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救急隊との連携を数値化する|要請数を増やすための信頼スコア設計

救急隊との連携を数値化する|要請数を増やすための信頼スコア設計

更新日:

2026/5/18

救急隊との連携を数値化する|要請数を増やすための信頼スコア設計|メソッド

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「あの病院は受けない、と救急隊に思われ始めている」「最近、要請数が減っている」「救急隊との関係を改善したいが、何から始めればよいかわからない」——救急医療の現場で繰り返し聞かれる悩みではないでしょうか。

救急隊との連携は、感覚や印象で語られがちです。しかし、要請数推移・応需率・拒否理由という3つの数値で把握すれば、関係の変化は経営KPIとして月次でモニタリングできます。本記事では、救急応需率を改善する5つの組織戦略で扱った戦略5(救急隊との信頼構築の4フェーズ)を、KPIと3つの実装に落とし込む運用設計を解説します。

本記事のポイント(30秒サマリー)

論点

結論

連携を数値化する意味

救急隊との関係は感覚論ではなく、要請数推移・応需率・拒否理由内訳でモニタリングできる経営KPIです

信頼スコアの3指標

①月次要請数の推移、②受入実績の安定性、③拒否理由の透明性。3指標で「救急隊から見える病院」を数値化します

要請数を増やす実装

①不応需時のコミュニケーションの質を上げる、②救急隊への定期的な勉強会、③救急隊からのフィードバック、の3つの仕組みが基本セットです

モニタリング

月次運営委員会で救急隊別・診療科別の要請数を可視化。減少傾向は信頼関係の毀損サインです

制度との連動

近年の診療報酬改定において、要請数増加が加算要件として直接収益に反映される構造になっています

なぜ救急隊との連携を数値化するのか

救急隊の間では、「あの病院は受ける/受けない」という情報が日々共有されています。要請が減るときは、事前通告なく静かに減っていきます。気づいたときには、地域での自院のポジションが大きく後退していることも少なくありません。

総務省消防庁「令和7年版 救急・救助の現況」によると、令和6年(2024年)の救急自動車による救急出動件数は771万8,380件で過去最高を記録しました。搬送人員も676万9,172人と前年比1.9%増です。要請の総数が増えているにもかかわらず、自院の要請数だけが減っているなら、それは明確な異常サインです。

救急隊との関係を経営判断の対象にするには、3つの数値で把握する必要があります。①月次要請数の推移(趨勢)、②応需率(受入実績)、③拒否理由内訳(透明性)。この3指標で自院の連携状況を可視化することが出発点です。

救急応需率を改善する5つの組織戦略の戦略5では、信頼構築を「宣言→実証→実績蓄積→信頼定着」の4フェーズで整理しました。本記事はそのフェーズを数値で測る運用設計を扱います。


信頼スコアの3指標──月次でモニタリングする経営KPI

救急隊との連携を経営KPIとして月次モニタリングする際の3指標を解説します。これらの3指標を運営委員会で定例的に確認することで、感覚論から数値に基づくマネジメントへの転換が可能になります。

指標1:月次要請数の推移

何を見るかは明確です。救急隊からの要請件数を月次でグラフ化します。異常サインは、3ヶ月連続の減少と、季節調整後の有意な減少の2つです。比較軸は、自院の前年同月比に加えて、地域全体の救急出動件数(消防庁速報値)との乖離を確認します。地域全体が増加しているのに自院だけ減少しているなら、信頼関係の毀損が進行している可能性があります。

指標2:受入実績の安定性

応需率の月次推移と、当直医・診療科別の応需率ばらつきをモニタリングします。異常サインは、医師別応需率のばらつきが大きい属人化の状態と、特定診療科の応需率だけが極端に低い偏りです。

なぜ「安定性」が指標になるのでしょうか。救急隊が信頼するのは「いつ電話しても受けてくれる」一貫性です。どの当直医が受けても同じ判断になる組織体制こそが、信頼の源泉になります。

指標3:拒否理由の透明性

拒否理由の内訳(専門外/満床/処置中/医師不在 等)と、その理由を救急隊にどれだけ可視化しているかを見ます。現場でのヒアリングでは「不応需の一定割合は、特定の専門科の医師不在や夜間の緊急手術体制の制約といった構造的な問題」という声も聞かれます。理由が明確に説明できる不応需は信頼を毀損しません。救急隊が「なぜ断ったか」を理解できれば、次回要請の選定にも活かされます。

3指標の組み合わせ

指標

月次でモニタリング

異常サイン

改善アクション

要請数推移

月次グラフ

3ヶ月連続減少

救急隊への聞き取り訪問

応需率の安定性

医師別・診療科別

属人化・科別の偏り

マニュアル整備

拒否理由の透明性

理由内訳と救急隊への共有

「その他」が多い

不応需理由の構造化

要請数を増やす3つの実装──断り方・勉強会・相互評価

要請数を増やすには、①不応需時のコミュニケーションの質を上げる、②救急隊への定期的な勉強会、③救急隊からのフィードバックの3つの実装が基本セットです。いずれもコスト負担が小さく開始可能で、実際の改善支援の現場において高い再現性をもって導入されている施策です。

実装1:不応需時のコミュニケーションの質を上げる

不応需が発生した際、理由を構造化(専門外/満床/処置中/医師不在/その他)して救急隊に即時伝達する仕組みです。理由が明確な不応需は、次回要請を選定する救急隊の判断材料として機能します。受入基準マニュアル(救急受入体制強化マニュアルで詳述)の付録として、「断る場合のフィードバック様式」を整備するのが現実解です。

実装2:救急隊への定期的な勉強会

四半期に1回程度、自院で受け入れた症例の検討会を開催し、救急隊を招待します。救急隊側にとっては搬送先選定のスキル向上、病院側にとっては「受け入れる病院」のブランディングという双方向の効果があります。勉強会の開催頻度・参加救急隊員数を、指標2の安定性指標と並行してモニタリングするのも有効です。

実装3:救急隊からのフィードバック

受入後、救急隊員からのアンケート(受入対応の質・連携の円滑さ)を月次で回収します。医師個人の対応品質を救急隊視点で可視化でき、インセンティブ設計(医師のインセンティブ設計で詳述)の軸3とも連動します。注意点は、相互評価を「医師を評価する」ものではなく「病院全体の救急受入体制の改善材料」として運用する原則です。

3実装の組み合わせ効果

実装

短期効果(1〜3ヶ月)

中期効果(4〜12ヶ月)

不応需時のコミュニケーションの質を上げる

不応需時の関係維持

「断っても次の要請が来る」信頼の確立

勉強会

救急隊員の搬送選定スキル向上

自院に対する優先要請の増加

相互評価

医師個人の対応品質の可視化

院内の応需文化の定着

実際の支援現場の事例として、関東圏の200〜300床規模の民間病院において、年間要請数が約200件増加した事例があります。3実装をセットで導入し、月1回の運営委員会で進捗を定例確認する運用に切り替えたことで、半年程度で数値変化が現れました。


まとめ:救急隊連携を経営KPIに昇格させる3ステップ

救急隊との連携は、感覚論ではなく経営KPIとして扱うべき領域です。①3指標(要請数・応需率・拒否理由)の月次モニタリング、②3実装(断り方・勉強会・相互評価)の段階的導入、③運営委員会での定例レビュー、の3ステップで運用に落とし込めます。

要請数の増加は経済的にも直結します。近年の診療報酬改定において、年間の救急搬送受入件数は加算算定(地域医療体制確保加算など)の重要な要件となっており、要請数増加が直接収益に反映される構造です。救急隊との連携の数値運用は、診療報酬制度との接続でも経営価値が高まっています。

【自院診断チェックリスト】

確認項目

整備不足のシグナル

チェック

救急隊からの月次要請数を運営委員会で定例的に確認している

月次トラッキングが未整備

◻︎

応需率が医師別・診療科別に分解されている

全体応需率のみで属人化が見えない

◻︎

不応需理由が構造化されて救急隊に共有される仕組みがある

「その他」が大半/フィードバックなし

◻︎

救急隊向け勉強会・症例検討会を定期開催している

開催実績なし

◻︎

受入後の救急隊からの相互評価を回収している

回収なし

◻︎

地域医療体制確保加算等の前提となる搬送受入件数が把握できている

集計が月次で出ない

◻︎


参照

  • 厚生労働省「救急医療体制の現状と課題について」(応需率の定義)

  • 総務省消防庁「令和7年版 救急・救助の現況」(令和5年実績・搬送人員676万人)

  • 厚生労働省「医療経済実態調査」(2025年11月公表・一般病院7割赤字)

  • 中央社会保険医療協議会「診療報酬改定・急性期医療の評価に関する議論」

執筆・編集・監修

執筆・編集:ドクターズプライムワーク編集部
「救急車のたらい回しをゼロにする」をビジョンに、100病院を超える支援実績を持つ救急改善プラットフォーム「ドクターズプライムワーク」を運営しています。現状を可視化する「データ分析」と、病院が主体となって医師を確保できる「採用プラットフォーム」を一体で提供し、「自分らしく選べる医療をすべての人に」届けるための基盤を構築しています。 当編集部では、医療機関の変革に伴走する中で得られた現場特有の課題や解決のヒントを整理し、病院運営の質を高める有益な情報を発信しています。

監修:田 真茂(株式会社ドクターズプライム 代表取締役・医師)
聖路加国際病院救命救急センターで当直帯責任者を務めた後、2017年に株式会社ドクターズプライムを創業。詳細プロフィールは、会社紹介ページの監修・運営者情報をご覧ください。

参考情報:厚生労働省、消防庁、中医協、四病協資料、自社実績データ 

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