更新日:
2026/7/10

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救急車の搬送件数が増加し、ER(救急救命室)が限界を迎える中、いかにして診療時間を生み出し、より多くの患者を受け入れるか。この課題に対し、藤田医科大学 岡崎医療センターでは「放射線部門の業務効率化」というアプローチで大きな成果を上げました。
同センターの助教である瀬川悠史先生に、ERと放射線部門の連携強化、そしてデータに基づくプロセス改善の軌跡について伺いました。
岡崎医療センターのERは、開院から数年で年間約8,000台の救急車を受け入れるようになり、2024年度には受け入れの限界に直面していました。業務効率化が急務となる中、注目されたのが放射線部門(CT・MRI検査)との連携です。
ERにおいて放射線検査は不可欠ですが、これまでは患者の検査室への移動や撮影中、医師や看護師の付き添いが必須となっていました。特に造影CTやMRIの検査中は、ERのスタッフが現場を離れざるを得ず、その間は新たな救急車の受け入れがストップしてしまうという大きなボトルネックが発生していたのです。
付き添いをなくし、放射線技師のみで撮影を行う体制へと移行するためには、技師側の「急変時に誰が責任を取るのか」「本当にすぐ駆けつけてくれるのか」といった漠然とした不安を解消する必要がありました。
瀬川先生は、他院でのデータに基づき「急変の頻度は極めて低いこと」を提示しながら、関係者と毎月のように話し合いを重ねました。単に「やってほしい」と押し付けるのではなく、「どうすれば不安を取り除き、安全に実行できるか」を共に考えるアプローチをとったのです。
話し合いの結果、造影CTにおける不安解消の具体的な解決策として、ER内に直接鳴り響く警報器(サイレン)が導入されました。
CT室に送信機となるボタンを設置し、何かあればボタン一つでER内の警報器が鳴る仕組みを構築。ERのスタッフは1分以内に駆けつけることができるようになり、技師は安心して単独での撮影に臨めるようになりました。
この改善により、造影CT1件あたり約10分のスタッフ拘束時間が削減され、年間で換算すると最大280時間以上の業務時間創出に繋がりました。
MRI検査においても同様の効率化が図られました。しかし、MRI室は強力な磁場と電波シールドに囲まれているため、CT室で導入した警報器の電波がERまで届かないという物理的な障壁がありました。
そこで、専門業者の協力を得て電波の中継器を設置することでこの問題をクリア。さらに、医師の立ち合いを不要とするための明確な判断基準として、事前確認のチェックリストを作成しました。「呼吸状態は安定しているか」「閉所恐怖症はないか」などの項目を事前に確認することで、安全性を担保しながら技師単独での撮影を実現しました。
これにより、時間外MRI検査において1件あたり約15分、年間で約90時間の時間短縮に成功しています。
これらの取り組みの結果、当初は効率化に不安を抱いていた放射線技師へのアンケートでは、約8割が「業務環境が良くなった」と回答しました。
「自分たちも患者さんのためにERの回転率向上に貢献している」という自尊心が高まり、自発的にERの診察室へ手伝いに来る技師も現れるなど、部署の垣根を越えた「ワンチーム」としての連携が深まっています。
データを基にした対話と、現場の不安に寄り添う具体的なシステム改善が、ERの診療時間を生み出し、より強靭な救急医療体制の構築へと繋がった素晴らしい事例です。
登壇者紹介
藤田医科大学 岡崎医療センター 助教 瀬川悠史 先生
執筆・編集・監修
執筆・編集:ドクターズプライムワーク編集部
「救急車のたらい回しをゼロにする」をビジョンに、100病院を超える支援実績を持つ救急改善プラットフォーム「ドクターズプライムワーク」を運営しています。現状を可視化する「データ分析」と、病院が主体となって医師を確保できる「採用プラットフォーム」を一体で提供し、「自分らしく選べる医療をすべての人に」届けるための基盤を構築しています。 当編集部では、医療機関の変革に伴走する中で得られた現場特有の課題や解決のヒントを整理し、病院運営の質を高める有益な情報を発信しています。
監修:田 真茂(株式会社ドクターズプライム 代表取締役・医師)
聖路加国際病院救命救急センターで当直帯責任者を務めた後、2017年に株式会社ドクターズプライムを創業。詳細プロフィールは、会社紹介ページの監修・運営者情報をご覧ください。
参考情報:厚生労働省、消防庁、中医協、四病協資料、自社実績データ



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