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湘南鎌倉救急部門を支える地域連携〜入院を前提としない受け入れと病床マネジメントで実現する地域全体の救急〜

湘南鎌倉救急部門を支える地域連携〜入院を前提としない受け入れと病床マネジメントで実現する地域全体の救急〜

更新日:

2026/7/10

湘南鎌倉救急部門を支える地域連携〜入院を前提としない受け入れと病床マネジメントで実現する地域全体の救急〜|メソッド

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今回お話を伺ったのは、湘南鎌倉総合病院の副院長であり、救命救急センター長を務める山上 浩 先生です。全例応需に向けて積極的に取り組む同院の「入院を前提としない受け入れ」「病床マネジメントで実現する地域全体の救急」について詳しく解説していただきました。

湘南鎌倉総合病院における救急医療の現状

湘南鎌倉総合病院(神奈川県鎌倉市)は、非常に回転率が高く、多くの救急患者を受け入れていることで知られています。現在の全体像は以下の通りです。

  • 全体病床数: 669床

  • 平均在院日数: 9.4日(2025年実績)

  • 救命救急センターの体制: 計41床(救急ICU: 10床、HCU: 31床)

  • その他の専門治療体制: スーパーICU(12床)、循環器系HCU(8床)、脳卒中ケアユニット(18床)

  • 年間の救急受診者数: 約5万人(救急搬送: 18,512名、ウォークイン: 約30,573名)

これだけ多くの患者を受け入れる背景には、救急部門だけでなく「病院全体で救急患者に応需する」という強い姿勢があります。

「入院を前提としない」救急受け入れの仕組み

救急患者をすべて受け入れるとなると、すぐに「入院ベッドが足りなくなるのでは?」という懸念が生じます。これに対し、山上先生は「アドバンスト・トリアージ(高度なトリアージ)」という概念を重要視しています。

地域全体で病床をシェアする発想

  • 初期診療の徹底: まずは救急外来でしっかり診察と検査を行い、患者の背景や生活状況を確認した上で、本当に入院が必要かをジャッジします。

  • 保存的治療や軽症例の転院: 手術を要さない圧迫骨折や骨盤骨折、軽症の肺炎、尿路感染症などの場合、急性期病院のベッドを占有するのではなく、周辺の医療機関へ転院をお願いし、地域全体でベッドをフル活用します。

実際に、当院の救急受診者のうち入院に至る割合は約20.5%であり、年間約3,000〜3,500名が救急外来から直接、他院へ転院しています。

顔の見える関係性が支える「地域連携」

地域の医療機関へ転院をお願いするためには、単なる電話でのやり取りだけでなく、日頃からの関係構築が不可欠です。

  • トップ自らの訪問: 山上先生をはじめとするマネジメント層が、年間5〜10件ほど地域の病院へ直接足を運び、顔の見える関係を構築しています。

  • ニーズのすり合わせ: 「この時間帯ならこの疾患を受け入れ可能」といった相手先病院の内部事情やニーズを正確に把握し、無理な押し付け(例:深夜帯の転院要請など)を避けるよう配慮しています。

  • バックアップ体制の提供: 転院先で想定外の重症化や合併症が見つかった場合には、迅速に湘南鎌倉総合病院へ戻す(お戻し)ことができる体制を保証し、転院先が安心して患者を受け入れられる環境を整えています。

救急救命士へのタスクシフトによる劇的な業務改善

転院調整には多くの時間がかかります。湘南鎌倉総合病院では、この業務を医師や看護師から院内救急救命士へタスクシフトすることで、医療の質を担保しながら大幅な業務効率化を実現しています。

  • ホットライン対応: 消防からの救急要請電話(約21,995件/年)を救急救命士が対応。

  • 紹介・転院調整: 他院への紹介連絡(約4,298件/年)や、転院調整(約2,073件/年)も救急救命士が担当。医師は診断名やプロブレムリストを的確にプレゼンテーションする役割に徹します。

このタスクシフトにより、年間で約2,886時間もの時間が節約されました。米国データに換算すると、この節約時間によって新たに年間約7,157人の患者を診療可能になるという絶大な効果をもたらしています。

病床稼働率103%を支えるマネジメント

湘南鎌倉総合病院では、病床稼働率が103%に達することもあります。これは国が認めている「5%のオーバーベッド(増床)ルール」をフル活用しているためです。

しかし、ベッドを増やすだけでは現場が疲弊してしまいます。これを安全に運用するためには以下のマネジメントが必須となります。

  • 看護師の人員確保: 増床に対応できるよう、採用人数を増やし配置を手厚くする。

  • 離床・早期退院の促進: 病床の回転率を高く維持するための継続的な取り組み。

限界まで救急を受け入れるからこそ生じる「医療安全の担保」という課題に対しても、病院全体でリソースを適切に配分し、負荷が一部に集中しないようにデザインすることが求められます。

まとめ

湘南鎌倉総合病院の取り組みから学べるのは、「救急=自院だけで完結させるもの」という固定観念を捨てることです。

地域全体をひとつの大きな病院に見立て、自院の役割(高度急性期医療)と地域の役割(保存的治療やリハビリ)を明確に分け、コミュニケーションを通じて最適な患者配置(トリアージ)を行うこと。これこそが、これからの超高齢社会における救急医療マネジメントの最適解と言えるでしょう。

登壇者紹介

湘南鎌倉総合病院 副院長 救命救急センター長 山上浩先生

執筆・編集・監修

執筆・編集:ドクターズプライムワーク編集部
「救急車のたらい回しをゼロにする」をビジョンに、100病院を超える支援実績を持つ救急改善プラットフォーム「ドクターズプライムワーク」を運営しています。現状を可視化する「データ分析」と、病院が主体となって医師を確保できる「採用プラットフォーム」を一体で提供し、「自分らしく選べる医療をすべての人に」届けるための基盤を構築しています。 当編集部では、医療機関の変革に伴走する中で得られた現場特有の課題や解決のヒントを整理し、病院運営の質を高める有益な情報を発信しています。

監修:田 真茂(株式会社ドクターズプライム 代表取締役・医師)
聖路加国際病院救命救急センターで当直帯責任者を務めた後、2017年に株式会社ドクターズプライムを創業。詳細プロフィールは、会社紹介ページの監修・運営者情報をご覧ください。

参考情報:厚生労働省、消防庁、中医協、四病協資料、自社実績データ 

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