更新日:
2026/5/14

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keyboard_arrow_right※今回の記事は厚労省が発表している医師偏在対策についてから一部を抜粋し編集した記事となっています。
現在、多くの都市部総合病院において、経営の根幹を揺るがす深刻な課題となっているのが、中堅・若手医師の流出です。特に30代から40代の働き盛りである医師が、過酷な当直や救急対応を伴う病院勤務を離れ、自由診療(美容医療等)や比較的負担の少ないプライマリ・ケアを主軸とした「無床診療所(クリニック)」を開業、あるいはそこへ転職するケースが後を絶ちません。
この背景には、都市部における医療ニーズの増大と、医師個人のワークライフバランスへの意識の高まりがあります。しかしこの「開業志向」の加速は、地域の急性期医療や救急医療を担う基幹病院において、常勤医の不足、ひいては救急受け入れ困難や診療機能の縮小という形で、目に見える影響を及ぼし始めています。
厚労省の資料によれば、医師の分布には地域ごとに大きな偏りがあり、特に都市部を中心とした『外来医師多数区域』(外来医師偏在指標が上位33.3%の二次医療圏)における外来医療機能の偏在が問題視されています」これまでは「どこで、どのような形で開業するか」は医師の自由に委ねられてきましたが、この自由度が地域全体の医療バランスを損ねているという現状分析がなされています。
こうした状況を是正するため、国は「外来医師過多区域(医師が多い地域)」における無床診療所の新規開設に対し、実質的な抑制策とも取れる新たな規制を強化しています。

外来医師過多区域への対応とは、都市部等へのクリニック集中を抑制し、地域で真に必要とされる医療機能(急性期・救急・へき地医療等)へ医師を誘導するための政策です。具体的には、以下の3つのステップが導入されています。



参照:医師偏在対策について
事前届出制の導入:外来医師多数区域で無床診療所の新規開業を希望する者は、原則として開業の6か月前までに都道府県知事に対しその計画を届け出る必要があります
地域医療への協力要請と勧告:届け出に対し都道府県知事は、その地域で不足している医療機能(例:夜間・休日診療、救急医療、初期救急、学校医への協力等)を担うよう、「協議」の場を通じて協力要請を行います
公表および実効性の担保:正当な理由なく要請に応じない場合や、協議が調わないまま開設した場合には、その旨を公表したり再度の協力勧告を行ったりできる仕組みが構築されています
つまり今後は「医師が多いエリアで、自分の好きな診療だけを行う」というスタイルの開業が物理的・心理的に困難になることを意味しています。外来医師過多区域で『地域で不足する医療機能の提供』を要請されたまま新規開設した場合、保険医療機関の指定期間は通常の6年でなく『3年以内』とされる仕組みが整備されています。さらに、3年後の更新時にも勧告に従わない等の場合、指定期間が『2年』に短縮される類型も示されており、要請対応の積み重ねが経営の不確実性に直結する制度設計となっています。
📌 編集部ピックアップ
過去に配信されたセミナーで、ある医療経営の専門家は2026年改定について「本年度の改定は戦略なき開業を淘汰する改定だ」と指摘しています。さらに同専門家は「病院が問われているのは地域の医療サイクルをどう設計するかという役割だ」とも語っており、病院が"開業を育てる"視点を持ち、若手独立を戦略的に支援することで将来の紹介ネットワークを構築する重要性を説いています。開業規制強化は、病院と診療所を対立構造ではなく共創パートナーとして再設計する契機ともいえそうです。
この制度変更は、現場の医師、特に将来的な開業を視野に入れていた層に対し、無視できないインパクトを与えます。
これまでは「病院勤務で疲弊したら、都市部で開業すればよい」という安易なセーフティネットが存在していました。しかし今後は開業時に「地域医療(救急や夜間対応)への協力」という重い条件が付随することになります。これは開業後も病院勤務時代に近い責任を負い続ける可能性を示唆しており、「安易な開業」によるメリットを大きく損なわせる要因となります。
ここで生じる変化は以下の3点に集約されます。
開業の先送り・断念:開業に伴う初期投資とリスクに加え、行政からの協力勧告という運用上の負担を天秤にかけ、勤務医としてのキャリアを継続する選択肢が再評価されます
働き方の多様化(フリーランス・非常勤の増加):一つの組織に縛られたくない医師たちは、リスクのある「開業」ではなく、複数の医療機関で非常勤として働く、あるいは特定の専門スキルを武器にスポットで活躍する「フリーランス」的な働き方を模索し始めます
QOLとキャリアの両立への渇望:開業を控えるからといって、従来の過酷な働き方に戻るわけではありません。医師は、より「柔軟な働き方」や「タスクシフトによる負担軽減」が実現されている病院を、これまで以上にシビアに選別するようになります
この制度変更を「追い風」に変えるためには、病院側は「開業を思いとどまった、あるいは迷っている優秀な医師」をターゲットとした攻めの人事戦略を展開する必要があります。
医師事務作業補助者の増員や看護師への特定行為の委譲を加速させ、「この病院なら、開業しなくても専門性に集中でき、私生活も守れる」という環境を可視化してください。
📌 編集部ピックアップ
ドクターズプライム編集部の取材に応じたある2次救急病院では、救急専門医副院長着任後1年で救急搬送件数が大幅に伸び、2年で当初の約1.9倍に達するまで応需体制を立て直しました。成功の核は、ファーストタッチ担当医の配置、毎朝の日報での振り返り文化、そして診療看護師によるタスクシフトだったとのことです。同院副院長は「1人専任のファーストタッチ担当を置くのがかなり再現性が高い」と語っており、働きやすさは待遇ではなく運用設計で生まれる、という示唆が得られる事例です。
開業を迷っている医師やフリーランス医師にとって、救急外来の当直やスポット勤務は高単価かつスキル維持に直結する魅力的な現場です。ドクターズプライムワーク等のプラットフォームを積極的に活用し、自院の救急体制を「常勤医の自己犠牲」ではなく、「意欲ある非常勤医師との共創」によって維持するモデルへ転換してください。これにより常勤医の離職を防ぐとともに、優秀な外部医師との接点(採用候補者プール)を作ることが可能になります。
📌 編集部ピックアップ
ある2次救急病院では、外部救急専門医の導入により日勤帯の応需率がほぼ100%に達し、月平均の救急入院も2桁台まで積み上がり、初年度で数千万円規模の増収を実現しました。同院の事務部長はドクターズプライム編集部の取材に対して「導入費用はもはやコストではなく確実な投資だった」と振り返っています。外部医師との定期的な接点は、単なる欠員補充ではなく、将来の採用候補者プールを形成する中長期の人事投資としても機能しうるという視点です。
開業を検討している中堅医師に対し、「分院長候補」としてのポストや、将来的な「地域連携クリニック」としての独立支援を病院側から提案するなど、敵対的な流出ではなく「戦略的なネットワーク化」を人事制度に組み込むことが有効です。
今回の「外来医師過多区域」における規制強化は、一見すると医師の自由を奪うものに見えるかもしれません。しかし病院経営の視点に立てば、これは流出しがちだった優秀な人材を、再び病院に引き留めるための絶好の機会です。
「安易な開業」のハードルが上がったことを前提に、医師のキャリア相談に乗る
救急や当直の負担を「ドクターズプライム」等の外部戦力で最適化し、常勤医の定着率を高める
タスクシフトを推進し、勤務医としての「働きやすさ」をブランド化する
これらのアクションを今日から始めることで、都市部における医師獲得競争の勝者となり、ひいては地域の急性期医療を守り抜く強固な組織を構築できるはずです。制度の変更を単なるリスクと捉えず、自院の採用力を強化するためのレバレッジとして活用してください。
執筆・編集・監修
執筆・編集:ドクターズプライムワーク編集部
「救急車のたらい回しをゼロにする」をビジョンに、100病院を超える支援実績を持つ救急改善プラットフォーム「ドクターズプライムワーク」を運営しています。現状を可視化する「データ分析」と、病院が主体となって医師を確保できる「採用プラットフォーム」を一体で提供し、「自分らしく選べる医療をすべての人に」届けるための基盤を構築しています。 当編集部では、医療機関の変革に伴走する中で得られた現場特有の課題や解決のヒントを整理し、病院運営の質を高める有益な情報を発信しています。
監修:田 真茂(株式会社ドクターズプライム 代表取締役・医師)
聖路加国際病院救命救急センターで当直帯責任者を務めた後、2017年に株式会社ドクターズプライムを創業。詳細プロフィールは、会社紹介ページの監修・運営者情報をご覧ください。
参考情報:厚生労働省、消防庁、中医協、四病協資料、自社実績データ
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