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救急補正係数を上げるには?DPC収益を最大化する5つの実践ステップ

救急補正係数を上げるには?DPC収益を最大化する5つの実践ステップ

更新日:

2026/6/3

救急補正係数を上げるには?DPC収益を最大化する5つの実践ステップ|メソッド

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「救急補正係数の数値を、自院でどう上げればよいのか」——2024年度診療報酬改定で独立した評価項目となった救急補正係数について、こうした具体的な改善方法を模索されている病院経営者・事務長は多いのではないでしょうか。

救急補正係数は、救急車の受入件数そのものを評価する係数ではありません。救急医療入院症例への入院初期(2日間)の医療資源投入量が評価対象です。そのため、「ただ救急車を受ける」だけでは係数は伸びず、院内の体制設計・レセプト精度・救急医の確保という3つの論点が組み合わさって初めて改善が進みます。

本記事では、厚労省の制度設計を踏まえたうえで、実際に救急応需率と入院率を大幅に改善した現場事例をもとに、救急補正係数を上げるための5つの実践ステップを整理します。

本記事のポイント(30秒でわかる救急補正係数の上げ方)

論点

結論

評価される対象

救急車受入数ではなく「救急医療入院(300番台)症例への初期2日間の医療資源投入量」

改善の起点

応需率の改善で、まず係数の母数となる救急医療入院症例数を増やすこと

レセプト精度

救急医療管理加算1・2の算定漏れと、出来高換算点数のレセプト記載不足を是正

医師体制

「断らない救急」を実現できる医師の確保が、応需率改善の根本条件

時間軸

今年度の取り組みは約1年半後の係数に反映される中期施策

救急補正係数の評価構造をおさらい

改善策を検討する前に、何が評価対象になっているかを整理します。

救急補正係数が独立した背景や、DPC医療機関別係数全体の中での位置づけ、計算式の詳細を知りたい方は、関連記事「救急補正係数とは?計算方法・上げ方・経営インパクトを厚労省資料から解説」もあわせてご覧ください。

救急補正係数は、DPC対象病院における救急医療入院患者(様式1で300番台に区分される患者)について、入院後2日間の出来高換算点数とDPC設定点数の差額の総和を、症例数で割って1症例あたりに換算し、全DPC対象病院との相対評価で算出されます(厚生労働省「令和6年度医療機関別係数の説明(DPC/PDPSの見直し)」中医協総会 総-7-4、2024年4月10日)。

ここから逆算すると、係数を上げるためのレバーは次の3つに整理できます。

救急補正係数を決める3つのレバー

レバー

内容

直接の改善策

① 症例数(分子)

救急医療入院として算定される症例の絶対数

応需率の改善・受入体制強化

② 症例の質(単価)

重症度の高い症例比率(救急医療管理加算1の比率等)

トリアージ精度・受入基準の設計

③ 資源投入量の実績計上

入院初期の検査・処置が出来高換算点数に正確に反映されているか

レセプト精度管理・コーディング改善

多くの病院で見落とされがちなのが②と③です。救急車の受入件数を増やす取り組みは進めていても、それが救急医療入院に結びつかず、レセプト上も実態より低く評価されている——こうした構造的な取りこぼしが、係数の伸び悩みとして表れます。

ステップ1|応需率を改善し、救急医療入院の症例数を増やす

救急補正係数の母数となるのは、救急医療入院(300番台)として算定される症例数です。応需率が低ければ、そもそも分子が増えません。

応需率低下の要因は、医学的な判断だけでなく、組織的・構造的な要因が複雑に絡み合っています。ある救急専門医のセミナーでは、応需をためらわせる要因として次の5つが挙げられていました。

応需をためらわせる5要因

  1. 専門外:自科で対応できないという判断

  2. 救急外来の混雑・キャパシティ超過:これ以上受けられないという状況

  3. 病床なし:入院が必要と分かっていても病床が空いていない

  4. 医学的・社会的に複雑な背景を持つ患者:受けた後の長期化を懸念

  5. 院内からの圧力(内部撃ち):「なんでこんな患者を受けたのか」という雰囲気

特に5つ目は、経営層の方針明示で解消できる論点です。「救急を受ける」という方針を明確に打ち出せば、現場は自信を持って受けられるようになるのではないでしょうか。

実際、関東の2次救急病院(262床)では、輪番日の救急応需率が60%台から90%超に改善しました。同院は外部の救急専門医を活用した体制強化と、「ベッドが8割充足したら近隣・かかりつけ患者に限定」という受入上限ルールの設計を組み合わせました。その結果、病床稼働率は約9割で安定し、救急医療入院症例の母数が大幅に拡大しています。

ステップ2|救急医療管理加算の算定漏れを徹底的に防ぐ

救急補正係数の評価対象となる「救急医療入院(300番台)」は、救命救急入院料や救急医療管理加算の算定対象患者が中心です。ここで重要なのが、救急医療管理加算2は2分の1評価という点です。

救急医療管理加算1と2の評価の違い

加算区分

対象患者

救急補正係数での評価

救急医療管理加算1

より明確な重症救急患者

満額評価

救急医療管理加算2

加算1に準ずる状態の患者

1/2評価

つまり、同じ救急医療入院でも、加算1で算定できる症例の比率が高い病院ほど、救急補正係数の評価が高くなる構造です。院内でのチェックポイントは次の通りです。

  • 算定比率の確認:受け入れた救急症例のうち、救急医療入院(300番台)として算定している比率はどれくらいか

  • 加算1・2の内訳:救急医療管理加算1と2の算定比率、および加算1の判定根拠の記録が適切か

  • 算定根拠の記録:搬送時のバイタル・検査所見・主訴の記録が、加算算定の根拠として十分か

  • 医事課との連携:救急部門・医事課・レセプト業務の担当者間で情報連携が取れているか

レセプト業務の専任担当者と救急部門・医事課の連携が取れていない病院では、実態は加算1相当なのに加算2で算定している、あるいは加算算定自体を失念しているケースが珍しくありません。

ステップ3|入院後2日目までの医療資源投入量を正確にレセプトへ反映する

救急補正係数の計算式は、「入院後2日間の出来高換算点数 − DPC設定点数」の差額です。この差額を大きくできるのは、実際に投入した医療資源を漏れなくレセプトに記載できている病院です。

レセプト精度のチェックポイント

  • 画像検査の計上:搬送当日・翌日の画像検査(CT・MRI等)、血液検査、処置が全てコーディングされているか

  • 救急処置の算定:救急外来で実施した処置(気管挿管・中心静脈確保・輸血等)の算定漏れがないか

  • 高額薬剤の記載:高額薬剤・造影剤の使用が正確に記載されているか

  • サマリーとの整合:退院時のサマリーと会計処理の整合性が取れているか

入院初期の医療資源投入が多いのは、救急医療入院の本質的な特徴です。だからこそ、実態に沿った正確なレセプト記載が、係数評価の前提になります。コーディング専門職の配置や、DPCコーディング監査の定期実施が有効です。

ステップ4|救急を「断らない医師」の確保と、受入ルールの設計

応需率改善・症例数増加の根本条件は、救急を主体的に受けられる医師の確保です。特に夜間・休日の当直医が「迷ったら断る」というマインドセットでは、応需率は構造的に上がりません。

北陸地方の民間病院(200床前後・2次救急)では、外部の救急専門医を活用した体制強化により、救急車受入数が昨対比36.7%増、救急搬送からの入院率が45%→57%(+12ポイント)に改善し、上半期だけで昨対比約1億円の増収を達成しました。同院の副理事長は次のように語ります。

「救急車受け入れを病床稼働率に結びつけなければ、経営改善にはつながらない」

救急を受けられる医師を安定的に確保できると、次のような連鎖が生まれます。

「断らない医師」確保が生む改善連鎖

  1. 応需率の改善(60%台 → 90%超)

  2. 救急医療入院の症例数増加

  3. 救急医療管理加算の算定機会増加

  4. 救急補正係数の評価向上

  5. 病床稼働率の上昇・DPC収益の最大化

医師の確保と並行して、受入ルールの設計も欠かせません。「この症状・年齢・バイタルなら受ける」という院内の判断基準を文書化することで、当直医個人の経験値やリスク感覚のばらつきによる応需率の上下を抑えられます。

ステップ5|データで経営判断する──救急KPIの可視化

救急補正係数の改善は、短期で劇的に数字が変わる領域ではありません。前々年10月〜前年9月の診療実績が、翌年6月の係数に反映されるため、約1年半のタイムラグがあります。だからこそ、日々のKPIを可視化し、施策の効果を継続的に追う必要があります。

救急体制改善のために追うべきKPI

KPI

目標の方向性

救急補正係数への影響経路

救急応需率

上昇

症例数の母数拡大

救急車受入から入院への転換率

上昇

救急医療入院症例の増加

救急医療管理加算1の算定比率

上昇

評価の単価向上

入院後2日間の出来高換算点数

実態を正確に反映

差額の総和拡大

病床稼働率

85〜90%で安定

救急受入の継続的な担保

平均在院日数

適正範囲で管理

DPC効率性係数との両立

ある経営者はセミナーでこう語っていました。

「国が求めていることをやれば、国は評価してくれる。患者さんが求めていることをしっかりとやる。それが結果として国の政策誘導に乗ることになり、経営改善につながる」

救急補正係数は、まさに「救急患者を受ける病院が損をしない」という政策誘導を可視化した指標です。KPIを可視化しながら施策の効果を検証し、改善を継続することが、中期的な係数向上の唯一の道ではないでしょうか。

自院の改善余地を確認する──経営者向けチェックリスト

救急補正係数の改善余地を検証するために、以下の観点で自院のデータを確認してみてはいかがでしょうか。

確認項目

改善余地のシグナル

救急応需率(輪番日/平時)

70%未満なら大きな改善余地

救急車受入から入院への転換率

30%未満なら症例選別・院内連携に課題

救急医療管理加算1の算定比率

算定比率が低ければコーディング改善の余地

入院後2日間の医療資源投入のレセプト反映率

実態との乖離があれば医事課との連携強化

夜間・休日の当直医の救急対応スタンス

「断る」が基本なら医師確保戦略の見直しが必要

これらのシグナルに複数該当する場合、救急補正係数は構造的に低く抑えられている可能性があります。改善の糸口は、たいてい「応需率」「コーディング精度」「医師体制」のどこかにあります。

まとめ──救急補正係数の改善は、救急体制の総合力を測る鏡

救急補正係数を上げるために必要なことは、次の3点に集約できます。

  • 係数は結果にすぎず、本質は救急体制の総合力です。応需率・症例の質・レセプト精度・医師確保の4つが組み合わさって初めて改善します

  • 救急を受けられる医師の確保が最大のボトルネックです。どれだけ院内体制を整えても、夜間当直の現場で「断る」判断が続けば、係数は伸びません

  • 改善効果は1年半後に表れる中期施策です。だからこそKPI可視化と継続的な施策運用が不可欠です

2026年度の次期改定でも、救急医療を起点とした政策誘導はさらに強化される方向です。救急補正係数の改善に本気で取り組む病院と、数字だけを見て打ち手を打てない病院との間で、中期的な経営格差が広がっていくのではないでしょうか。

自院の救急応需率・入院転換率・病床稼働率の実データをもとに、救急補正係数の改善余地と具体的な打ち手を検討したい経営者・事務長の方は、救急改善プラットフォーム「ドクターズプライムワーク」の活用を検討してみてはいかがでしょうか。「救急を断らない医師」の紹介と、救急データ分析による運用改善の両面から、救急体制の再設計を支援しています。本記事で触れた北陸地方の民間病院(応需率改善+年間1億円増収)や関東の中規模病院(応需率60%台→90%超)の事例も、同サービスの活用により実現しています。


引用元
・厚生労働省「令和6年度医療機関別係数の説明(DPC/PDPSの見直し)」(中医協総会 総-7-4、2024年4月10日)

執筆・編集・監修

執筆・編集:ドクターズプライムワーク編集部
「救急車のたらい回しをゼロにする」をビジョンに、100病院を超える支援実績を持つ救急改善プラットフォーム「ドクターズプライムワーク」を運営しています。現状を可視化する「データ分析」と、病院が主体となって医師を確保できる「採用プラットフォーム」を一体で提供し、「自分らしく選べる医療をすべての人に」届けるための基盤を構築しています。 当編集部では、医療機関の変革に伴走する中で得られた現場特有の課題や解決のヒントを整理し、病院運営の質を高める有益な情報を発信しています。

監修:田 真茂(株式会社ドクターズプライム 代表取締役・医師)
聖路加国際病院救命救急センターで当直帯責任者を務めた後、2017年に株式会社ドクターズプライムを創業。詳細プロフィールは、会社紹介ページの監修・運営者情報をご覧ください。

参考情報:厚生労働省、消防庁、中医協、四病協資料、自社実績データ 

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