更新日:
2026/6/23

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電子カルテ情報共有サービスの本格運用が、令和8年度(2026年度)冬頃の開始に向けて整備が進められています。2026年3月に厚生労働省が公表した「概要案内2.0版」では、これまで議論されてきた仕様が抜本的に見直されることが明らかになり、続く4月24日の第31回医療等情報利活用ワーキンググループでは、傷病名・アレルギー・感染症・検査の各情報について、本格運用に向けた具体的な対応方針が示されました。本記事では、これら最新の動向を時系列で整理し、「いつから何が変わるのか」を明確にします。
※本記事は、基礎記事「電子カルテ情報共有サービスとは?3文書6情報・本格運用スケジュール・新加算をわかりやすく解説」のシリーズ続編です。サービスの全体像・3文書6情報・新加算の基礎は基礎記事をご参照ください。本記事は、その後アップデートされた最新動向(スケジュールと仕様見直し)を中心に解説します(情報基準日:2026年6月)。
電子カルテ情報共有サービスはいつから本格運用されるのか/概要案内2.0版で何が変わったのか/処方情報の扱いはどうなったのか/各情報(傷病名・感染症・アレルギー・検査)の対応方針は/本格運用までのスケジュールはどうなっているか
本格運用は「令和8年度(2026年度)冬頃」を目標に全国展開が目指されている
2026年3月の「概要案内2.0版」で仕様が抜本的に見直された
処方情報は電子処方箋管理サービスへ集約され、本サービスでは扱わない方針が確定
傷病名・感染症・アレルギー・検査の各情報について、現場負担を踏まえた対応方針が示された
2026年中に医療従事者向け利用指針が示され、モデル医療機関での検証を経て冬頃に全国運用開始の予定
電子カルテ情報共有サービスは、2025年2月のモデル事業開始から約1年が経過した2026年3月、厚生労働省よりサービス仕様の抜本的な見直しが公表されました。現場運用と仕様の乖離、既存システムとの接続や情報変換における技術的課題などを踏まえた判断です。
2025年2月3日:愛知県・藤田医科大学を皮切りに、全国10地域でモデル事業開始 2026年1月:システムベンダ向け技術解説書v2.0.0公開 2026年3月:「電子カルテ情報共有サービス 概要案内2.0版」公開──仕様の抜本見直しが明示 2026年3月12日:第28回医療等情報利活用ワーキンググループ(電子カルテ普及方針を議論) 2026年4月24日:第31回医療等情報利活用ワーキンググループ(各情報の対応方針を提示)
引用:厚生労働省「電子カルテ情報共有サービス 概要案内2.0版」(令和8年3月)、第31回医療等情報利活用ワーキンググループ 資料(令和8年4月24日)
「概要案内2.0版」で厚生労働省が明示した見直しのうち、病院経営に関わるのは次の点です。
これまで議論されてきた「3文書6情報」のうち、処方情報は電子カルテ情報共有サービスでは扱わない方針が確定しました。厚生労働省は、電子処方箋管理サービスにおいて院内処方を扱う制度設計が明確化されたことから、従来の「診療情報提供書・退院時サマリーから処方情報を抽出し臨床情報として共有する方式」は取りやめると整理しています。
つまり、処方情報は電子処方箋管理サービスに集約され、電子カルテ情報共有サービスとしては、傷病名・薬剤アレルギー等・その他アレルギー等・感染症・検査の各情報を中心に運用される形になります(制度全体としては「3文書6情報」の呼称が引き続き用いられますが、処方情報の実装は電子処方箋管理サービスに集約されたため、実質的には5情報が中心となる構造です)。
出典:第31回医療等情報利活用ワーキンググループ 資料(令和8年4月24日)
傷病名・アレルギー・検査情報等の各項目について、閲覧側の医療機関・薬局や患者本人が誤解しないよう、臨床的観点を含めた定義の再整理が行われています。特に傷病名情報は、定義の見直しと再整理が継続中であることが明記されています。
定義の再整理を踏まえ、医療従事者が現場で本サービスをどう使うかを示す「医療従事者向け利用指針(仮)」が、今後厚生労働省から示される予定です。
2026年4月24日の第31回ワーキングで示された主要な対応方針は次のとおりです。
傷病名情報:モデル事業で「未提供フラグ」「未告知フラグ」の運用が医師の負担となり共有が進まない現状を受け、医療機関等には原則として電子カルテ内の傷病名すべてを共有、患者向けには医師が誤解を生じさせないと判断した傷病名のみ共有、いずれにも共有しない傷病名は送信対象外とする方針が示されました。
感染症情報:モデル事業で約9割が未共有だった現状を踏まえ、医療機関等向けには登録タイミングで即時共有、患者向けには医師が送付可能と判断した時点で共有する運用案が示されました。
アレルギー情報:入力負担が大きいことから、まずはアナフィラキシー症状が生じた(疑い含む)アレルギー物質に絞って共有を開始する方針です。
検査情報:医療機関間では各医療機関が登録した生データを共有し、患者向けには単位を統一したデータを共有する方針が示されています。
出典:第31回医療等情報利活用ワーキンググループ 資料(令和8年4月24日)
第31回ワーキング資料で、厚生労働省は本格運用までのスケジュール案を次のように示しています。
2026年4〜5月頃:技術解説書改版作業、運用整理 2026年中(準備ができ次第):医療従事者向け利用指針(仮)の公表 2026年秋頃:技術解説書(運用開始用)公開予定 令和8年度(2026年度)冬頃(2027年1〜2月を見込む):電子カルテ情報共有サービスの全国的な運用開始 遅くとも2030年:全医療機関で電子カルテ普及率概ね100%目標
出典:第31回医療等情報利活用ワーキンググループ 資料(令和8年4月24日)
技術作業班での運用整理と並行して、モデル医療機関での検証が進められ、令和8年度冬頃の全国運用開始が目指されています。
最も重要なのは、この変化が病院経営にどう影響するかです。救急医療の現場では、本格運用を境に応需判断の前提が変わります。これまで救急搬送依頼時に医師が判断材料にできるのは救急隊からの限られた情報だけで、既往歴・服薬歴・アレルギー情報は搬送後に確認するしかありませんでした。本格運用が始まれば、患者の傷病名・アレルギー・検査値・感染症情報が事前に把握できる状態になり、応需判断のスピードと精度が変わります。
ただし、情報があっても活かせるかは現場体制次第です。情報を瞬時に読み解き、自院で対応可能かを即断できる体制があってはじめて、情報基盤が応需率向上につながります。情報基盤というハードウェアは令和8年度冬頃に整います。問われるのは、それを活かす現場運用と医師体制の準備です。
救急応需率の改善そのものは「救急応需率とは?計算方法・全国平均・改善方法を医師が解説」、新加算(電子的診療情報連携体制整備加算)の点数・施設基準の実務は続編「【実務解説】新加算で「断らない救急」を経営の柱に」をご参照ください。サービスの基礎は「電子カルテ情報共有サービスとは?3文書6情報・本格運用スケジュール・新加算をわかりやすく解説」で解説しています。
電子カルテ情報共有サービスの令和8年度冬頃の本格運用は、単なる制度の節目ではなく、救急医療の前提を変える転換点です。処方情報が電子処方箋管理サービスへ集約されても、「救急現場で患者情報が事前にわかる」という本質的な価値は揺らぎません。むしろ見直しによって運用が現場に馴染みやすくなり、活用余地は広がります。情報基盤が整うこのタイミングで、応需率を高め、救急を経営の柱に変える体制を準備できるかが、これからの病院経営を左右します。
Q. 電子カルテ情報共有サービスはいつから本格運用されますか? A. 厚生労働省は「令和8年度(2026年度)冬頃」の全国運用開始を目標としています。モデル医療機関での検証を経て、段階的に展開される予定です。
Q. 概要案内2.0版で何が変わりましたか? A. 2026年3月に仕様が抜本的に見直され、処方情報の扱いや各臨床情報の定義が整理し直されました。背景にはモデル事業で判明した現場運用と仕様の乖離があります。
Q. 処方情報の扱いはどうなりましたか? A. 処方情報は電子処方箋管理サービスへ集約され、電子カルテ情報共有サービスでは扱わない方針が確定しました。本サービスは傷病名・アレルギー・感染症・検査の各情報が中心となります。
Q. 各情報の共有方針はどうなっていますか? A. 傷病名は原則すべて医療機関間で共有、感染症は登録時に即時共有、アレルギーはアナフィラキシー関連から開始、検査は当面各院の単位での登録を可能とする方針が示されています。
Q. 新加算との関係は? A. 新加算(電子的診療情報連携体制整備加算)では本サービスへの対応が算定区分に影響します。点数・施設基準の実務は続編記事で解説しています。
厚生労働省「電子カルテ情報共有サービス」(医療機関等向け):https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryou/johoka/denkaru_iryoujuuji.html
厚生労働省「電子カルテ情報共有サービス 概要案内2.0版」(令和8年3月):https://www.mhlw.go.jp/content/10800000/001457777.pdf
厚生労働省 健康・医療・介護情報利活用検討会 医療等情報利活用ワーキンググループ(第31回・令和8年4月24日/第28回・令和8年3月12日の資料・議事録):https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/other-isei_210261.html
執筆・編集・監修
執筆・編集:ドクターズプライムワーク編集部
「救急車のたらい回しをゼロにする」をビジョンに、100病院を超える支援実績を持つ救急改善プラットフォーム「ドクターズプライムワーク」を運営しています。現状を可視化する「データ分析」と、病院が主体となって医師を確保できる「採用プラットフォーム」を一体で提供し、「自分らしく選べる医療をすべての人に」届けるための基盤を構築しています。 当編集部では、医療機関の変革に伴走する中で得られた現場特有の課題や解決のヒントを整理し、病院運営の質を高める有益な情報を発信しています。
監修:田 真茂(株式会社ドクターズプライム 代表取締役・医師)
聖路加国際病院救命救急センターで当直帯責任者を務めた後、2017年に株式会社ドクターズプライムを創業。詳細プロフィールは、会社紹介ページの監修・運営者情報をご覧ください。
参考情報:厚生労働省、消防庁、中医協、四病協資料、自社実績データ



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