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看護必要度の経過措置は9月30日まで──10月からの新基準を「救急患者応需係数」で越える実務

看護必要度の経過措置は9月30日まで──10月からの新基準を「救急患者応需係数」で越える実務

更新日:

2026/8/10

看護必要度の経過措置は9月30日まで──10月からの新基準を「救急患者応需係数」で越える実務|メソッド

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2026年10月1日から、急性期病院の収益を支える「重症度、医療・看護必要度」の新基準が本格適用されます。令和8年9月30日で切れる経過措置のあと、急性期一般入院料1では基準値が20%から27%へと引き上げられ、対応が間に合わなければ病棟のランクダウン、すなわち大幅な減収に直結します。本記事は、厚生労働省の令和8年度改定資料をもとに、残された約2か月で経営層に何ができるかを、新設された「救急患者応需係数」という切り口から整理します。

※本記事は、厚生労働省「令和8年度診療報酬改定 3.急性期・高度急性期入院医療」および「同 16.経過措置」を参照し、累計200以上の病院の救急改善を支援してきたドクターズプライムワークの知見をもとに編集部で再構成したものです(情報基準日:2026年7月)。点数・要件の詳細は必ず厚生労働省の告示・通知の原典をご確認ください。

この記事でわかること

  • 9月30日に切れる「看護必要度」の経過措置とは何か、10月1日から何が変わるのか

  • 新設された「救急患者応需係数」の計算式と、なぜ救急受け入れが看護必要度対策になるのか

  • 残り約2か月で該当患者割合のハードルをどこまで下げられるのか、現場事例からの試算

  • 9月30日までに経営層が打つべき手と、自院で確認すべきチェックリスト

30秒でわかる要点

  • 「重症度、医療・看護必要度」の新基準値には経過措置があり、令和8年9月30日までに適用が猶予されている

  • 10月1日以降、急性期一般入院料1の基準は必要度Ⅱで20%→27%(基準①)・27%→34%(基準②)へ引き上げられる

  • 新たに導入された「救急患者応需係数」を加えた「割合指数」で判定するため、救急搬送を多く受ける病院ほど有利になる

  • 応需係数は「1病床あたり年間救急搬送受入件数×0.005」(上限1割)で、入院に至らなかった受け入れも件数に算入される

  • 院内の努力だけで新基準クリアが危うい場合、救急受け入れ実績を直接積み増す打ち手が、今から取れる最も即効性のある選択肢となります

9月30日に何が終わるのか──看護必要度の経過措置

令和8年9月30日は、「重症度、医療・看護必要度」の新しい施設基準に設けられた経過措置の期限です。厚生労働省の経過措置資料では、令和8年3月31日時点で急性期一般入院料1〜5等の届出を行っている病棟について、旧基準を満たしていれば新基準を「満たしているものとみなす」とされ、その期限が令和8年9月30日までと明記されています。

つまり10月1日からは、改定後の新基準そのものを実力で満たすことが必須となります。急性期一般入院料は、病棟の重症患者割合(該当患者割合)が基準を割り込むと下位区分への移行、すなわち入院基本料の引き下げに直結する仕組みです。急性期一般入院料1を守れるかどうかは、多くの急性期病院にとって収益の柱を維持できるかという経営問題そのものと言えます。

改定後の割合指数の基準値(必要度Ⅱベース)は、急性期一般入院料1が基準①20%→27%・基準②27%→34%、入院料2が21%→27%、入院料3が18%→23%、入院料4が15%→19%、入院料5が11%→14%と、いずれも大きく引き上げられます。必要度Ⅰを用いる場合は、Ⅱより1ポイント高い基準が設定されます(例:入院料1のⅠは基準①28%・基準②35%)。この引き上げ幅を、10月からの実測値で越えられるかが問われています。

なぜ救急受け入れが「看護必要度対策」になるのか

10月からの新基準を越える鍵は、新設された「救急患者応需係数」にあります。今回の改定では、従来の「該当患者割合」に救急患者応需係数を加えた「割合指数(基準患者割合に係る指数)」で施設基準を判定する仕組みが導入されました。

厚生労働省の資料によれば、救急患者応需係数は「1病床あたりの救急搬送受入件数/年 × 0.005」で算出され、上限は1割(10%)と規定されています。特筆すべきは、救急搬送受入件数が「入院しなかった場合を含む病院の受入件数全体」を指す点です。軽症で帰宅となったケースも、件数としてカウントされます。なお割合指数を計算する病棟が複数ある場合は、各病棟へ入院した救急搬送患者の比率で受入件数を按分してから病床数で除して算出します。

具体的に見てみましょう。例えば100床の病院が年間1,000件の救急搬送を受け入れている場合、「10件/床/年」となり、これに0.005を乗じた5%が割合指数に上乗せされます。この5%は決して小さくありません。急性期一般入院料1の基準①が27%であれば、応需係数5%を確保している病院は、実測の該当患者割合が22%あれば基準を満たせる計算になります。

言い換えれば、救急車を多く受け入れる病院ほど、10月からの厳しい新基準を越えやすくなるという設計です。看護必要度の該当患者割合そのものを短期間で引き上げるのは容易ではありませんが、救急搬送の受入件数であれば、体制次第で数か月単位でも積み増せる余地があります。ここに、9月30日を前にした現実的な打ち手が存在します。

残り約2か月でスコアはどこまで動くか

「今から救急を増やして間に合うのか」という問いに対しては、短期間で応需率と受入件数を大きく改善した現場の事例が参考になります。いずれも、院内の頑張りだけでなく「仕組み」と「外部人材」を組み合わせて数字を動かした点が共通しています。

ある首都圏の2次救急病院(262床・輪番病院)では、常勤医の高齢化で当直負担が増し、輪番日の応需率が60%台で停滞していました。そこで輪番日の当直に救急対応に強い外部医師を配置し、「ベッドが8割充足したら受け入れを近隣・かかりつけに限定する」という受入上限ルールを同時に設計したところ、応需率は90%以上に安定し、病床稼働率も約9割で推移するようになりました。同院の院長は「救急車が7〜8台並ぶ状況でも1人でスムーズに対応してもらえる」「救急隊も『あの病院は断らない』という認識に変わり、幅広く要請が来るようになった」と語っています。

ある200床規模の2次救急病院では、外部の救急専門医活用を軸に受け入れ体制を強化した結果、救急応需数が昨対比で約37%増、年間1,000台を突破し、救急搬送からの入院率が45%から57%へと改善しました。元厚労官僚の経歴を持つ同院の経営幹部は「来年度の予算編成の大きな目標を1,500台に設定している。近い病院はこの数字を職員に刷り込んでいかないと今後は厳しくなる」と、受入件数を組織のKPIに据える重要性を指摘しています。

ある関東圏の大学病院系2次救急(300床超)でも、外部医師による夜間体制の安定化・診療マニュアル整備・患者振り分けルールの標準化を同時並行で進め、年間救急受入台数を3,000台弱から約4,800台(約1.6倍)へと増やしました。「個人の頑張りから組織の仕組みへ」という転換が、応需率50%未満から約70%への改善を支えています。

これらに共通するのは、受入件数の増加が、応需係数の上昇を通じて割合指数を直接押し上げるという構造です。9月30日までのわずかな期間でも、断りが集中する当直枠にピンポイントで手を打てば、10月からの判定に反映される受入実績を積み増すことは十分に可能と考えられます。

9月30日までに経営層が打つべき手

残された時間で成果を出すには、闇雲に「受けろ」と号令をかけるのではなく、断りが起きている場所を特定し、そこに集中的に手を打つ発想が有効です。経営層・人事責任者が今から着手できる論点を、次の3点に整理します。

  1. 断りが多発するシフトの可視化と即時置き換え:まず、自院の救急搬送実績(特に夜間・週末の受入件数とお断り件数)を正確に把握します。院内体制が手薄でどうしても断りがちな当直枠を特定し、そこに救急対応に強い医師をピンポイントで配置すれば、対象シフトの応需率を短期間で改善できます。

  2. 軽症を含む全件受け入れ体制の担保:救急患者応需係数の算定には「入院に至らなかった受け入れ」も含まれます。軽症例だからと断らず、まず受けて評価する体制を整えることが、そのまま件数の底上げになります。受入上限ルールをあわせて設計し、病棟・救急外来の過重負担を防ぐことも欠かせません。

  3. 常勤医を疲弊させない体制設計:医師の働き方改革で時間外労働の上限規制が厳格化するなか、常勤医の当直だけで件数を積み増すのは現実的ではありません。当直・シフト体制の再設計や、救急に強い外部医師の確保によって、労働環境を守りながら応需率を高める設計が求められます。

自院の現在値を確認するチェックリストとして、次の問いが出発点になります。夜間・休日の応需率(お断り件数)を数値で把握できているか。1病床あたりの年間救急搬送受入件数はいくつで、応需係数は何%になるか。10月からの該当患者割合の見込みと応需係数を足した割合指数は、新基準値を越えられるか。越えられない場合、あと何台の受け入れ増が必要か──ここまで具体化できれば、打つべき手の規模が見えてきます。応需率と収益の関係の詳細は「救急応需率を改善する3つの手段」、受入件数の増加が収益に与えるインパクトは「救急受入を年1,500台に増やすと収益はいくら増える?」もあわせてご参照ください。

まとめ:9月30日を「基準割れ回避」の起点に

要点は3つです。第一に、看護必要度の経過措置は令和8年9月30日で切れ、10月1日からは引き上げられた新基準を実力で満たす必要があります。第二に、新設の「救急患者応需係数」により、救急搬送を多く受ける病院ほど割合指数の面で有利になり、受入件数は短期間でも積み増せる余地があります。第三に、院内の努力だけで新基準クリアが危ういなら、断りが集中する当直枠に即戦力を投入し、必要な受入実績を直接つくりに行くことが、今から取れる最も現実的な打ち手です。

ドクターズプライムワークは、「救急車を断らない」ことを前提に、受け入れ実績に応じたインセンティブ制度で動く医師を病院にマッチングする救急改善プラットフォームです。9月30日を待たずに手薄な当直枠へ即戦力を配置することで、応需率と受入件数を底上げし、10月からの基準割れによる病棟ランクダウンという最悪の事態を回避する確度を高められます。自院の応需率や救急体制の現状に合わせた改善プランにご関心のある経営層の方は、ぜひ一度、資料請求や無料相談をご利用ください。急性期病院一般入院基本料そのものの要件は「急性期病院一般入院基本料とは?」でも詳しく解説しています。

よくある質問

Q. 看護必要度の経過措置はいつまでですか? A. 「重症度、医療・看護必要度」の新基準に係る経過措置は、令和8年9月30日までです。令和8年3月31日時点で急性期一般入院料1〜5等を届け出ている病棟は、旧基準を満たしていれば期限まで新基準を満たすものとみなされますが、10月1日からは新基準への対応が必須となります。

Q. 救急患者応需係数とは何ですか? A. 一般病棟用の「重症度、医療・看護必要度」の該当患者割合に加味する係数で、「1病床あたりの年間救急搬送受入件数×0.005」(上限1割)で算出します。該当患者割合に応需係数を足した「割合指数」で施設基準を判定します。入院に至らなかった救急受け入れも件数に含まれます。

Q. 救急を多く受けると、なぜ看護必要度の基準クリアに有利になるのですか? A. 割合指数=該当患者割合+救急患者応需係数で判定されるため、応需係数が高いほど、実測の該当患者割合が同じでも基準を越えやすくなります。例えば100床で年間1,000台を受け入れると応需係数は5%となり、基準①27%に対して実測22%でクリアできる計算になります。

Q. 9月30日まで残りわずかですが、今から間に合いますか? A. 該当患者割合そのものを短期間で引き上げるのは容易ではありませんが、救急搬送の受入件数は体制次第で数か月単位でも積み増せます。断りが集中する夜間・週末の当直枠に即戦力を配置すれば、10月からの判定に反映される受入実績を高められます。

Q. 常勤医を疲弊させずに受入件数を増やす方法はありますか? A. 当直・シフト体制の再設計に加え、救急対応に強い外部医師を手薄な枠に配置する方法があります。受入上限ルールをあわせて設計することで、病棟・救急外来の過重負担を防ぎながら応需率を高める運用が可能です。

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参考情報・出典

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執筆・編集・監修

執筆・編集:ドクターズプライムワーク編集部
「救急車のたらい回しをゼロにする」をビジョンに、100病院を超える支援実績を持つ救急改善プラットフォーム「ドクターズプライムワーク」を運営しています。現状を可視化する「データ分析」と、病院が主体となって医師を確保できる「採用プラットフォーム」を一体で提供し、「自分らしく選べる医療をすべての人に」届けるための基盤を構築しています。 当編集部では、医療機関の変革に伴走する中で得られた現場特有の課題や解決のヒントを整理し、病院運営の質を高める有益な情報を発信しています。

監修:田 真茂(株式会社ドクターズプライム 代表取締役・医師)
聖路加国際病院救命救急センターで当直帯責任者を務めた後、2017年に株式会社ドクターズプライムを創業。詳細プロフィールは、会社紹介ページの監修・運営者情報をご覧ください。

参考情報:厚生労働省、消防庁、中医協、四病協資料、自社実績データ 

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