更新日:
2026/7/10

最新情報を発信中!
専門家によるセミナーを毎日公開!
セミナー一覧
Dr.'s Prime Work 他院から学ぶシリーズ 今回は、志摩市民病院の医師である江角 悠太(えすみ ゆうた)先生をお招きし、かつて機能不全に陥っていた病院をいかにして立て直し、赤字脱却へと導いたのか、その具体的な取り組みについて伺いました。
江角先生が赴任した当初の志摩市民病院は、以下のような危機的状況にありました。
医療提供体制の崩壊: 救急患者が運ばれてきても、リスクや人員不足を理由に入院を断らざるを得ない状況が常態化していました。
組織の風土悪化: 行政や住民との方向性の不一致から、医療従事者のモチベーションが低下。医師や看護師の退職が相次ぎ、一時は常勤医が江角先生1人になるまでに陥りました。
地域からの信頼喪失: 断り癖がついたことで住民からの評判は落ち、患者数が減少。結果として多額の赤字を抱える悪循環に陥っていました。
この状況を打開するため、江角先生は院内に残った70名の職員全員と個別に面談を実施。さらに地域住民約300名からも意見をヒアリングし、現状の課題を浮き彫りにしました。
ヒアリングを通じて見えてきた課題に対し、江角先生は以下の4つの観点から改革を実行しました。
面談で最も多く挙がったのが「風通しが悪い」という意見でした。これに対し、顔を合わせる機会を徹底的に増やす施策をとりました。
会議の設置: これまでなかった朝礼を毎週月曜日に実施し、全職員会議も定期的に開催して、病院の課題について話し合う場を設けました。
病院祭りの開催: 職員全員で一つの目標に向かって協力し、成功体験を共有するために病院祭りを企画。これにより、職員間の連帯感が生まれ、モチベーションの向上に繋がりました。
長年染み付いた「断る癖」を払拭するため、江角先生自らが先頭に立ちました。
全責任を負う姿勢: 「受け入れた患者の全責任は自分が持つから、絶対に断らないでほしい」と職員に伝え、自らが背中を見せることで、現場の不安を取り除きました。
意識改革: 最初は反発もありましたが、受け入れた患者が回復して感謝される経験を積むことで、徐々に職員の意識も前向きに変化していきました。
新たな人材を獲得し、未来の地域医療を担う人材を育てるために、学生教育に注力しました。
現場での実践的な学び: 学生を積極的に受け入れ、患者との対話や意思決定(ACP)の場に立ち会わせることで、医療の根本的なやりがいを体験させました。
次世代への投資: 責任を持って患者と向き合う経験は、学生にとって大きな成長の糧となり、結果として将来的に同院や地域医療に貢献する人材の確保へと繋がっています。
病院の中だけでなく、地域社会全体を巻き込んだ関係構築を目指しました。
日常的なコミュニケーション: 病院祭りなどのイベントだけでなく、スーパーや居酒屋など、日常の生活圏で住民と積極的に交流を図りました。
開かれた病院へ: 住民にとって病院が「気軽に相談できる身近な存在」となるよう、職員一人ひとりが地域住民としての意識を持ち、温かいコミュニケーションを心がけるようになりました。
志摩市民病院のV字回復は、決して魔法のような手法を使ったわけではありません。「コミュニケーションを増やす」「目の前の患者を断らない」といった、医療の原点に立ち返る地道な取り組みの積み重ねが、職員の意識を変え、地域の信頼を取り戻す結果に繋がりました。
経営難や組織の立て直しに悩む医療機関にとって、江角先生の「逃げずに真正面から向き合う姿勢」は、大きなヒントになるのではないでしょうか。
登壇者紹介
志摩市民病院 江角悠太先生
執筆・編集・監修
執筆・編集:ドクターズプライムワーク編集部
「救急車のたらい回しをゼロにする」をビジョンに、100病院を超える支援実績を持つ救急改善プラットフォーム「ドクターズプライムワーク」を運営しています。現状を可視化する「データ分析」と、病院が主体となって医師を確保できる「採用プラットフォーム」を一体で提供し、「自分らしく選べる医療をすべての人に」届けるための基盤を構築しています。 当編集部では、医療機関の変革に伴走する中で得られた現場特有の課題や解決のヒントを整理し、病院運営の質を高める有益な情報を発信しています。
監修:田 真茂(株式会社ドクターズプライム 代表取締役・医師)
聖路加国際病院救命救急センターで当直帯責任者を務めた後、2017年に株式会社ドクターズプライムを創業。詳細プロフィールは、会社紹介ページの監修・運営者情報をご覧ください。
参考情報:厚生労働省、消防庁、中医協、四病協資料、自社実績データ



メソッドをもっと見る
先月は21件お問い合わせがありました
各サービスの特徴が5分で分かる
気軽に相談してみる