更新日:
2026/5/20

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救急応需率とは何か
救急応需率はどう計算するのか
救急応需率の全国平均はどのくらいか
救急応需率が下がる主な原因は何か
救急応需率を改善するにはどうすればよいか
救急応需率は医師数を増やせば改善するのか
項目 | 結論 |
|---|---|
定義 | 消防機関からの救急搬送要請のうち、医療機関が受け入れた割合 |
計算式 | 救急応需率(%)= 救急受入件数 ÷ 救急搬送要請件数 × 100 |
参考水準 | 病院機能・規模により幅があり、救命救急センターで90〜99%、二次救急で50〜95% |
主な低下要因 | 当直医の専門外への不安、受入基準の属人化、病床満床、救急隊との信頼低下 |
最も効く改善策 | 経営層による方針明示と、受入基準のマニュアル化 |
改善にかかる期間 | 3〜12ヶ月(取り組み内容による) |
救急応需率とは、消防機関から医療機関への救急搬送要請のうち、医療機関が実際に受け入れた割合を示す指標です。
厚生労働省「救命救急センターの充実段階評価」において、応需率は「消防機関からの電話による搬送受入要請のうち、医療機関が受け入れた割合」と定義されており、救命救急センターの体制を測る指標として位置づけられています。なお、消防機関側の調査としては、総務省消防庁「救急搬送における医療機関の受入状況等実態調査」が現場到着時間や照会回数等を継続的に集計しています。
救急応需率は、単に「何台受け入れたか」を示す数字ではなく、以下の3つの観点で病院経営と地域医療を測る指標として機能します。
地域医療機能:地域の救急医療体制が適切に機能しているか
病院経営:救急からの入院、病床稼働率、DPC収益への波及
医療従事者:当直医・看護師・コメディカルの体制と連携
救急応需率は、以下のシンプルな計算式で求められます。
救急応需率(%)= 救急受入件数 ÷ 救急搬送要請件数 × 100ある病院で1ヶ月間に以下の実績があった場合:
救急搬送要請件数:200件
救急受入件数:170件
不応需件数:30件
→ 救急応需率=170 ÷ 200 × 100 = 85.0%
実務的には、以下の点で集計方法が病院・地域ごとに異なる場合があります。
「要請件数」の定義:消防機関からの電話による搬送依頼、ホットライン、現場からの直接要請のいずれを含むか
「受入件数」の定義:実際に救急車が到着し、診察した件数か、入院に至った件数か
集計対象期間:月次、四半期、年次のどれで管理するか
時間帯区分:平日日中、夜間、休日でそれぞれ集計するか
厚労省・消防庁の調査では、「消防機関からの電話による搬送受入要請」を1件と数え、現場からのドクターヘリ・ドクターカーによる搬送も「救急搬送件数」に含めて算出されます。
日本において、救急応需率の全国統一の公式平均値は公表されていません。ただし、医療の質指標(QI)を公開している病院群のデータから、おおよその水準が把握できます。
QI(Quality Indicator:医療の質指標) とは、病院が自院の医療の質を客観的な数値で測定し、自主的に公開する取り組みです。死亡率、再入院率、感染症発生率、救急応需率など、医療の質を数値化した50〜100項目の指標で構成されます。
代表的なQI事業として、以下があります。
日本病院会「QIプロジェクト」:2024年度は381病院が参加し、一般病床32項目・精神病床12項目のQIを測定・公表
全日本病院協会「診療アウトカム評価事業」:全院共通指標(転倒・院内感染等)と主要疾患の臨床指標を公表。なお厚生労働省補助事業「医療の質の評価・公表等推進事業」は、日本病院会・全日本病院協会・日本赤十字社・国立病院機構など複数団体が並行して実施しています。
国立病院機構「QIシステム」:国立病院機構の140病院が参加
これらに参加する病院は、医療の質改善に積極的なため、QI参加病院の平均値は全病院平均よりやや高めに出る傾向があります。
公開されているQIデータや個別病院の公表値から、おおよその参考水準は以下の通りです。
救命救急センター:90〜99%(先進事例では99%超)
二次救急医療機関(中規模):70〜90%
二次救急医療機関(小規模・地方):50〜80%
例えば済生会滋賀県病院では、2024年度の救急応需率が99.96%と公表されています。
一方、日本病院会の調査(2013年)によれば、救急受診のうち救急車の不応需率は1日平均でも2割弱にのぼり、その半数以上が「対応可能な医師の不在」を理由としていることが指摘されています。休日・夜間の不応需率は、平日よりさらに高くなる傾向があります。
各病院のQIは、以下のソースで確認できます。
個別病院の公式サイト(「(病院名)QI」「(病院名)医療の質指標」で検索)
日本病院会 QIプロジェクト:https://www.hospital.or.jp/qi/
全日本病院協会 医療の質関連事業
国立病院機構 QIシステム
ただし、これらは「QI公開に参加する病院」のデータであり、全病院を網羅していない点に注意が必要です。
救急応需率が業界平均を下回る病院には、共通する5つの構造的な原因があります。
当直医が自身の専門外の症例(外科医に対する脳卒中、内科医に対する外傷など)に対応することへの不安から、受入を躊躇するケースです。これは「医師個人の問題」ではなく、「病院として専門外症例への対応方針が明確化されていない」ことに起因します。
「誰が当直か」によって受入判断が変わる状態を指します。同じ症例でもベテラン医師は受け入れ、若手医師は断る、という事態が発生します。これは病院全体の応需率の不安定化につながります。
救急で受け入れても入院ベッドが確保できないため、結果として受入を断らざるを得ないケースです。退院・転院支援、地域連携の弱さが背景にあります。
過去に複数回断られた経験のある救急隊が、最初から候補病院から外す「事前回避」の状態です。一度信頼を失うと、回復には時間がかかります。
2024年4月1日に施行された医師の働き方改革により、勤務医の時間外・休日労働がA水準で年960時間(B水準等で年1,860時間)に制限されたため、従来型の当直体制の維持が難しくなっています。特に大学医局からの派遣縮小と相まって、地方病院では深刻な課題となっています。
応需率改善は「医師数を増やす」だけでは解決しません。組織・仕組み・データの3層で取り組むことが効果的です。
最も効果的かつ最も見落とされがちな改善策です。応需率の改善は、現場の努力ではなく経営層の意思決定から始まります。具体的には:
病院長・理事長が「救急車を断らない」を明文化した方針として発信
院内に方針を掲示し、職員全員に共有
経営会議で月次の応需率を定点観測項目とする
「誰が当直でも同じ判断ができる」状態を作ります。具体的には:
症例別・時間帯別の受入基準を一覧化
専門外症例への対応プロトコルを整備
バックアップ医師(オンコール)への連絡基準を明確化
「なぜ断ったのか」を全件記録し、改善ポイントを特定します。具体的には:
不応需の全件で理由を記録(病床満床、専門外、当直医手一杯など)
月次・四半期で集計し、最頻出の理由から優先的に対策
救急隊にもデータをフィードバックし、信頼関係を回復
常勤医の負担軽減と、非常勤医師の活用を組み合わせます。具体的には:
「救急車を断らない」スタンスを採用基準とした非常勤医師の確保
当直枠の柔軟な組み方(複数医師でのバックアップ体制)
医師の働き方改革に対応した宿日直許可の取得
救急隊からの信頼は、データと実績で回復します。具体的には:
月次の応需率を救急隊に共有
「最近受入を増やしている」というシグナルを送る
地域メディカルコントロール協議会への積極参加
結論:医師数の増加だけでは応需率は改善しません。
医師数を増やしても、以下の3つが整っていなければ応需率は上がりません。
方針:経営層が「断らない救急」を明確にコミットしているか
仕組み:受入基準のマニュアル化、不応需理由の可視化があるか
質:採用する医師が「救急車を断らない」スタンスを持っているか
逆に、医師数を増やさなくても、上記3つを整えるだけで応需率が改善した事例は多くあります。重要なのは「量」より「質と仕組み」です。
救急応需率は、単独の指標ではなく、以下の経営指標と密接に連動します。
関連指標 | 救急応需率との関係 |
|---|---|
病床稼働率 | 救急からの入院増加 → 病床稼働率向上 |
DPC収益 | 救急医療入院症例の増加 → DPC収益増 |
救急補正係数 | 救急補正係数 救急医療入院における入院初期(2日目まで)の医療資源投入の包括点数からの乖離を補正する係数 |
救急医療管理加算1の算定比率 | 救急応需との連動 |
常勤医の時間外労働 | 体制構築により負担軽減 |
紹介率 | 地域連携の強化 |
A. 病院の規模・機能により異なりますが、二次救急医療機関で85〜95%、救命救急センターで95%以上が目安です。まずは「現状から+10ポイント」を中期目標として設定するのが現実的です。
A. 経営層の方針が不明確、受入基準が属人化、不応需理由が記録されていない、の3点が共通します。
A. 部分的にしか改善しません。方針・仕組み・医師の質の3つを整えることが優先です。
A. 経営層の方針発信と受入基準のマニュアル化だけなら3ヶ月で初期効果が見えます。組織文化レベルの改善には6〜12ヶ月、救急隊との信頼回復まで含めると1年以上を想定すべきです。
A. 一貫した受入実績の積み重ねが唯一の方法です。月次の応需率を救急隊と共有し、「受け入れている」という実績を可視化することが効果的です。
A. 厚生労働省の2019年通知によれば、当直医の専門性・自院の設備状況・他医療機関での代替可能性を考慮した合理的な線引きは可能とされています。あらかじめ受入基準を明文化し、対外的に説明可能な合理性を持たせることが重要です。
ドクターズプライムワークでは、全国100超の病院で救急応需率改善を支援してきました。代表的な事例は以下の通りです。
北里大学メディカルセンター:救急応需率50%未満 → 大幅改善、年間救急車受入数 約3,000台 → 約4,800台
谷津保健病院:輪番日の応需率60%台 → 90%以上、病床稼働率約9割を維持
友愛記念病院:救急受入が年間400台増、常勤医の当直回数が月3回から1回へ減少
山元記念病院:医師少数区域において病床稼働率90%超を維持
各事例の詳細は、導入事例ページをご覧ください。
執筆・編集・監修
執筆・編集:ドクターズプライムワーク編集部
「救急車のたらい回しをゼロにする」をビジョンに、100病院を超える支援実績を持つ救急改善プラットフォーム「ドクターズプライムワーク」を運営しています。現状を可視化する「データ分析」と、病院が主体となって医師を確保できる「採用プラットフォーム」を一体で提供し、「自分らしく選べる医療をすべての人に」届けるための基盤を構築しています。 当編集部では、医療機関の変革に伴走する中で得られた現場特有の課題や解決のヒントを整理し、病院運営の質を高める有益な情報を発信しています。
監修:田 真茂(株式会社ドクターズプライム 代表取締役・医師)
聖路加国際病院救命救急センターで当直帯責任者を務めた後、2017年に株式会社ドクターズプライムを創業。詳細プロフィールは、会社紹介ページの監修・運営者情報をご覧ください。
参考情報:厚生労働省、消防庁、中医協、四病協資料、自社実績データ



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