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救急車の受け入れ件数は、病院経営にいくら効くのか──年間件数と収益の関係を数字で分解する

    救急車の受け入れ件数は、病院経営にいくら効くのか──年間件数と収益の関係を数字で分解する

    更新日:

    2026/5/15

    救急車の受け入れ件数は、病院経営にいくら効くのか──年間件数と収益の関係を数字で分解する|メソッド

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    「救急車の受け入れ件数を増やせば、経営にどれだけ効くのか」──理事会や経営会議を前にこの問いを抱える経営層・経営企画担当者の皆様は少なくないのではないでしょうか。2025年11月に公表された厚生労働省の医療経済実態調査では、全国の一般病院の7割が2024年度に赤字に陥っています。物価高と人件費高騰の中で、収益改善の起点をどこに置くかは、病院経営にとって最大の論点です。

    その起点の一つが救急車の受け入れ件数であることは、複数の病院事例で実証されています。しかし「受ければ儲かる」という単純な話ではありません。件数が収益に転換される経路は、入院率・病床稼働率・DPC単価・算定漏れの有無という複数の変数を通って初めて成立します。本稿では厚生労働省の制度枠組みと複数病院の実績データから、救急車1台が病院経営にもたらす経済価値を定量的に分解し、件数目標の設計と投資対効果の判断フレームを示します。

    本記事のポイント(30秒でわかるサマリー)

    論点

    結論

    救急受入件数が経営に効く3つの経路

    ①入院獲得による病床稼働率向上、②救急医療管理加算・救急補正係数による単価向上、③急性期病棟としての機能要件維持

    救急車1台の経済価値(概算)

    入院率60%×平均在院日数10日×DPC日当点数換算で、1台あたり約30〜50万円の収益貢献。年間1,000台規模なら3〜5億円のインパクト

    2026年改定の経営KPI

    急性期病院Aは救急2,000台・全身麻酔1,200件、急性期病院Bは救急1,500台・全身麻酔500件。中小病院のリアルな生存ラインは1,500台

    件数の壁を越える3要素

    ①受入ルール設計、②救急応需力を持つ医師、③応需率・入院率のデータ可視化

    投資対効果の目安

    外部医師・体制整備への投資が年間数千万円規模でも、応需率が40〜50ポイント改善すれば、年間数億円の収益改善として投資回収されている複数の実例あり

    救急車の受入件数が経営を動かす3つの経路

    「救急車を受ければ儲かる」は直感的には正しいが、そのメカニズムを構造的に理解しないと経営判断には使えません。救急受入件数が収益に結びつく経路は、以下の3つに整理できます。

    経路1|入院獲得による病床稼働率の向上

    救急車で搬送された患者の一定割合は入院に至ります。救急を起点とした入院は、待機的な予定入院とは異なり、緊急性・重症度が高いため在院日数が確保され、DPC単価も高くなりやすい。病床稼働率の向上は、直接的に入院収益の増加につながります。

    病床稼働率を高める経路は複数あるが、その中でも救急経由は特に収益インパクトが大きい。新規入院患者のうち、地域医療支援病院における紹介患者・自院外来からの入院・救急搬送の3種類を比較すると、救急搬送経由の入院は緊急性・重症度の高さから、急性期加算や救急医療管理加算の算定対象となる症例が多い。

    経路2|救急医療管理加算・救急補正係数による単価向上

    救急車受入件数は、診療報酬制度上も直接評価の対象となっています。代表的な算定項目は以下です。

    • 救急医療管理加算(A205):重篤な患者を救急搬送で受け入れた場合の加算。1日につき一定点数を算定できます

    • 救急補正係数(2024年度改定で独立した医療機関別係数の項目に):DPC病院において、救急医療入院における入院初期の医療資源投入量を反映した係数

    • 救急患者連携搬送料(2024年度改定で新設):3次救急から2次救急への転院搬送を評価

    中でも救急補正係数は、DPC/PDPS制度下で「救急医療入院」(入院の区分が300番台)の症例数と、入院後2日間までの包括範囲出来高点数と診断群分類点数との差額をもとに算出されます。救急搬送からの入院を増やすことは、DPC包括点数の係数そのものを押し上げる効果を持ちます。

    経路3|急性期病棟としての機能要件維持

    2024年度改定で急性期一般1の要件は、平均在院日数16日以内・看護必要度A3・C1該当患者割合20%以上(またはA2・C1:27%以上)と厳格化されました。さらに2026年度改定で新設される急性期病院A・Bは、救急車受入件数と全身麻酔件数を直接の要件として組み込みます。

    区分

    救急車受入件数

    全身麻酔件数

    急性期病院A

    年2,000台以上

    年1,200件以上

    急性期病院B

    年1,500台以上

    年500件以上

    中小病院が急性期病棟としての地位を維持するためには、「救急車受入件数」は収益向上の手段であると同時に、生存ラインの必須要件でもあります。急性期機能の前提となる宿日直許可の取得設計と、許可が取れない場合の経営リスクについては、宿日直許可が取れない病院で打てる選択肢で詳述しています。

    この3経路を合わせて考えると、救急車受入件数は「短期の収益」「診療報酬上の単価」「長期の施設基準」という3つの時間軸で経営に効いていることがわかります。以下、それぞれの経済価値を具体的な数字で分解します。


    救急車1台あたりの経済価値を分解する──入院率・在院日数・DPC単価

    「救急車1台あたりいくらの収益につながるのか」を概算するには、以下の計算式で分解できます。あくまで概算モデルだが、経営会議の議論の土台として機能します。

    救急車1台の期待収益 = 入院率 × 平均在院日数 × 1日あたりDPC単価 + 出来高部分

    各変数の目安値を複数の病院事例から整理します。

    ①入院率

    救急車搬送からの入院率は、病院の規模・機能により大きく異なります。複数の2次救急病院のインタビュー実績から整理すると、以下のレンジに収まることが多い。

    • 一般的な2次救急病院:30〜50%

    • 応需体制が整った2次救急病院:50〜60%

    • 救急応需率が90%超に達した2次救急病院:60〜75%

    入院率の差が最も大きい変数であり、ここが10ポイント動くだけで経営インパクトは劇的に変わります。実際の病院事例では、副理事長主導の救急体制強化により入院率が45%から57%へと12ポイント向上し、上半期だけで約1億円の増収を達成したケースがあります。

    ②平均在院日数

    急性期一般入院料を算定する病院では、平均在院日数は概ね以下のレンジです。

    • 急性期一般1:16日以内が要件

    • 急性期一般(一般病床全体):15〜20日

    • 救急入院が中心の病院:10〜14日

    平均在院日数は短いほど回転率が上がるが、1入院あたりの収益は減ります。そこで重要なのは「適正な在院日数で退院させる」ことと「次の入院患者を確実に入れる」ことの両立です。

    ③1日あたりDPC単価

    DPC/PDPS制度下での1日あたりの収益は、診断群分類ごとの1日当たり点数×医療機関別係数×10円で算定されます。救急入院の症例では以下の追加要素が加わります。

    • 救急医療管理加算(1日につき加算)

    • 入院基本料加算(急性期一般1・総合入院体制加算など)

    • 出来高部分(手術・処置・検査の一部)

    中小規模の急性期病院での1日あたり総収益(包括+出来高)は、症例にもよるが概ね4万〜7万円の範囲に収まります。

    ④概算モデル

    これらを組み合わせて、2次救急病院の「救急車1台の期待収益」を試算すると以下のようになります。

    シナリオ

    入院率

    平均在院日数

    1日単価

    1台の期待収益

    応需低迷シナリオ

    30%

    10日

    5万円

    約15万円/台

    標準シナリオ

    50%

    12日

    5万円

    約30万円/台

    応需改善シナリオ

    65%

    12日

    6万円

    約47万円/台

    同じ1台の救急車でも、応需体制が低迷している病院と改善された病院では、1台あたりの経済価値が3倍以上変わる。救急車を受け入れるだけではなく、「受け入れた後の入院率と単価を最適化する体制」が経営にとっての本丸です。

    ⑤年間件数での経営インパクト

    標準シナリオ(1台あたり30万円)で年間件数別に試算すると、以下のようになります。

    年間救急車受入件数

    年間期待収益(標準シナリオ)

    500台

    約1.5億円

    1,000台

    約3億円

    1,500台

    約4.5億円

    2,000台

    約6億円

    3,000台

    約9億円

    これは包括範囲の収益のみの概算で、急性期充実体制加算・地域医療体制確保加算・救急補正係数の押し上げ効果は含まれていません。これらを含めると、応需体制が整った病院の年間救急受入件数のインパクトは、年間収益の20〜30%を占める水準に到達します。


    事例で見る「件数の壁」を越えた病院の経営インパクト

    概算モデルの妥当性は、実在する病院のデータで確認できます。ここでは規模・背景の異なる3つの事例を示します。すべて匿名化していますが、具体的な数値は実在の病院データに基づいています。

    これらの事例に共通するのは、医師の確保だけで件数が伸びたのではなく、受入ルール設計・応需データの可視化・組織の意識改革が組み合わされている点です。救急改善の体制再設計を検討する場合、ドクターズプライムワークが複数病院で実装してきた「医師×ルール×データ」のフレームが参考になります。

    事例1|地方・約180床の2次救急病院

    常勤医の高齢化と属人的な救急体制に課題を抱えていた同院は、「その日に出勤している医師次第」という応需の不確実性が経営の不安定要因になっていました。外部の救急専門医を活用したシステマティックな当直体制を導入した結果、以下の成果を得ています。

    • 日勤帯の救急応需率:ほぼ100%

    • 月平均入院患者数:12.8人(当初目標「月3人入院増」を大幅超過)

    • 平均入院率:75.8%

    • 売上増:年間3,600万円超(初年度で目標を達成)

    事務部長は導入効果をこう評しています。「当初は月に3人入院が増えれば御の字と考えていた。しかし蓋を開けてみれば、月平均12.8人もの入院患者を受け入れることができている」。救急経由の入院1件の経済価値が高いことを、実績データが示しています。

    事例2|約330床規模の大学関連病院

    同院は2023年時点で救急応需率50%未満という深刻な状況にありました。担当医のスキル不足、医師の働き方改革による人員制約、高齢者救急の複雑化による診療科間の押し付け合い──三重構造の課題に対して、外部医師による夜間体制の安定化、診療マニュアルの整備、タスクシフト、内科部長陣による患者振り分けルール化を同時並行で推進した結果、以下の変化が起きました。

    • 年間救急受入台数:約3,000台弱 → 約4,800台(約1.6倍

    • 救急応需率:50%未満 → 約70%

    • 組織文化:「断ることが当たり前」から「受け入れよう」へ

    年間1,800台の受入増を概算モデルに当てはめると、年間5億円規模の収益改善インパクトに相当します。

    事例3|約180床・2次救急病院(経営危機からのV字回復)

    2024年時点で急性期入院料の区分転落、看護師不足による病床削減、物価高騰の三重苦により、経常収支2%超の赤字が見込まれていた同院は、元厚労官僚の副理事長主導で「国の政策誘導に徹底して乗る」戦略を打ち出した。高齢者救急の応需率向上、訪問診療の立ち上げ、診療報酬の届出・算定漏れ是正の3本柱を実行した結果は以下です。

    • 救急車受入件数:昨対比141件増(36.7%増)、年間1,000台を突破

    • 救急搬送からの入院率:45% → 57%(+12ポイント

    • 上半期増収効果:昨対比約1億円

    • 経常収支:2%赤字見込み → 2%黒字見込みへ

    副理事長はこう語っています。「単に病床を埋めるだけでは利益が出ない。収益性の高い救急からの入院獲得に戦略を集中した」「救急車受け入れを病床稼働率に結びつけなければ、経営改善には繋がらない」。救急受入「件数」と「入院率」の両方を同時に押し上げたことが、V字回復の核心でした。


    2026年改定が突きつける「件数の壁」──急性期病院BのKPI

    2026年度診療報酬改定で新設される急性期病院A・Bの要件は、単なる算定要件を超えて、中小病院の「生存ライン」として機能する。特に急性期病院Bの「救急車年1,500台以上」という数字は、多くの中規模2次救急病院にとってのリアルな経営目標になります。

    元厚労官僚で芳珠記念病院副理事長の一戸和成先生は、2026年改定の本質を「医療機関の選別を加速する改定」と指摘しています。一戸氏が経営現場で提示している論点を整理すると以下です。

    • 改定率プラス3.09%(30年ぶりの3%超)のうち、1.70%は賃上げで使途限定、真水は1.39%のみ

    • 一般病院全体の総損益率は▲3.9%(令和6年度・中医協医療経済実態調査)

    • 救急車1,500台・全身麻酔500件が中小病院のリアルなハードル

    • 1,500台未満の病院は、3次救急からの「下り搬送」を受ける役割への機能分化が求められます

    重要なのは、「受入件数を増やす」と「入院率を高める」を両輪で動かすことです。一戸氏はこう述べます。「救急車受け入れを病床稼働率に結びつけなければ、経営改善には繋がらない。賃上げ分(1.70%)は行って来いでトントンになるだけ。結局は病床稼働率を上げるためにどう工夫するかが腕の見せ所」。

    現在地から1,500台までのロードマップ

    年間受入件数が現時点で500〜1,000台の病院が、1,500台を目指すための段階設計を整理します。

    現在地

    次の目標

    主な打ち手

    500〜800台

    1,000台

    輪番日の応需率改善、夜間体制の外部医師補強、受入ルールの言語化

    1,000〜1,300台

    1,500台

    非輪番日の応需率改善、病棟の退院促進、下り搬送の受入

    1,300〜1,500台

    1,800〜2,000台

    組織文化の変革、タスクシフト、データドリブンな運用改善

    この段階設計を見ると、500〜800台から1,500台への到達は、1回の施策で達成する目標ではないことが分かります。2〜3年かけた段階的な体制強化が必要であり、今から動き出さなければ2026〜2028年の急性期病院B算定には間に合いません。


    件数の壁を越える3要素──医師・ルール・データ

    複数の病院事例を観察すると、件数の壁を越えた病院に共通する3要素が浮かび上がります。これは単発施策ではなく、三位一体で機能する体制要件です。

    要素1|救急応需力を持つ医師

    件数が伸びない病院の最大の制約は、「救急応需に対して主体的なマインドセットを持つ医師」の不足です。救急専門医の資格の有無より、「専門外でもまず受ける」という応需志向が決定的に重要になります。

    ある救急科責任者は、応需をためらわせる要因を5つに整理しています。

    • 専門外:自分では対応できないと判断して断る

    • 救急外来の混雑:これ以上患者が来ては困る状況

    • 病床なし:入院が必要でも病床が空いていない

    • 複雑な社会的背景:受けた後の長期化・転帰困難を見越して躊躇

    • 院内からの圧力:「なんでこんな患者受けたの」と言われるイメージで萎縮

    このうち経営層が方針を明示することで解消できるのは5つ目の「院内からの圧力」です。「受ける」という方針を明確に掲げれば、現場は自信を持って受けられます。なお、応需力のある医師確保を紹介会社依存から脱却して進める採用ポートフォリオ再設計については、医師紹介会社の手数料が下がらない構造と4象限の採用ポートフォリオ再設計で詳述しています。

    要素2|受入ルールの設計

    医師を投入するだけでは件数は伸びません。院内の受入ルールが整っていなければ、「受けるべき患者」と「受けるべきでない患者」の判断が現場で揺れます。関東地方の約260床の2次救急病院が応需率60%台から90%超に改善した際、併せて設計したルールは以下です。

    • ベッド上限設定:空き具合に応じた上限人数を事前に定義

    • 条件付き受入:病床充足8割以降は近隣・かかりつけ患者に限定

    • 院内共有:「救急を受ける日」として看護師含む全体で目標を共有

    • ファーストタッチ担当医:曜日ごとに1名がファーストタッチを担い院内たらい回しを解消

    この受入ルール設計は、病院単独で描くより、複数病院の成功パターンを知る外部の視点を入れたほうが再現性が高い。

    要素3|応需率・入院率のデータ可視化

    件数と収益の関係を経営会議で議論するには、データの継続的な可視化が不可欠です。見るべき指標は以下です。

    • 日別・時間帯別の応需率

    • 不応需の内訳(理由別:専門外/病床/キャパシティ/社会的要因)

    • 搬送後の入院率

    • 平均在院日数とDPC区分

    • 輪番日と非輪番日の応需率ギャップ

    これらのデータを月次で経営会議に提出できる仕組みがあれば、「来月は応需率を+5ポイント改善する」といった具体的な経営目標が立てられます。感覚ではなく数字で経営を動かす土台は、このデータ可視化から生まれます。応需率を経営KPIとして月次でモニタリングする具体的なダッシュボード設計については、応需率1ポイントの経営価値と経営ダッシュボード設計で詳述しています。


    実行チェックリスト──「件数を増やす」前に、自院を棚卸しします

    救急受入件数の経営インパクトを実際に取りに行くには、施策着手前に自院の現状を棚卸しする必要があります。経営会議・理事会で議論するためのチェックリストを示します。

    ステップ1|現状の定量把握

    • 年間救急車受入件数(過去3年間の推移)

    • 救急応需率(要請数に対する受入率)と不応需理由の内訳

    • 搬送後の入院率(診療科別・時間帯別)

    • 平均在院日数とDPC区分

    • 救急補正係数(DPC病院の場合)

    ステップ2|2026年改定KPIとのギャップ分析

    • 急性期病院B要件(救急1,500台・全身麻酔500件)との乖離

    • 急性期一般1の要件(平均在院日数16日以内・看護必要度)の達成状況

    • 現在の機能区分(急性期一般1〜6・地域包括医療病棟・地域包括ケア病棟)

    ステップ3|投資対効果のシミュレーション

    • 応需率を10ポイント上げた場合の年間増収(概算モデル)

    • 1,500台到達に必要な体制投資額(外部医師・設備・人員)

    • 投資回収期間(1年以内/2〜3年/5年以上)

    ステップ4|3要素のどこに投資するか決定

    • 医師の確保・スキル強化への投資配分

    • 受入ルール設計・院内体制整備への投資配分

    • データ可視化・運用改善への投資配分

    経営判断チェックリスト

    ステップ

    確認事項

    1. 現状把握

    過去3年の件数・応需率・入院率を指標化したか

    2. ギャップ分析

    2026年改定KPIとの乖離を定量化したか

    3. ROI試算

    応需率改善の増収効果と投資額を試算したか

    4. 投資配分

    医師・ルール・データの3要素に予算配分したか

    まとめ──救急車の受入件数は、経営の「結果」ではなく「設計変数」

    救急車の受入件数と経営の関係は、感覚的に語られることが多いが、本稿で示した通り入院率・在院日数・DPC単価・機能要件という複数の変数を通じて定量的に分解できる。本稿の主張を3点に要約します。

    1. 救急車1台の経済価値は、応需体制の成熟度で3倍以上変動する。標準シナリオで1台あたり約30万円、応需改善シナリオで約47万円。年間1,000台規模では、体制の違いが年間収益で1〜2億円の差を生みます。

    2. 2026年改定の急性期病院B要件(救急1,500台・全身麻酔500件)は、中小病院の生存ライン。この数字を見据えた中期計画を2〜3年前から着手する必要があります。

    3. 件数の壁を越えるのは、医師×ルール×データの三位一体。どれか1つでは足りず、どれか1つでも欠けると件数は頭打ちになります。

    救急車の受入件数は、単に「救急隊から要請された数」という外生変数ではありません。体制設計の質によって動かせる内生変数です。この視点に立つと、救急は「断らざるを得ない義務」から「経営を動かす戦略投資の対象」へと意味が変わります。

    ドクターズプライムワークは、「救急車のたらい回しを解決し、病院経営を黒字化する」ことを掲げる「断らない医師」と「データ分析」の救急改善プラットフォームです。本稿で論じた「医師×ルール×データ」の三位一体を、複数の2次救急病院と共に実装し、応需率60%台→90%超、年間数千万〜数億円規模の収益改善を再現してきました。2026年改定の急性期病院B要件を視野に、救急受入件数を経営の戦略変数として動かしたい経営層・経営企画担当者にとって、具体的な数字での実装伴走が検討候補となります。


    引用元

    • 厚生労働省「令和4年度 医療経済実態調査」(一般病院7割赤字/令和6年度総損益率▲3.9%)

    • 厚生労働省「令和6年度診療報酬改定の概要」(救急医療管理加算・救急患者連携搬送料・急性期一般1要件)

    • 厚生労働省「令和6年度医療機関別係数の見直し」(救急補正係数の独立)

    • 中央社会保険医療協議会総会資料(第647回、2026年度改定・急性期病院A/B要件)

    • 総務省消防庁『令和6年版 救急・救助の現況』(令和5年中:救急出動763.8万件・搬送人員664.1万人、いずれも昭和38年集計開始以降の過去最多/令和7年1月24日公表)

    • DPC/PDPS制度資料

    執筆・編集・監修

    執筆・編集:ドクターズプライムワーク編集部
    「救急車のたらい回しをゼロにする」をビジョンに、100病院を超える支援実績を持つ救急改善プラットフォーム「ドクターズプライムワーク」を運営しています。現状を可視化する「データ分析」と、病院が主体となって医師を確保できる「採用プラットフォーム」を一体で提供し、「自分らしく選べる医療をすべての人に」届けるための基盤を構築しています。 当編集部では、医療機関の変革に伴走する中で得られた現場特有の課題や解決のヒントを整理し、病院運営の質を高める有益な情報を発信しています。

    監修:田 真茂(株式会社ドクターズプライム 代表取締役・医師)
    聖路加国際病院救命救急センターで当直帯責任者を務めた後、2017年に株式会社ドクターズプライムを創業。詳細プロフィールは、会社紹介ページの監修・運営者情報をご覧ください。

    参考情報:厚生労働省、消防庁、中医協、四病協資料、自社実績データ 

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