【セミナーレポート】湘南鎌倉救急部門を支える組織づくり〜教育と業務オペレーションで実現する断らなくていい救急〜
更新日:
2026/7/15

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救急医療の現場では、ベッドの満床や、専門外の疾患に対する医師の不安から、患者の受け入れを断らざるを得ないケースが多発しています。また、昨今の診療報酬改定などにより、救急応需実績の向上が病院経営においても急務となっています。
湘南鎌倉総合病院では、「断らない」ことを精神論で押し付けるのではなく、仕組みとして「断らなくていい」状態を作るアプローチを実践しています。他科ローテーションを取り入れた独自の教育体制や、集中力を維持する3交代制、メーリングリストを活用した風通しの良い安全文化を構築しています。
この記事を読むことで、医師が自信を持って初療にあたれる教育プログラムの作り方や、エラーを防ぎ現場の負担を減らす業務オペレーション構築のノウハウを学ぶことができます。
セミナー動画本編では、より詳細なシフト管理の工夫や、院内外の連携を生かしたマネジメントの具体例など、自院の改革に直結する実践的な知見を得ることができます。
本記事では、年間約5万人の救急患者を受け入れる湘南鎌倉総合病院の山上浩副院長にご登壇いただいたドクターズプライムワークのセミナーから、救急部門を支える組織づくりのエッセンスをご紹介します。
病床不足に加え、当直医のスキルや専門外の疾患に対する「自信のなさ」が大きな要因です。
救急搬送の要請を断る理由として、一般的には「満床で入院できないこと」が挙げられます。しかしそれだけでなく、当直医が自身の専門外の領域に対して自信を持って初療を行えないことや、それに伴う訴訟リスクへの不安も大きく影響しています。現場に「とにかく断るな」と強いるのは限界があります。大切なのは、断らないこと自体を目的とするのではなく、地域や病院の体制を整え、現場が自発的に「断らなくていい」と思える仕組みを作ることです。
救急部門だけでなく、眼科や小児科など「他科をローテーションで回る」独自のカリキュラムが鍵となります。
湘南鎌倉総合病院では、救急専門医を取得するための3年間のプログラムのうち、半分を他科での研修に充てています。
小児科、産婦人科、眼科、耳鼻科、整形外科などを必須とし、専門医のもとで集中的に学びます。
例えば小児科で2ヶ月間どっぷりと診療に浸かることで、専門外への圧倒的な自信がつきます。
学んだ知識を、年間約8000人の小児が受診する自院の救急現場ですぐに実践(アウトプット)できる環境があります。 これにより、多様な疾患から逃げずに応需できる「断らなくていい医師」が育っていきます。また、自院で不足している領域(重症小児やプレホスピタルなど)については、積極的に地域の他院へ研修に送り出すなど、地域全体で医師を育てる連携も重要視しています。
長時間勤務による集中力・体力の低下が、診療と教育の質を同時に下げてしまうことです。
かつての救急現場では、24時間勤務の中で後進の指導と診療を両立させなければならず、夕方以降は疲労から質の高い教育が困難になるというリアルな課題がありました。 このジレンマを解消するため、湘南鎌倉総合病院では2013年に「完全3交代制」へと舵を切りました。勤務時間を8〜9時間に限定することで、集中力を保ったまま診療と教育の両方に注力できるようになりました。ただし、すべての病院に3交代制が合うわけではありません。夜間の患者数やスタッフの数など、自院の業務密度に合わせて、最適なシフト構成(2交代制など)を柔軟に見つけることがマネジメント層には求められます。
徹底したリアルタイムの情報共有と、リーダー自らがエラーを開示する心理的安全性の担保です。
救急部門は情報や時間が限られた中で診断を下すため、エラーが起きやすい過酷な環境です。そのため、職種を問わず全員が参加する以下のようなオペレーションで安全文化を構築しています。
1日7回のメーリングリスト報告: 各シフトのリーダー(医師、看護師、救急救命士など)が、業務報告や診療概要を部門全体へリアルタイムに共有します。
リーダーによる率先したインシデント報告: 責任者自らが自身の見落としや改善点をオープンにすることで、現場全体がインシデントを報告しやすい心理的ハードルを下げています。
定期的なM&Mカンファレンス: 2ヶ月に1回、オンライン等で小グループに分かれ、エラーのシステム的な改善策を議論し、スタッフクラスの担当者を決めて即座に対応を進めます。
本記事では、湘南鎌倉総合病院が実践する「断らなくていい救急」のための組織づくりについて解説しました。単に応需率を上げるだけでなく、その先にある「患者の予後改善と医療の質の向上」を目指すためのヒントが詰まっています。
幅広い疾患に対応できる専攻医を育てる、他科ローテーション体制の全貌
自院の規模や業務密度に合わせた最適なシフト構築の考え方
職種を越えた連携を生む、インシデント共有と改善の具体的事例 より具体的な実践ステップや現場のリアルな工夫の詳細は、以下のセミナー見逃し配信ページで公開しています。自院の改革を加速させたいマネジメント層の方は、ぜひこの機会にご視聴ください。
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登壇者紹介
湘南鎌倉総合病院 副院長 救命救急センター長 山上浩先生
執筆・編集・監修
執筆・編集:ドクターズプライムワーク編集部
「救急車のたらい回しをゼロにする」をビジョンに、100病院を超える支援実績を持つ救急改善プラットフォーム「ドクターズプライムワーク」を運営しています。現状を可視化する「データ分析」と、病院が主体となって医師を確保できる「採用プラットフォーム」を一体で提供し、「自分らしく選べる医療をすべての人に」届けるための基盤を構築しています。 当編集部では、医療機関の変革に伴走する中で得られた現場特有の課題や解決のヒントを整理し、病院運営の質を高める有益な情報を発信しています。
監修:田 真茂(株式会社ドクターズプライム 代表取締役・医師)
聖路加国際病院救命救急センターで当直帯責任者を務めた後、2017年に株式会社ドクターズプライムを創業。詳細プロフィールは、会社紹介ページの監修・運営者情報をご覧ください。
参考情報:厚生労働省、消防庁、中医協、四病協資料、自社実績データ



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