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電子カルテ情報共有サービス、見直しを経て本格運用へ

電子カルテ情報共有サービス、見直しを経て本格運用へ

更新日:

2026/5/26

電子カルテ情報共有サービス、見直しを経て本格運用へ|メソッド

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電子カルテ情報共有サービスの本格運用が、令和8年度(2026年度)冬頃の開始に向けて整備が進められています。2026年3月に厚生労働省が公表した「概要案内2.0版」では、これまで議論されてきた仕様が抜本的に見直されることが明らかになり、続く4月24日の第31回医療等情報利活用ワーキンググループでは、傷病名・アレルギー・感染症・検査の各情報について、本格運用に向けた具体的な対応方針が示されました。本記事では、これら最新の動向を時系列で整理しながら、本格運用後に病院経営に何が起きるのかを解説します。

本記事の情報基準日:2026年5月 本記事は基礎記事「【基礎解説】電子カルテ情報共有サービスとは?病院経営者が押さえるべき全体像と3つの経営課題」のシリーズ続編です。サービスの全体像と「3文書6情報」「医療DX推進体制整備加算」等の基礎知識は、基礎記事をご参照ください。本記事はその後アップデートされた最新動向を中心に解説しています。


これまでの動き──モデル事業から仕様の抜本見直しまで

電子カルテ情報共有サービスは、2025年2月のモデル事業開始から約1年が経過した2026年3月、厚生労働省よりサービス仕様の抜本的な見直しが公表されました。これは、現場運用と仕様の乖離、既存システムとの接続や情報変換における技術的な課題などを踏まえた判断です。

タイムライン①:2025年2月〜2026年4月

時期

出来事

2025年2月3日

愛知県・藤田医科大学を皮切りに、全国10地域でモデル事業開始

2026年1月

システムベンダ向け技術解説書v2.0.0公開

2026年3月

「電子カルテ情報共有サービス 概要案内 2.0版」公開──仕様の抜本見直しが明示

2026年3月12日

第28回医療等情報利活用ワーキンググループ(電子カルテ普及方針を議論)

2026年4月24日

第31回医療等情報利活用ワーキンググループ(各情報の対応方針を提示)

引用:厚生労働省「電子カルテ情報共有サービス 概要案内 2.0版」(令和8年3月)第31回医療等情報利活用ワーキンググループ 資料1「電子カルテ情報共有サービスに関する検討事項について」(令和8年4月24日)


何が変わったか──仕様の抜本見直しで決まった3つのこと

「概要案内2.0版」で厚生労働省が明示した見直しは、これまで本格運用に向けて準備を進めてきた医療機関にとって、無視できない内容を含んでいます。とりわけ大きいのは、「6情報」の構成が実質的に変わることです。

見直し①:処方情報は対象外に

これまで議論されてきた「3文書6情報」のうち、処方情報は電子カルテ情報共有サービスでは扱わない方針が確定しました。

厚生労働省は概要案内2.0版で「電子処方箋管理サービスにおいて院内処方を扱う制度設計が明確化されたことから、従来の『診療情報提供書・退院時サマリーから処方情報を抽出し、臨床情報として共有する方式』は取りやめます」と明記しています。

つまり、処方情報は電子処方箋管理サービスに完全集約され、電子カルテ情報共有サービスとしては、傷病名・薬剤アレルギー等・その他アレルギー等・感染症・検査の各情報を中心に運用される形になります(制度全体の枠組みとしては「3文書6情報」の呼称が引き続き用いられていますが、処方情報の実装は電子処方箋管理サービスに集約されたため、実質的には5情報が中心となる構造です)。

「電子カルテ情報共有サービスの概要」と題されたスライド。全国の医療機関等で情報を共有・閲覧できる制度の全体像を示した図。医療機関から登録された「文書情報(診療情報提供書、退院時サマリー、健診結果報告書)」と「臨床情報(検査、感染症、処方、傷病名、アレルギー等)」が支払基金のシステムに保存される。これらの情報は、マイナンバーカードによる患者の同意を得た上で全国の他医療機関で閲覧できるほか、医療保険者や、マイナポータルを通じて患者自身も一部の情報を閲覧できる仕組みが説明されている。

出典:第31回医療等情報利活用ワーキンググループ 資料1「電子カルテ情報共有サービスに関する検討事項について」(令和8年4月24日)

見直し②:臨床情報項目の定義の再整理

傷病名、アレルギー情報、検査情報等の各項目について、「閲覧側の医療機関・薬局や患者本人が誤解しない情報共有となるよう」、臨床的観点を含めた定義の再整理が行われます。

特に傷病名情報については、2.0版にも「臨床的視点を踏まえて、定義の見直しと再整理を進めております。次回の更新までしばらくお待ちいただけますようお願いいたします」と明記されており、見直し作業が継続中です。

見直し③:今後は「医療従事者向け利用指針」が示される予定

定義の再整理を踏まえ、今後「医療従事者向け利用指針(仮)」が厚生労働省から示される予定です。これは、医療従事者が現場で本サービスをどう使うかを示す重要な指針となります。


いま進行中の動き──第31回ワーキングで示された対応方針

2026年4月24日に開催された第31回医療等情報利活用ワーキンググループでは、本格運用に向けた各情報の具体的な対応方針が厚生労働省から提示されました。これは、概要案内2.0版で示された仕様抜本見直しを踏まえ、技術作業班での議論を経て整理されたものです。

タイムライン②:2026年3月以降〜

時期

出来事

2026年3月

概要案内2.0版で仕様抜本見直しを公表

2026年4月24日

第31回ワーキングで各情報の対応方針を提示

2026年5月

技術解説書の改版作業、医療従事者向け利用指針の作成が進行中

第31回ワーキングで示された主要な対応方針

傷病名情報:モデル事業において「未提供フラグ」「未告知フラグ」の運用が医師にとって負担となり、情報共有が進まない現状が判明したことを受け、以下の方針が示されました。

  • 医療機関等に対しては、原則、電子カルテ内で管理している傷病名全てを共有

  • 患者向けの情報提供では、「患者の理解に齟齬や誤解を生じさせる恐れがないと医師が判断した傷病名のみ共有

  • 医療機関等にも患者にも共有しない傷病名は、電子カルテ情報共有サービスへの送信対象外

「(参考)傷病名の共有のイメージ」と題されたスライド。医師が電子カルテに入力した傷病名が、電子カルテ情報共有サービスを通じて他医療機関や患者へ共有される流れを図解している。表の例として、「脂質異常症」や「2型糖尿病」は医療機関と患者の双方に共有されるが、「2型糖尿病の疑い」は他医療機関には共有されるものの患者には共有されない(非表示になる)など、医師が共有先を選択・制御できる仕組みが示されている。

出典:第31回医療等情報利活用ワーキンググループ 資料1「電子カルテ情報共有サービスに関する検討事項について」(令和8年4月24日)

感染症情報:モデル事業では約9割の情報が共有されていない現状を踏まえ、医療機関等向けには電子カルテにデータが登録されたタイミングで即時共有、患者向けには医師が「患者への送付が可能」と判断した時点で共有する運用案が示されました。

アレルギー情報:現場での入力負担が大きいことが判明したため、まずはアナフィラキシー症状が生じた(疑い含む)アレルギー物質に絞って情報共有を開始する方針が示されました。食品アレルギーについては、食品表示法に基づく28品目から共有を進める方向です。

検査情報:単位の統一は当分の間、各医療機関で取り扱う単位での登録を可能とする運用とし、特にマイナポータルで提供する場合の単位のあり方は厚労科研で引き続き検討されます。

処方情報:概要案内2.0版で示された通り、電子処方箋管理サービスの仕組みでの情報共有を行う方針が改めて確認されました。


これから何が起きるのか──本格運用までのスケジュール

第31回ワーキング資料1で、厚生労働省は本格運用までのスケジュール案を以下のように示しています。

タイムライン③:2026年〜本格運用、そして2030年へ

時期

予定

2026年4〜5月頃

技術解説書改版作業、運用整理

2026年5月頃

技術解説書(検証用)公開予定

2026年6〜10月頃

技術解説書(検証用)に伴う電子カルテ改修、モデル医療機関での検証

2026年中(準備ができ次第)

医療従事者向け利用指針(仮)の公表

2026年秋頃

技術解説書(運用開始用)公開予定

令和8年度(2026年度)冬頃

電子カルテ情報共有サービスの全国的な運用開始

遅くとも2030年

全医療機関で電子カルテ普及率概ね100%目標

「6.今後の対応について」と題されたスライド。令和8年度を中心とした今後のスケジュール案を示すガントチャート。国・支払基金による技術解説書の改版やサービスのシステム改修、ガイドライン(利用指針)の作成と並行して、モデル医療機関での検証を実施し、令和8年度の冬頃を目途に全国的な運用開始を目指すというタイムラインが描かれている。

出典:第31回医療等情報利活用ワーキンググループ 資料1「電子カルテ情報共有サービスに関する検討事項について」(令和8年4月24日)

これらの工程は、第31回ワーキング資料1の「今後のスケジュール(案)」として厚生労働省から正式に提示されたものです。技術作業班での運用整理と並行して、モデル医療機関での検証が進められ、令和8年度冬頃の全国運用開始が目指されています。


本格運用後、病院経営者が直面する「救急受入の質的転換」

ここまで制度面の最新動向を整理してきましたが、最も重要なのは「この変化が病院経営にどう影響するか」です。とりわけ救急医療の現場では、本格運用を境に応需判断の前提が根本から変わります。これは経営にとって、たらい回しの解消と応需率向上=経営黒字化の千載一遇のチャンスです。

① 「情報なし応需判断」から「情報あり応需判断」への転換

これまで、救急搬送依頼時に医師が判断材料にできるのは、救急隊からの限られた情報だけでした。患者の既往歴・服薬歴・アレルギー情報は、搬送後に問診や持参薬から確認するしかなく、これがたらい回しの大きな要因の一つとなっていました。

本格運用が始まれば、患者の傷病名・薬剤アレルギー・検査値・感染症情報が事前に把握できる状態になります。情報の有無で応需判断のスピードと精度は劇的に変わります

しかし、情報があっても活かせるかどうかは現場体制次第です。情報を瞬時に読み解き、自院で対応可能かを即断できる医師が当直していなければ、せっかくの情報基盤を活かしきれません。

② 「断れる病院」と「断らない病院」が選別される時代へ

情報が共有される前提では、「対応可能な症例なのに断る」病院は、地域連携の中で信頼を失います。患者の状態が事前にわかる以上、応需可否の判断基準がより明確に評価されるようになるからです。

逆に、情報を活用して「断らない判断ができる病院」は、救急搬送が集中し、救急医療管理加算等の収益が積み上がります。たらい回しの社会問題が政策の重要課題となっているなか、本格運用は「断らない救急」を経営の柱に変える絶好の機会です。

③ データで証明する「断らない救急」が経営の差別化軸になる

電子カルテ情報共有サービスにより、各病院の応需実績や対応症例は地域医療連携のなかで可視化されやすくなります。「うちは断らない病院です」とデータで示せる病院が、地域医療の中で選ばれる存在になります。

このとき問われるのは「医師が何人いるか」ではなく、「断らない判断ができる医師がいるか」「データに基づいた現場運用ができているか」です。情報基盤というハードウェアは令和8年度冬頃に整います。問題は、それを活かすソフトウェア──つまり医師の判断力と現場運用の質──を、いま病院経営者がどう準備するかです。


まとめ──制度の本格運用は「救急改善の元年」になる

電子カルテ情報共有サービスの令和8年度冬頃の本格運用は、単なる制度の節目ではなく、救急医療そのものの転換点です。情報基盤が整うこのタイミングで、応需率を上げ、たらい回しをなくし、救急を経営の柱に変える体制を構築できるかどうかが、これからの病院経営を左右します。

仕様の抜本見直しによって処方情報が電子処方箋管理サービスへ集約されても、本サービスの本質的な価値──「救急現場で患者情報が事前にわかる」ことが現実になる──は揺らぎません。むしろ、見直しによって運用が現場に馴染みやすい形になることで、現場での活用余地は広がります。

ドクターズプライムワークは、救急のたらい回し解消と病院経営の黒字化を実現する救急改善プラットフォームです。「断らない医師」のマッチングとデータ分析を組み合わせ、電子カルテ情報共有サービスの本格運用を救急改善・経営改善のチャンスとして活かす体制づくりをサポートします。お気軽にご相談ください。


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シリーズ:電子カルテ情報共有サービス


参照資料

執筆・編集・監修

執筆・編集:ドクターズプライムワーク編集部
「救急車のたらい回しをゼロにする」をビジョンに、100病院を超える支援実績を持つ救急改善プラットフォーム「ドクターズプライムワーク」を運営しています。現状を可視化する「データ分析」と、病院が主体となって医師を確保できる「採用プラットフォーム」を一体で提供し、「自分らしく選べる医療をすべての人に」届けるための基盤を構築しています。 当編集部では、医療機関の変革に伴走する中で得られた現場特有の課題や解決のヒントを整理し、病院運営の質を高める有益な情報を発信しています。

監修:田 真茂(株式会社ドクターズプライム 代表取締役・医師)
聖路加国際病院救命救急センターで当直帯責任者を務めた後、2017年に株式会社ドクターズプライムを創業。詳細プロフィールは、会社紹介ページの監修・運営者情報をご覧ください。

参考情報:厚生労働省、消防庁、中医協、四病協資料、自社実績データ 

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