更新日:
2026/5/25

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※本記事は、当社システム(ドクターズプライムワーク)で2025年12月末時点までに100病院超・累計救急受入患者数16万人の救急体制改善を支援してきた現場知見と、厚生労働省の一次情報をもとに、算定漏れ防止・経営インパクト試算の実務ポイントを解説します。
加算1は1,050点・加算2は420点で点数差が大きい:加算1は別表第七の三の状態1〜12に該当する重症患者が対象、加算2は1〜12に準ずる状態または13「その他の重症な状態」が対象
2024年度改定で加算2の半減ルールが導入:直近6か月の算定患者のうち「その他の重症な状態」が5割以上の医療機関は420点→210点に減算
算定精度の差が年間数千万円の経営差を生む:年間1,000件の救急入院がある中規模病院では、算定精度の差で約735万円〜数千万円の収益差が発生
救急医療管理加算(A205)は、緊急に入院が必要な重症患者を受け入れた病院に対して、入院日から7日を限度に所定点数を加算する評価です。加算1(1,050点)と加算2(420点)の2区分があり、2024年度改定で加算2に「その他の重症な状態」5割以上の医療機関は210点に半減するペナルティが導入されました。本記事では、救急医療管理加算の算定要件、加算1と加算2の違い、別表第七の三の12項目、算定漏れを減らす5つのポイント、経営インパクト試算までを体系的に解説します。
救急医療管理加算(A205)とは、地域における救急医療体制の計画的な整備のため、入院可能な診療応需態勢を確保する保険医療機関において、緊急に入院が必要な重症患者を受け入れた場合に、入院日から起算して7日を限度に所定点数に加算される評価です。
出典:[厚生労働省「医科点数表」A205 救急医療管理加算(令和8年告示第69号)]P36-37
救急医療管理加算は、「一般病棟等で重篤な救急搬送患者を受け入れる場合のコスト増を経済的に評価する」という趣旨で設けられています。重篤な状態の患者が救急搬送された場合、多くの検査・処置等を入院初期に行うことが求められ、スタッフの負担も大きくなります。こうした点を診療報酬で評価することで、「救急患者の円滑な受け入れ」を促進することを目指す制度です。
論点 | 結論 |
|---|---|
制度の目的 | 重篤な救急搬送患者を受け入れる際のコスト増を経済的に評価 |
加算1の点数 | 1,050点/日(最大7日間) |
加算2の点数 | 420点/日(最大7日間) |
加算2の減算後の点数 | 210点/日(特定の施設基準に該当する場合) |
算定期間 | 入院した日から起算して7日を限度 |
算定対象 | 入院時点で重症であり、緊急入院が必要と認められた患者 |
算定要件の特徴 | 加算1は別表第七の三の状態1〜12、加算2は1〜12に準ずる状態または13「その他の重症な状態」 |
2024年度改定の重要点 | 加算2で「その他の重症な状態」が5割以上の医療機関は420点→210点へ減算 |
比較項目 | 加算1 | 加算2 |
|---|---|---|
点数(1日あたり) | 1,050点 | 420点 |
算定期間 | 最大7日間 | 最大7日間 |
対象患者の状態 | 別表第七の三の1〜12のいずれか | 1〜12に準ずる状態、または13「その他の重症な状態」 |
加算2が5割以上の場合 | 該当なし | 210点に減算 |
加算1は、別表第七の三の「一」から「十二」までのいずれかの状態にあり、医師が診察等の結果、入院時点で重症であり緊急に入院が必要と認めた患者が対象です(「十三 その他の重症な状態」は加算1の対象外)。
状態 | 主な評価指標 | |
|---|---|---|
一 | 吐血、喀血又は重篤な脱水で全身状態不良の状態 | 出血量・脱水所見 |
二 | 意識障害又は昏睡 | JCS(Japan Coma Scale)、GCS |
三 | 呼吸不全で重篤な状態 | FiO2、SpO2、PaO2 |
四 | 心不全で重篤な状態 | NYHA心機能分類 |
五 | 急性薬物中毒 | 血中濃度・症状 |
六 | ショック | 収縮期血圧・乳酸値 |
七 | 重篤な代謝障害(肝不全、腎不全、重症糖尿病等) | 検査値(Cr・BUN・血糖等) |
八 | 広範囲熱傷、顔面熱傷又は気道熱傷 | Burn Index・熱傷面積 |
九 | 外傷、破傷風等で重篤な状態 | GCS・損傷部位 |
十 | 緊急手術、緊急カテーテル治療・検査又はt-PA療法を必要とする状態 | 適応疾患の判断 |
十一 | 消化器疾患で緊急処置を必要とする重篤な状態 | 内視鏡所見・症状 |
十二 | 蘇生術を必要とする重篤な状態 | CPA・心肺停止状態 |
十三 | その他の重症な状態 | - |
出典:[厚生労働省「基本診療料の施設基準等」別表第七の三(令和8年告示第70号)]P344-345
加算2は、「1〜12に準ずる状態」または「13. その他の重症な状態」が対象です。加算1の対象状態には該当しないが、医師の判断で「重症かつ緊急入院が必要」と認められる患者が対象になります。
救急医療管理加算を算定するには、以下の施設基準を満たす必要があります。
休日または夜間における救急医療の確保のために診療を行っていると認められる医療機関であること
都道府県が作成する医療計画に記載されている救急医療機関であること
地域医療支援病院、または「救急病院等を定める省令」に基づき認定された救急病院・救急診療所であること
通常の当直体制のほかに、重症救急患者の受入れに対応できる医師等の医療従事者を確保していること
算定の妥当性を確保するため、以下の4つの原則が定められています。
入院時点で重症である患者のみが対象(算定期間中、継続して重症状態である必要はない)
単なる経過観察での入院、入院後の重症化リスクが高いためだけの入院は対象外
転院により入院する場合、同一傷病で転院前医療機関に入院していた場合は算定不可
客観指標(JCS・NYHA等)による重症度評価を診療報酬明細書の摘要欄に記載することが求められる(2024年度改定で厳格化)
2024年度の診療報酬改定では、救急医療管理加算について重要な見直しが行われました。
最も重要な変更点です。
項目 | 内容 |
|---|---|
評価対象 | 直近6か月間で救急医療管理加算2を算定した患者 |
評価基準 | 別表第七の三の十三「その他の重症な状態」の患者の割合が5割以上 |
減算内容 | 加算2の点数を420点 → 210点へ半減 |
趣旨 | 「その他の重症な状態」の運用が不適切な医療機関に対するペナルティ |
出典:[厚生労働省「医科点数表」A205 救急医療管理加算(令和8年告示第69号)]P36-37
「経過観察が必要であるため入院させる場合」など、算定の対象とならない場合が明確化されました。具体的には、軽微な処置で翌日退院可能なケース、入院後の重症化リスクを予防する目的のみの入院、検査入院を主目的とする入院は対象外となります。また、同一傷病で他の医療機関から転院してきた患者についても、転院前医療機関での入院が継続している場合は算定不可です。
加えて、患者の状態について詳細を把握する観点から、状態の分類等について見直しが行われ、レセプトの摘要欄への記載項目が拡充されました。算定対象患者であっても、入院時点の重症性を客観的指標で立証できない場合は、査定対象となるリスクが高まっています。
加算1を算定する場合、診療報酬明細書の摘要欄に以下を記載することが求められます。
別表第七の三の1〜12のうち該当する状態
患者の具体的な状態を示す指標(JCS、NYHA等)の数値
過去の実態として、加算1を算定しているにもかかわらずJCSゼロ点(意識清明)の患者やNYHA分類I(身体活動に制限のない心疾患患者)の患者が含まれているケースが問題視されていました。2024年度改定では、患者状態の指標数値(JCS、NYHA、FiO2等)を診療報酬明細書に記載することが求められ、適切な算定の促進が図られています。
算定漏れを構造的に減らすため、以下の5つのポイントを月次でモニタリングすることが推奨されます。
救急搬入時の重症度評価が医事課に正確に伝わる仕組みを構築します。具体的には、電子カルテからレセプトシステムへの連携、救急搬入時の重症度評価の標準化、医事課職員に対する救急医療管理加算の研修実施が有効です。救急医療管理加算の算定要件は医学的な判断に依存するため、救急部と医事課の双方が共通言語で重症度を把握できる体制が不可欠です。
患者状態を客観的に立証する指標を電子カルテに確実に記録します。具体的には、JCS(Japan Coma Scale:意識レベル)、NYHA心機能分類(心不全の重症度)、FiO2/SpO2/PaO2(呼吸不全の評価)、Burn Index(熱傷の重症度)等の数値です。2024年度改定で診療報酬明細書の摘要欄への記載が要件化されたため、診察時の数値記録が漏れると算定が認められない可能性があります。
「重篤」の判定が医師個人に依存すると算定の妥当性が揺らぐため、院内で判定基準を明文化します。具体的には、重症度判定マニュアルの整備、救急医・主治医・医事課の3者カンファレンスの定例化、査定対策としての記録の標準化です。判定基準の統一は、査定リスクの低減と医師間のばらつき解消の両方に効果があります。
加算1(1,050点)と加算2(420点)では点数差が大きいため、患者状態に応じた適切な算定が経営インパクトに直結します。具体的には、加算1の対象である別表第七の三の1〜12のいずれかに該当する患者を加算1で正しく算定すること、加算2を漫然と算定しないこと、特に「その他の重症な状態」での算定が5割を超えないかの月次確認が重要です。2024年度改定の減算ルール(5割以上で210点へ減算)を回避する観点でも、加算1の取りこぼしを減らすことが鍵となります。
月次・四半期で算定状況を経営層がモニタリングすることで、改善ポイントが明確になります。具体的には、「救急車受入件数×救急医療管理加算算定率」「加算1と加算2の比率」「『その他の重症な状態』の患者割合」「査定率」の4指標を経営会議の定例議題に組み込みます。算定実態を見える化することで、医事課単独の業務から経営層関与の戦略課題へと位置づけが変わります。
算定精度の差が、年間でどの程度の経営差を生むかを試算します。仮に、救急からの入院が年間1,000件ある中規模急性期病院で試算します。
ケース | 加算1の構成 | 加算2の構成 | 年間収益貢献 |
|---|---|---|---|
ケース1:すべて加算1 | 100%(1,000件) | 0% | 約7,350万円 |
ケース2:すべて加算2 | 0% | 100%(1,000件) | 約2,940万円 |
ケース3:加算1(50%)+加算2(50%)の混合 | 50%(500件) | 50%(500件) | 約5,145万円 |
ケース4:加算2の50%が「その他の重症」で減算対象 | 50%(500件) | 50%(500件・ペナルティにより全件210点に減算) | 約4,410万円 |
【算定根拠】
・加算1:1,050点×7日=7,350点=73,500円/件
・加算2:420点×7日=2,940点=29,400円/件
・加算2(減算後):210点×7日=1,470点=14,700円/件
ケース3とケース4を比較すると、減算ペナルティに該当しただけで年間約735万円の収益差が発生します。加算1と加算2の使い分け、症状詳記の運用、JCS・NYHA記録の徹底が、年間数千万円規模の経営差を生むことがわかります。
なお、本セクションの試算は「年間1,000件の救急入院」を前提とした全体収益への影響試算です。「救急受入1件あたり」の利益を分解する視点(DPC単価・在院日数・算定漏れの3変数)については、関連記事をご参照ください。
▶ 救急受入1件あたりの利益分解について詳しく:
救急受入1件あたりの利益を分解する|DPC単価・在院日数・算定漏れの3変数
救急医療管理加算は、以下の経営指標と密接に連動します。
関連指標 | 救急医療管理加算との関係 |
|---|---|
救急応需率 | 救急受入件数の増加 → 加算算定件数の増加 |
病床稼働率 | 救急からの入院増加 → 稼働率向上と加算収益増 |
救急補正係数(DPC) | 救急医療入院症例の評価。算定患者層が重なる |
入院単価 | 加算による1日あたり収益の上乗せ |
DPC収益 | 救急医療入院症例の入院初期2日間の医療資源投入量評価 |
これらを統合的に管理することで、救急受入を起点とした病院経営の好循環を生み出すことができます。
2026年度診療報酬改定(2026年6月1日施行、本体改定率+3.09%)では、救急医療管理加算(A205)そのものの大幅な改編はないものの、同加算を含む救急評価の体系全体が「実績ベース」に再編されました。急性期病院一般入院基本料(A・B)の新設、救急外来医学管理料の新設、救急患者連携搬送料の見直し、ICU施設基準への救急搬送実績要件化など、複数のレイヤーで救急受入実績が経営インパクトに直結する設計になっています。
▶ 急性期病院A・Bの要件(救急1,500台ライン)について詳しく:
急性期病院の生き残り戦略!新「急性期病院一般入院基本料」と救急搬送実績への対応
▶ 下り搬送・救急患者連携搬送料の活用について:
【令和8年度改定対応】「下り搬送」拡充を収益に変える、急性期病院の救急病床マネジメント
▶ 2026年度改定の経営判断について(セミナーレポート):
【セミナーレポート】2026年度改定!急性期病院の生存ライン「救急1500台・全麻500件」と賃上げ倒産の回避策
救急医療管理加算(A205)は、重篤な救急搬送患者の受入コストを経済的に評価する重要な加算であり、救急医療体制を維持する病院の収益基盤の一つです。加算1(1,050点)と加算2(420点)では患者状態と点数が大きく異なり、適切な算定には患者状態の正確な評価(JCS・NYHA等の指標による)が必要です。
2024年度改定で算定要件の厳格化が進み、特に加算2の「その他の重症な状態」5割以上での半減ルールにより、医事課・救急医療部門・経営層の連携による運用見直しが経営の生命線となりました。年間1,000件の救急入院がある中規模病院では、算定精度の差で年間数千万円規模の収益差が発生します。
救急医療管理加算の算定件数は、単なる収益指標ではなく、自院の救急受入体制・症状詳記運用・経営層と現場の連携状況を映す「救急組織能力の鏡」です。月次モニタリングと運用整備を通じて、救急医療の質と経営の両立を実現していくことが求められます。
算定可能です。救急医療管理加算は、施設基準を満たせば三次救急医療機関(救命救急センター含む)でも届出可能です。
加算1は対象状態が別表第七の三の1〜12として明確に列挙されており、客観指標(JCS・NYHA等)で立証しやすい一方で、加算2は「準ずる状態」「その他の重症な状態」と幅広く解釈可能です。ただし、2024年度改定で「その他の重症な状態」の割合が5割以上の場合は減算対象になるため、安易な加算2の選択は避けるべきです。
別表第七の三の1〜12に該当しない、医師判断で重症と認められる状態です。
【具体例】
緊急輸血を要する状態
整形外科的緊急手術(開放骨折以外) など
ただし運用に大きなばらつきがあり、2024年度改定で減算措置が導入されました。
JCS(意識レベル)、NYHA(心機能)、FiO2(呼吸機能)、Burn Index(熱傷)等の指標は明示されていますが、各疾患・状態ごとの定量的基準はまだ整備の途上です。今後の改定で明確化が進む方向にあります。
救急部門と医事課の連携不足、患者状態の記録不足、JCS・NYHA等の数値記録漏れが主な原因です。電子カルテとレセプトシステムの連携整備、救急搬入時の重症度評価の標準化が解決策になります。
加算2を算定する患者のうち「その他の重症な状態」(別表第七の三の十三)の割合を、直近6か月で5割未満に抑える必要があります。月次でモニタリングし、5割に近づいた場合は加算1への適正化(別表第七の三の1〜12に該当する患者を加算1で正しく算定すること)や算定の見直しを行います。
「年間救急入院件数 × 加算1の比率 × 73,500円 + 年間救急入院件数 × 加算2の比率 × 29,400円」が基本式です。減算リスクがある場合は、ペナルティ対象となった場合は、加算2の全件を14,700円(210点×7日)で計算します。月次の算定実績データを医事課から経営層へ報告する仕組みが推奨されます。
2026年度改定でA205そのものの大幅な変更はありませんが、A205を含む救急評価の体系全体が「実績ベース」に再編されました。急性期病院A・Bの新設、救急外来医学管理料の新設等の周辺加算の変化と一体で経営判断する必要があります。詳細は関連記事をご参照ください。
本記事は、令和8年度診療報酬改定(2026年6月1日施行)の以下5つの公式PDFを参照しています。
1. [厚生労働省「医科点数表」(令和8年告示第69号)]
└ 参照箇所:第1章第2部第2節 A205 救急医療管理加算
2. [厚生労働省「基本診療料の施設基準等」(令和8年告示第70号)]
└ 参照箇所:別表第七の三「救急医療管理加算1の対象患者の状態」
3. [厚生労働省「医科点数表 留意事項通知」(令和8年保医発0305第6号)]
└ 参照箇所:A205 救急医療管理加算 留意事項
4. [厚生労働省「診療報酬明細書 記載要領」(令和8年保医発0327第2号)]
└ 参照箇所:別添1 A205関連の記載要領
5. [厚生労働省「令和8年度診療報酬改定の概要」全体概要版]
└ 参照箇所:重点的な対応が求められる分野(救急医療・小児周産期医療)
執筆・編集・監修
執筆・編集:ドクターズプライムワーク編集部
「救急車のたらい回しをゼロにする」をビジョンに、100病院を超える支援実績を持つ救急改善プラットフォーム「ドクターズプライムワーク」を運営しています。現状を可視化する「データ分析」と、病院が主体となって医師を確保できる「採用プラットフォーム」を一体で提供し、「自分らしく選べる医療をすべての人に」届けるための基盤を構築しています。 当編集部では、医療機関の変革に伴走する中で得られた現場特有の課題や解決のヒントを整理し、病院運営の質を高める有益な情報を発信しています。
監修:田 真茂(株式会社ドクターズプライム 代表取締役・医師)
聖路加国際病院救命救急センターで当直帯責任者を務めた後、2017年に株式会社ドクターズプライムを創業。詳細プロフィールは、会社紹介ページの監修・運営者情報をご覧ください。
参考情報:厚生労働省、消防庁、中医協、四病協資料、自社実績データ



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