更新日:
2026/5/20

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病床稼働率とは何か
病床稼働率の計算方法は?
病床利用率との違いは何か
病床稼働率の適正値・全国平均はどのくらいか
病床稼働率が低い病院の共通点は何か
病床稼働率を改善するにはどうすればよいか
項目 | 内容 |
|---|---|
定義 | 運用病床数に対して、入院患者がどれくらいの割合で入院していたかを示す指標 |
計算式 | 病床稼働率(%)= (在院患者延数+退院患者延数)÷(運用病床数×日数)×100 |
病床利用率との違い | 同日入退院をどう数えるか。病床稼働率は2名、病床利用率は1名で計算 |
全国平均(参考値) | 病床利用率ベースで一般病床69.0%(2022年) |
適正値の目安 | 急性期病院で85〜90%が一般的 |
経営インパクト | 病床稼働率10ポイント差で年間数千万円〜億単位の収益差 |
主な低下要因 | 新患減少、平均在院日数の長期化、地域連携の弱さ、救急からの入院減少 |
病床稼働率は、病院経営の最重要指標の一つです。低い場合は、新患を増やす(特に救急からの入院を増やす)、平均在院日数を適正化する、地域連携を強化する、退院・転院支援を整備するという正攻法での改善が必要です。
在院日数の引き伸ばしは禁じ手であり、診療報酬上のペナルティや医療の質低下を招きます。
病床稼働率とは、運用病床数に対して、入院患者がどれくらいの割合で入院していたかを示す指標です。
病床稼働率が高いことは、ベッドを効率的に運用していることを表します。病院経営において、病床稼働率は以下の3つの観点で重要な指標となります。
収益性:稼働率の高低が入院収益に直結
医療資源の効率性:固定費(看護師人件費、設備費)に対する活用度
地域医療への貢献:必要な患者を必要な時に受け入れられているか
病床稼働率の計算式は、年単位・月単位で以下のように算出します。
病床稼働率(%)=(年間在院患者延数+年間退院患者延数)÷(運用病床数×365)×100うるう年の場合は365を366に置き換えます。
病床稼働率(%)=(月間在院患者延数+月間退院患者延数)÷(運用病床数×日数)×100機関によっては、計算過程を簡便化するために以下の表記を用いる場合もある。
病床稼働率(%)=入院延べ患者数 ÷(運用病床数 × 日数)× 100※ここでの「入院延べ患者数」は、各日の24時時点の在院患者数に当日の退院患者数を加えた合計を、対象期間で積み上げた数を指す(群馬大学医学部附属病院などが用いる定義)。同じ病床で同日に退院と新規入院があった場合、その日は2名分としてカウントされる。
300床の急性期病院で、1ヶ月(30日)の実績が以下の場合:
月間在院患者延数:7,800人
月間退院患者延数:350人
運用病床数:300床
→ 病床稼働率 =(7,800 + 350)÷(300 × 30)×100 = 90.6%
なお、計算結果が 100%を超える ことがあります。これは病床稼働率が「同日入退院」を2名分カウントするためで、ベッドの実態としての効率性を示す数字として解釈します。
病床稼働率と類似した指標に「病床利用率」があります。両者の違いを理解することが重要です。
病床利用率(%)=年間在院患者延数 ÷(運用病床数×365)×100項目 | 病床稼働率 | 病床利用率 |
|---|---|---|
在院患者の数え方 | 24時時点の在院患者数 + 当日の入退院患者数 | 24時時点の在院患者数のみ |
同日入退院の扱い | 退院数として1名加算される(同じベッドに翌日まで残る患者がいれば計2名分カウント) | 24時時点に在院していないためカウントされな |
100%超過 | あり得る | あり得ない |
厚労省の経営状況把握 | 参考 | こちらを使用 |
病床運営の実態把握 | より実態を反映 | 24時時点のみで把握 |
病床稼働率の方がベッド運営の実態に沿った指標であり、「同日入退院がある病床は2名と計算されるので100%を超えることもある」という特性が、ベッドの稼働回転を示しています。
ただし、厚労省は公的医療機関の経営状況を把握する際は 病床利用率 を使用しているため、外部比較を行う際は両者を区別して扱う必要があります。
厚生労働省「令和4(2022)年医療施設(動態)調査・病院報告の概況」によると、全国的な病床利用率の平均値は以下の通りです。
全国平均(全病床):75.3%
一般病床の平均:69.0%
ただし、診療科や病院機能によって差が大きいことに注意が必要です。
各病院のQI(医療の質指標)公開データなどから、病院機能別の参考値は以下のように整理できます。
大学病院・特定機能病院:85〜95%
急性期病院(中規模・地域中核):85〜90%
一般病院:70〜85%
療養病床:75〜90%
回復期リハビリテーション病棟:80〜95%
例えば群馬大学医学部附属病院は、令和5年度の目標病床稼働率を 88% として設定しており、ベッドコントロールを徹底しています。
「100%に近いほど良い」とは言えません。病床稼働率が高すぎる場合、以下のリスクがあります。
救急車の受け入れ拒否(満床による応需率低下)
緊急入院への対応余力の喪失
在院日数の引き伸ばし圧力(後述の禁じ手リスク)
一般的な急性期病院では、85〜90% が適正範囲とされ、救急患者の緊急入院に対応できる余裕を持たせることが重要です。
入院につながる初診患者が減ると、稼働率は構造的に下がります。背景には:
地域人口減少
競合病院の存在
病院の機能・専門性が地域に伝わっていない
紹介率の低下
「在院日数を伸ばせば稼働率が上がる」と考えるのは禁じ手です。診療報酬上のペナルティ(DPC係数の低下等)に加え、医療の質低下を招きます。
救急応需率が低い病院では、救急からの緊急入院が減ります。救急からの入院は予定入院と比べて在院日数が長くなる傾向があり、入院単価・病床稼働率の双方に大きな影響を与える要素になります。
入院した患者が適切なタイミングで退院・転院できないと、ベッドが「治癒済み患者」で埋まり、新規入院を受け入れられなくなります。これは見た目の稼働率は高くなりますが、収益性は低下します。
紹介・逆紹介の流れが弱いと、患者の出入りが滞ります。地域連携室の機能不足、近隣クリニックとの関係性、地域包括ケアシステムへの参加状況が問われます。
最も本質的な改善策です。具体的には:
病院機能・医師の専門性・地域性の明確化
「自院はどんな初診患者を求めるのか」の明示
救急からの入院を増やす(救急応需率改善との連動)
紹介率の向上
予定入院(手術等)の確保
特に救急からの入院増加は、病床稼働率と救急応需率を同時に押し上げる相乗効果があります。
「短すぎる」も「長すぎる」も問題です。DPC(包括医療費支払制度)の入院期間Ⅰ・Ⅱを意識した運用が重要です。
入院期間Ⅰ以内:1日あたりの包括点数が最も高い
入院期間Ⅰを超えると点数が一段下がり、入院期間Ⅱを超えるとさらに下がる
入院期間Ⅲを超えると出来高算定に切り替わり、1日あたりの病院収益は構造的に低下する
「平均在院日数」を意識した適正な期間で退院させることが、DPC病院の収益性向上の鍵
病床稼働率を安定させるには、救急患者の緊急入院に偏ることなく、予定入院を増やし、季節的な変動を乗り越えることが大切です。
救急からの入院:急性期病院の収益の柱
予定入院:稼働率の安定化に必須
両者のバッファ確保:突発的な救急増にも対応可能な余裕
地域連携部門の機能強化により、退院がスムーズになります。
退院支援看護師・MSWの配置
回復期病院・療養型病床との連携協定
介護施設・在宅医療との連携
早期退院カンファレンスの定例化
院内のベッド配分を最適化します。
病院運営会議・診療科会議での月次モニタリング
空床管理システムの導入
同日入退院の促進(午前退院・午後入院)
緊急入院用バッファベッドの確保
群馬大学医学部附属病院のように、明確な目標値を設定して経営会議で定点観測することが効果的です。
病床稼働率は、以下の経営指標と密接に連動します。
関連指標 | 病床稼働率との関係 |
|---|---|
救急応需率 | 救急からの入院増加 → 稼働率向上 |
平均在院日数 | 適正化により稼働率と収益性が両立 |
DPC収益 | 包括点数と在院日数の最適化が連動 |
救急補正係数 | 救急医療入院症例の質・量を評価 |
救急医療管理加算1 | 重症患者受入と稼働率の連動 |
紹介率・逆紹介率 | 地域連携の強さが稼働率に直結 |
入院単価 | DPC適正運用で1日あたり収益向上 |
これらを統合的に管理することで、病院経営の好循環を生み出すことができます。
病床稼働率が低いとき、「在院日数を伸ばせば稼働率が上がる」と考えがちですが、これは禁じ手です。
DPC(包括医療費支払制度)では、入院期間が長くなるほど1日あたりの包括点数が下がります。具体的には:
入院期間Ⅰ:平均在院日数の25パーセンタイル値までの期間。1日あたりの包括点数が最も高い
入院期間Ⅱ:入院期間Ⅰを超え、平均在院日数までの期間。1日あたりの包括点数は中程度
入院期間Ⅲ:入院期間Ⅱを超え、「平均在院日数+2SD」または「30の整数倍」までの期間。
1日あたりの包括点数は最も低い 入院期間Ⅲを超えた日からは、DPC包括算定ではなく出来高算定に切り替わる
つまり、在院日数を伸ばすほど1日あたりの収益は減るため、トータルでは収益悪化につながります。
平均在院日数は、DPC機能評価係数の評価対象であり、長期化すると係数が低下し、ベース収益も減少します。
医学的に必要ない入院延長は、患者のQOL低下、医療資源の無駄使い、地域医療への悪影響を招きます。
病床稼働対策は、場当たり的な対応ではなく、新患を増やすこと、平均在院日数を適正化すること、地域連携を強化することという正攻法で取り組むべきです。
A. 病院の機能・規模により異なりますが、急性期病院では 85〜90% が適正範囲です。100%に近づけすぎると救急受入の余力がなくなり、応需率低下のリスクがあります。
A. 病床稼働率を内部経営判断に、病床利用率を外部比較に使い分けるのが一般的です。病床稼働率の方が実態に沿った指標です。
A. 短期では「救急からの入院増加」、中期では「平均在院日数の適正化」、長期では「地域連携の強化と新患獲得」です。これらは互いに連動します。
A. 計算上は上がりますが、禁じ手です。DPC機能評価係数の低下、1日あたり収益の減少、医療の質低下を招きます。
A. 季節変動を見越して、夏場・冬場のピーク時にバッファを確保し、閑散期には予定入院を計画的に増やすことが重要です。
A. 救急応需率を改善すると救急からの入院が増え、結果として病床稼働率も向上します。両指標は連動的に管理すべきです。
執筆・編集・監修
執筆・編集:ドクターズプライムワーク編集部
「救急車のたらい回しをゼロにする」をビジョンに、100病院を超える支援実績を持つ救急改善プラットフォーム「ドクターズプライムワーク」を運営しています。現状を可視化する「データ分析」と、病院が主体となって医師を確保できる「採用プラットフォーム」を一体で提供し、「自分らしく選べる医療をすべての人に」届けるための基盤を構築しています。 当編集部では、医療機関の変革に伴走する中で得られた現場特有の課題や解決のヒントを整理し、病院運営の質を高める有益な情報を発信しています。
監修:田 真茂(株式会社ドクターズプライム 代表取締役・医師)
聖路加国際病院救命救急センターで当直帯責任者を務めた後、2017年に株式会社ドクターズプライムを創業。詳細プロフィールは、会社紹介ページの監修・運営者情報をご覧ください。
参考情報:厚生労働省、消防庁、中医協、四病協資料、自社実績データ



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