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常勤医退職で夜間当直が回らない病院の3つの経営判断─非常勤・外部医師による補完手段の比較

常勤医退職で夜間当直が回らない病院の3つの経営判断─非常勤・外部医師による補完手段の比較

更新日:

2026/5/28

常勤医退職で夜間当直が回らない病院の3つの経営判断─非常勤・外部医師による補完手段の比較  |メソッド

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※本記事は、当社システム(ドクターズプライムワーク)で2025年12月末時点までに100病院超・累計救急受入患者数16万人の救急体制改善を支援してきた現場知見と、厚生労働省の一次情報(医科点数表A205/別表第七の三/令和8年告示および令和8年3月公示の診療報酬改定資料)をもとに作成しています。

「常勤の先生が急に退職することになって、夜間当直のシフトが回らない」。
救急医療を担う病院の経営層や事務長から、このような相談が後を絶ちません。人を急いで埋めるだけでは応需率は戻らず、むしろ次の退職を呼ぶことすらあります。 本記事では、夜間当直の穴を埋める5つの補完手段の比較と、「とりあえず非常勤」が失敗する5つの構造、そして経営層が下すべき3つの経営判断を、厚生労働省の一次情報と救急体制改善の現場知見をもとに整理します。


結論:夜間当直の穴を埋める現実的な3つの選択

最初に結論をお伝えします。夜間当直の補完手段は、欠員期間と目的によって次の3つに集約されます。

状況

推奨される補完手段

1〜2か月の暫定対応

スポット非常勤(単発当直)

3か月以上の継続需要

定期非常勤、または救急特化型の外部支援サービス

応需率改善が経営課題

救急特化型の外部支援サービス+運用設計(応需基準マニュアル化・データ可視化)

詳細な比較表と「失敗しないための3つの経営判断」を、以下で順に解説します。


夜間当直の補完手段とは

夜間当直の補完手段とは、常勤医の退職・欠員によって生じた当直シフトの空白を、スポット非常勤・定期非常勤・医局派遣・外部の救急支援サービス・運用設計の見直し(宿日直許可を含む)などで埋める一連の経営施策を指します。 単なる人員確保ではなく、応需率・病床稼働率・医師の働き方改革対応を一体で設計する必要があるのが特徴です。


いま日本の夜間当直現場で何が起きているのか?

結論から言えば、救急ニーズは右肩上がりに増え続けているのに、当直を担える医師の供給は逆方向に細っています。 この需給ギャップが、常勤医退職の打撃を増幅させています。

具体的な数値で見てみます。

指標

数値

出典

2024年救急出動件数

771万7,123件(3年連続で過去最多)

総務省消防庁 2024年速報値(2025年3月発表)

救急搬送人員のうち65歳以上

約63.3%(428万2,228人)

同上

救急搬送の傷病程度別割合

軽症46.8%/中等症44.6%/重症7.2%/死亡1.3%

同上

令和6年度 一般病院の総損益率

約▲3.9%

中央社会保険医療協議会・医療経済実態調査

[出典:総務省消防庁「令和7年版 救急・救助の現況」/中央社会保険医療協議会・医療経済実態調査]

つまり、少ない救急対応人員で増え続ける救急要請に対応するという構造が全国で常態化しています。そこに常勤医1人の退職が重なれば、当直シフトの一部が一気に崩れ、応需率の低下と入院数の減少を通じて経営に直結します。

加えて、2024年4月から本格適用された医師の働き方改革(時間外労働の上限規制)と宿日直許可制度により、残った常勤医に「とりあえず当直回数を増やす」という従来型の打開策も取りにくくなっています[出典:厚生労働省「医師の働き方改革の推進に関する検討会」報告書]。


補完手段にはどんな選択肢があるのか?

夜間当直の穴を埋める手段は、目的別に大きく3つのカテゴリに分けられます。

カテゴリ別の3分類

カテゴリ

目的

代表的な手段

A. 短期穴埋め型

直近1〜2か月の暫定対応

スポット非常勤

B. 中期安定運用型

3か月以上の継続需要への対応

定期非常勤・医局派遣

C. 経営改善型

応需率・収益・組織改革を一体で進める

救急特化型の外部支援サービス

その上で、より具体的な5系統で比較すると次のようになります。

5系統の詳細比較

補完手段

カテゴリー

立ち上がり速度

コスト水準

質の担保

応需率改善余地

①単発スポット非常勤

A

◎(数日〜)

高め(日給制)

医師個人差大

低い

②定期非常勤(週固定)

B

○(1〜3か月)

比較的安定

③医局派遣

B

△(人事時期依存)

一定水準

④救急特化型の外部支援サービス

C

高め(月額+手数料)

仕組みで担保

高い

⑤運用軽量化(宿日直許可・受入範囲縮小)

縮小方向

実際の現場では、これらの単独利用ではなく、「直近3か月はスポット非常勤+並行して定期非常勤を採用」救急特化型サービスと医局派遣を併用」など、組み合わせ運用が主流です。

病院タイプ別の現実的な選択

病床規模・診療科構成・地域特性によっても適切な選択は異なります。あくまで一般的な目安として整理すると、次のような対応関係が見えてきます。

病院タイプ

現実的な選択肢の組み合わせ

150床未満・救急負荷が軽い病院

スポット非常勤+運用軽量化(宿日直許可の活用検討)

二次救急病院(150〜400床)

定期非常勤を中核に+応需率改善が課題なら救急特化型サービスを併用

救急集中型・三次救急

医局派遣を維持しつつ、輪番日や繁忙曜日に救急特化型サービスを部分導入

医師少数区域の地方病院

外部医師を「緩衝材」として配置し、医局との関係維持と両立する設計

なぜ「とりあえず非常勤」では穴が埋まらないのか?

補完手段を選んでも、応需率が戻らないケースが少なくありません。 救急体制改善を支援する複数の病院での観察から繰り返し見えてくる失敗構造は、次の5つです。

①「専門外だから」を理由とした断り 非常勤医を入れても、現場で「専門外なので診られない」と判断される症例が多発し、応需率が上がらない構造です。中等症・軽症ほど搬送先決定までに時間がかかる傾向は、救急医療の現場で広く認識されており、専門外断りはまさにこの層で発生しやすいパターンです。

②属人化した受入ルール 病院内に明文化された受入基準がないと、来た非常勤医は「何を受ければよいのか」が分からず、結果として保守的な判断に流れます。受入基準のマニュアル化が応需率改善の出発点になります。

③看護師の心理的圧力 受入の電話を取る看護師が「なぜこの患者を受けたのか」と問われる場面が常態化していると、看護師は無意識に断る方向に動きます。外部医師の導入と同時に「受ける日」を院内で宣言したことで、看護師の心理的負担が軽減され、士気が上がった事例もあります(救急体制改善の支援実績より)。

④救急隊との信頼欠落 「あの病院は要請しても断る」と救急隊に認識されると、要請そのものが減ります。逆に「あの先生がいる日は受けてくれる」という口コミは、補完手段の効果を増幅させます。

⑤不当な拒否へのペナルティが効かない仕組み 質を担保する仕掛けがない補完手段は、結局「来てくれただけ」で終わります。応需基準・インセンティブ・相互評価などを仕組みとして組み込まないと、補完は穴埋め以上にはなりません。

つまり、補完手段選びと並行して「受けられる組織」を作らないかぎり、応需率は戻らないということです。


経営判断①──「短期つなぎ」と「中長期体制」を分けて設計する

1つ目の経営判断は、欠員期間の見極めです。

  • 1〜2か月の暫定対応 → スポット非常勤を中心に組む

  • 3か月以上の継続需要 → 定期非常勤・救急特化型サービスへ早期移行

  • 6か月以上の構造的欠員 → 常勤スカウト・外部支援サービスを軸に再設計

支援実績から見えてくる典型的な失敗パターンは、「3か月のつなぎ」のつもりで始めたスポット運用が、半年経っても解消されないというものです。スポットの単価は日給制で割高なため、長期化すると年間数千万円規模の支出が積み上がります。

多くの救急特化型サービスは最低契約期間1年が標準ですが、応募が集まらない場合や応需率が一定基準を下回った場合の解約条件を契約時に設計できるサービスも存在します。また、救急特化型サービスでは、求人掲載から勤務確定までのマッチングに30〜40日程度を要する例があり、短期と中長期を切り分けつつ、契約期間の柔軟性とリードタイムを確認することが、経営判断の入口になります。


経営判断②──質を担保する仕組みをセットで導入する

2つ目の経営判断は、補完手段に「質を担保する仕組み」が組み込まれているかの確認です。

具体的には、次の5つの観点で補完手段を見極めます。

  1. 応需基準のマニュアル化支援:外部医師が来ても迷わない受入基準があるか

  2. インセンティブ・ペナルティ設計:応需や入院に対する報酬/不当な拒否に対するマイナス評価があるか

  3. 相互評価・稼働後アンケート:医師と病院が相互に評価し、ミスマッチを防ぐ仕組みがあるか

  4. データ可視化:応需率・不応需理由・医師別実績がダッシュボードで把握できるか

  5. 段階移行設計:スポット→定期非常勤→常勤スカウトと段階的に運用できるか

こうした仕組みを組み込んだ補完によって、応需率が60〜70%台から90%台へ改善し、病床稼働率が約9割で安定するといった成果が、複数の二次救急病院で観察されています。輪番日の救急受入が1日15〜20台規模でも、外部医師1名体制でスムーズに対応できているケースもあります(救急体制改善の支援実績より)。

逆に、仕組みのない補完は、いくら人を入れても応需率を変えません。この傾向は、厚生労働省の救急医療提供体制に関する検討会等でも「受入体制の構造的整備」の重要性として繰り返し指摘されている内容と整合します。


経営判断③──2026年診療報酬改定との接続を意識する

3つ目の経営判断は、補完を「経営インパクトに変換する」設計です。

2026年度(令和8年度)診療報酬改定では、救急受入実績そのものが経営の生命線になりました。2026年2月の中医協答申に基づく主要な制度を整理します(2026年6月1日施行)。

制度

内容(2026年度改定後)

急性期病院一般入院基本料A

救急搬送年間2,000件以上+全身麻酔1,200件以上(1,930点/日)

急性期病院一般入院基本料B

救急搬送年間1,500件以上等+夜間時間帯受入が1割以上(1,643点/日)

救急医療管理加算1

1,050点/日(7日まで)。別表第七の三の1〜12の重症患者対象

救急医療管理加算2

420点/日(7日まで)。1〜12に準ずる状態または「その他の重症な状態」対象

救急医療管理加算2の半減ペナルティ

直近6か月で「その他の重症な状態」割合が5割以上の場合、420点→210点

地域医療体制確保加算1

620点(従来要件)

地域医療体制確保加算2

720点(医師確保が必要な診療科の勤務環境・処遇改善を実施)

[出典:厚生労働省「令和8年度診療報酬改定の概要」/「医科点数表」A205]

つまり、補完手段の選び方しだいで、年間数千万円規模の収益差が生まれます。 年間1,000件の救急入院がある中規模病院では、救急医療管理加算の算定精度(加算1と加算2の比率や減算ペナルティの有無)の差だけで、年間約700万円〜数千万円の収益差が出るとされています(詳しくは関連記事「救急医療管理加算とは?算定要件・加算1と加算2の違い・経営インパクトを徹底解説【2026年度改定対応】」で解説しています)。応需率の引き上げが救急搬送件数を増やし、救急医療管理加算1・地域医療体制確保加算2・急性期病院基本料Bといった上位区分の取得・維持につながる、という連鎖を設計するのが本質です。なお、急性期病院一般入院基本料A・Bの要件と救急搬送実績の関係については、関連記事「急性期病院の生き残り戦略!新「急性期病院一般入院基本料」と救急搬送実績への対応」もあわせてご確認ください。

応需率の改善と並行して、初年度ベースで複数の支援病院で増収が実現されており、補完手段を「コスト」ではなく「投資」として位置付けられるかが、経営判断の分岐点になります。


まとめ:常勤医退職を「経営見直しの好機」に変える

常勤医の退職で夜間当直に穴が空いたときに、人を急いで埋めるだけでは応需率は戻らず、むしろ次の退職を呼ぶことすらあります。 本記事で整理した3つの経営判断──「短期つなぎと中長期体制を分けて設計する」「質を担保する仕組みをセットで導入する」「2026年診療報酬改定との接続を意識する」──は、いずれも厚生労働省の制度設計と、現場での救急体制改善知見の両方から導かれたものです。

退職という痛みを、応需率の引き上げ・病床稼働率の改善・上位加算の取得という経営インパクトに変換できるかどうか。これが、これからの数年で病院経営の明暗を分けていきます。

次の一手として、自院の応需率・不応需理由・救急受入件数を可視化することから始めてみてください。


よくある質問

Q1. 救急医療管理加算2や地域医療体制確保加算の取得・維持に向けて、何から手を付ければよいですか?

自院の救急受入実績の可視化から着手することが現実的です。救急医療管理加算2は1日420点(7日まで)で、直近6か月で「その他の重症な状態」割合が5割以上になると420点→210点へ半減するペナルティがあります。地域医療体制確保加算は2026年度改定で1(620点)と2(720点)に区分化され、加算2は医師確保が必要な診療科(消化器外科・心臓血管外科・小児外科・循環器内科等)の勤務環境・処遇改善が要件です。算定精度の改善と並行して、応需率の引き上げが両加算の取得・維持の両輪になります。[出典:厚生労働省「医科点数表」A205/「令和8年度診療報酬改定の概要」](算定要件の詳細は関連記事「救急医療管理加算とは?算定要件・加算1と加算2の違い・経営インパクトを徹底解説【2026年度改定対応】」を参照)。

Q2. スポット非常勤は何日前から確保できますか?

医師求人プラットフォームや紹介会社経由で、数日〜数週間先の当直を埋められるケースが多いです。ただし、土日・繁忙期・繁忙地域は競争が激しく、特定の曜日や時間帯では希望条件の医師確保に1か月以上かかる場合もあります。緊急時はスポットを使いつつ、並行して中長期の定期非常勤採用を進めるのが現実的です。

Q3. 医局派遣は新規依頼で断られることがありますか?

あります。2024年の医師の働き方改革により、大学病院側も自院の医師の労働時間管理を厳格化せざるを得なくなり、関連病院への外勤や派遣を縮小・引き揚げる動きが全国で広がっています[出典:厚生労働省「医師の働き方改革の推進に関する検討会」]。新規の派遣依頼や「来月からすぐ」という急な要望には応えてもらえないケースが多く、すでに関係がある場合でも、医局に過度な負担をかけない設計が求められます。

Q4. 宿日直許可を取ると何が変わりますか?

宿日直許可は、労働基準法第41条第3号に基づき、勤務実態が「ほとんど労働する必要のない勤務」(いわゆる寝当直に該当する状態)であれば、労働基準監督署の許可を受けて労働時間規制の適用除外とすることができる制度です[出典:厚生労働省「医師、看護師等の宿日直許可基準について」]。許可がある宿日直時間は原則として労働時間に算入されず、医師の時間外労働の上限規制(一般の勤務医(A水準)で年960時間、救急医療機関等で勤務する特定対象医師(B水準・連携B水準・C水準)で年1,860時間)の管理がしやすくなります。ただし、宿日直中に通常業務が発生した時間は労働時間として算定されるため、業務実態を継続的に確認する必要があります。

Q5. 救急特化型の外部支援サービスの費用相場はどれくらいですか?

サービス内容により幅があります。多くの場合、医師報酬(日給制)と、運営側に支払う初期費用・月額基本料・採用手数料の組み合わせで構成されます。月額数十万円のライトプランから、応需率改善支援・データ可視化を含む包括プランまで複数の料金体系が存在します。費用対効果を判断するには、応需率改善による年間増収シミュレーション(受入件数増×入院率×単価)と、補完コストの差し引きで比較するのが定石です。

Q6. 短期の欠員と中長期の体制構築、どちらを優先すべきですか?

両方を並行して走らせるのが現実的です。直近1〜2か月の穴埋めはスポット非常勤で対応し、同時に定期非常勤の採用や救急特化型サービスの導入検討を始めます。救急特化型サービスでは求人掲載から勤務確定までに30〜40日程度のリードタイムを要する例があり、欠員確定の段階で並行着手しないと、スポット運用が長期化して年間数千万円規模の支出が積み上がりやすくなります。

Q7. 院内で外部医師活用への合意を得るには?

理事長・院長・医局・事務長それぞれの納得材料を分けて準備することが効果的です。経営層には実データに基づくコストシミュレーション(年間増収見込みと支出の比較)を、医局には外部医師活用が常勤医の負担軽減と医局派遣ラインの維持につながる設計であることを、現場には受入基準マニュアルと相互評価の仕組みがあることを示します。月1回の救急運営委員会を設置し、応需率・不応需理由・改善策をデータで振り返るPDCAの場を作ると、合意形成は段階的に進みます。

Q8. 外部医師の質はどう担保すべきですか?

「ペナルティ・相互評価・稼働後アンケート」の3点セットがあるサービスを選ぶのが安全です。単に医師を紹介するだけで質保証の仕組みがないサービスは、補完手段としての効果が限定的です。応需基準マニュアルの作成支援、不当な応需拒否へのマイナス評価、相互評価の3つが揃っているかを契約前に確認することをお勧めします。


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執筆・編集・監修

執筆・編集:ドクターズプライムワーク編集部
「救急車のたらい回しをゼロにする」をビジョンに、100病院を超える支援実績を持つ救急改善プラットフォーム「ドクターズプライムワーク」を運営しています。現状を可視化する「データ分析」と、病院が主体となって医師を確保できる「採用プラットフォーム」を一体で提供し、「自分らしく選べる医療をすべての人に」届けるための基盤を構築しています。 当編集部では、医療機関の変革に伴走する中で得られた現場特有の課題や解決のヒントを整理し、病院運営の質を高める有益な情報を発信しています。

監修:田 真茂(株式会社ドクターズプライム 代表取締役・医師)
聖路加国際病院救命救急センターで当直帯責任者を務めた後、2017年に株式会社ドクターズプライムを創業。詳細プロフィールは、会社紹介ページの監修・運営者情報をご覧ください。

参考情報:厚生労働省、消防庁、中医協、四病協資料、自社実績データ 

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