中医協 総-2-1、令和7年7月23日) ※令和7年4月時点の見直し議論の資料です。令和8年6月施行の新加算「電子的診療情報連携体制整備加算」は本資料の延長線上で再編されています。


なぜこの新加算が「断らない救急」と直結するのか

ここまで制度面を整理してきましたが、本記事の核心はここからです。新加算は、表面的には「医療DXの加算」ですが、経営の視点で見ると「断らない救急」を実現できる病院ほど算定機会と収益が最大化される構造になっています。

構造①:実績ベース加算は「使いこなせる現場」を持つ病院に有利

旧加算は「ツールを導入していれば算定」でしたが、新加算は「実際に活用できている病院」が評価されます。マイナ保険証利用率30%は、患者対応の現場運用の質を反映する指標です。電子処方箋の活用は、医師の処方フローへの組み込み具合を反映します。電子カルテ情報共有サービスへの参加実績(経過措置後)は、共有情報を診療に活かせる現場体制を持つかどうかを反映します。

つまり、新加算は「医療DXを使いこなせる現場体制があるか」を診療報酬で評価する仕組みです。

構造②:救急受入の質と新加算の要件は同じ軸の上にある

「医療DXを使いこなせる現場」とは、具体的には「情報を持って判断できる現場」です。これは救急現場で最も顕著に発揮される能力です。

  • 搬送依頼時に患者の傷病名・薬剤情報・アレルギー情報を瞬時に読み解ける

  • 共有情報をもとに、自院で対応可能かを即断できる

  • 「情報があるのに断る」のではなく「情報を活かして応需する」判断ができる

これらの能力は、新加算が評価する「情報の活用能力」と完全に重なります。逆に言えば、「断らない救急を運用できる病院は、新加算の要件も実質的に満たしやすい構造」になっています。

構造③:算定機会の最大化は応需件数で決まる

新加算は初診時に最大15点、入院初日に最大160点が算定可能です。これらの算定機会は、応需件数が多ければ多いほど積み上がります

つまり、加算を取得することがゴールではなく、取得した加算を「実際に算定できる回数を増やす」=「応需率を上げる」ことが収益最大化の本丸です。たらい回しを解消し、断らない救急を運用できる病院は、新加算の収益効果を最も大きく享受できる構造になっています。


まとめ──新加算は「経営改善のスタート地点」

電子的診療情報連携体制整備加算は、単なる診療報酬の再編ではなく、医療DXの普及フェーズが「整備」から「活用」へと移行したことを象徴する制度です。そして、新加算が評価する「情報活用能力」は、「断らない救急」を実現するための現場能力と同じ軸の上にあります。

加算を「取れる体制」を整えることはスタート地点に過ぎません。取得した加算を「応需件数の増加」によって最大限に活かせるかどうかが、これからの病院経営の本丸です。情報基盤の整備と並行して、それを活かして救急受入を最大化できる現場体制を構築することが、新加算時代の経営戦略の核心となります。

ドクターズプライムワークは、救急のたらい回し解消と病院経営の黒字化を実現する救急改善プラットフォームです。「断らない医師」のマッチングとデータ分析を組み合わせ、新加算時代に応需率を最大化する救急医療体制づくりをサポートします。お気軽にご相談ください。


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シリーズ:電子カルテ情報共有サービス


参照資料

執筆・編集・監修

執筆・編集:ドクターズプライムワーク編集部
「救急車のたらい回しをゼロにする」をビジョンに、100病院を超える支援実績を持つ救急改善プラットフォーム「ドクターズプライムワーク」を運営しています。現状を可視化する「データ分析」と、病院が主体となって医師を確保できる「採用プラットフォーム」を一体で提供し、「自分らしく選べる医療をすべての人に」届けるための基盤を構築しています。 当編集部では、医療機関の変革に伴走する中で得られた現場特有の課題や解決のヒントを整理し、病院運営の質を高める有益な情報を発信しています。

監修:田 真茂(株式会社ドクターズプライム 代表取締役・医師)
聖路加国際病院救命救急センターで当直帯責任者を務めた後、2017年に株式会社ドクターズプライムを創業。詳細プロフィールは、会社紹介ページの監修・運営者情報をご覧ください。

参考情報:厚生労働省、消防庁、中医協、四病協資料、自社実績データ 

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