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【令和8年度診療報酬改定】「摂食嚥下機能回復体制加算」要件緩和のポイントと、誤嚥性肺炎のボトルネック解消法

【令和8年度診療報酬改定】「摂食嚥下機能回復体制加算」要件緩和のポイントと、誤嚥性肺炎のボトルネック解消法

更新日:

2026/6/24

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※本記事は、厚生労働省「令和8年度診療報酬改定について」 のうち、摂食嚥下機能回復・経腸栄養管理に関する見直しを扱うパート(公益社団法人日本栄養士会栄養NEWS ONLINE の整理を参照)から、編集部にて再構成しています。

高齢救急におけるボトルネックと「誤嚥性肺炎」の課題

救急医療の現場において、高齢者の誤嚥性肺炎による緊急搬送は大きな割合を占めています。急性期治療を終えても摂食嚥下機能が回復しない患者様の転棟や退院調整は難航しやすく、救急受け入れのボトルネック、いわゆる「出口問題」になりがちです。本記事では、令和8年度の診療報酬改定における「摂食嚥下機能回復体制加算」および「経腸栄養管理加算」の見直しのポイントを解説するとともに、救急領域の改善が病院経営に与える影響と具体的なアクションについてお伝えします。

急性期治療を終えて肺炎そのものが軽快しても、摂食嚥下機能が十分に回復しない患者様の転棟・退院調整は難航しやすい傾向にあります。後方病床や施設への移行がスムーズに進まないことは、急性期病床の滞在日数を長期化させ、結果として新たな救急患者様の受け入れを制限せざるを得ない「出口問題」の要因となります。

高齢者救急の構造的な難しさは、「入口・院内・出口」という3層で考えると整理しやすくなります。入口では独居高齢者や高齢者福祉施設からの119番通報が増加しており、院内では認知症・誤嚥性肺炎などの複合的な疾患を抱える患者様の在院日数が長期化しやすく、出口では転院先・後方施設の受け入れが整わないために病床が滞留するという構造です。誤嚥性肺炎への適切な介入は、この3層すべてに好影響をもたらす可能性があります。病院全体の病床稼働率や経営効率を最適化するためには、誤嚥性肺炎患者様に対する適切な初期治療と早期の嚥下リハビリテーションへの移行が、非常に重要なテーマとなります。

📌 編集部ピックアップ

ある3次救急・救命救急センターの副院長は「高齢者救急はその一部の人たちが頑張ってもダメで、病院として一丸となって方針を決めて動いていくことが大事」と語っています。出口となる転院ネットワークの整備と、入口となる救急受け入れ体制の強化は、どちらが欠けても機能しないというのが現場の実感のようです。

令和8年度診療報酬改定のポイント:算定要件の緩和と明確化

質の高い摂食嚥下機能回復を推進するため、令和8年度の診療報酬改定では要件の一部が緩和・明確化されました。チーム医療の推進や栄養管理体制の構築が、これまで以上に評価されやすい仕組みへと変更されています。具体的には以下の2点が重要なポイントです。

最初の説明文として、「摂食嚥下機能回復体制加算1及び2の施設基準のうち、摂食嚥下支援チームの言語聴覚士の専従要件を見直し、専任の従事者でも可とする。」と記載されています 。 その下には【摂食嚥下機能回復体制加算】の施設基準に関する「現行」と「改定後」の比較テキストが並んでいます 。 「現行」の「1 摂食嚥下機能回復体制加算1に関する施設基準 (1) (摂食嚥下支援チームの構成員)」の「イ」の項目において、「専任の常勤看護師又は専従の常勤言語聴覚士」と記載されている箇所が、「改定後」では「専任の常勤看護師又は専任の常勤言語聴覚士」へと下線付きで変更・強調されています 。

① 摂食嚥下機能回復体制加算1・2における言語聴覚士の要件緩和

これまで摂食嚥下支援チームの構成要件として、常勤言語聴覚士は「専従」であることが求められていました。しかし今回の改定により、これが「専任」へと緩和されました。これにより、言語聴覚士が他の業務と兼任しながらチームに参画しやすくなり、算定のハードルが下がります。

また、療養病棟入院基本料を算定する病棟が対象となる「摂食嚥下機能回復体制加算3」についても、これまで実績として算入できなかった「経腸栄養から経口摂取へ回復した患者」が、加算1・2と同様に実績として算入可能となりました。療養病棟における回復実績の評価範囲が広がり、加算取得のハードルが下がる方向の見直しといえます。

説明文には、「療養病棟で、栄養摂取に係る適切なプロセスを経て経腸栄養を実施する場合に算定可能な経腸栄養管理加算について、当該病院へ入院前から中心静脈栄養で管理されていた患者は、その期間を問わず加算の算定を可能とする。」と記載されています 。続けて、「また、経口摂取が不可となった場合に、栄養摂取方法の決定に係る適切なプロセスを経て、中心静脈栄養ではなく経腸栄養を選択した場合についても、加算の算定が可能であることを明確化する。」と記されています 。

② 療養病棟における「経腸栄養管理加算」の要件明確化

② 療養病棟における「経腸栄養管理加算」の対象患者要件の見直し 改定前は、入院前から経腸栄養が実施されていた患者は算定対象外でした。改定後は、入院前から又は入院後2週間以上にわたり中心静脈栄養による栄養管理を実施していた患者について、経腸栄養への移行を目的とする場合に算定可能であることが明確化され、急性期からの適切な栄養管理プロセスを経た患者の経腸栄養への移行が、より正当に評価される運用となりました。
これにより、急性期からの適切な移行プロセスを経た栄養管理が正当に評価されるようになります。

これらの見直しは、現場の実態に即した運用を後押しする内容といえます。一方で、加算の算定要件が緩和されたとしても、実際に患者様の機能回復につなげ、病床の回転率を高めるためには、その前提となる救急段階での対応の質が問われます。

出典:厚生労働省「令和8年度診療報酬改定について」(保険局医療課・全体概要版/関連通知)

現場へ与える影響:初期治療とトリアージの重要性

今回の要件緩和により、チーム医療を通じた機能回復へのアプローチは、多くの病院様で導入しやすくなりました。しかし、これらの加算を算定し後方病床の回転率を高めるためには、大前提となる「救急外来(ER)からの適切なトリアージ」と「初期治療の質」が問われます。

救急搬送された段階で全身状態を迅速に安定させ、いかに早く嚥下リハビリなどの回復プロセスに乗せられるかが、その後の経過を大きく左右します。急性期での対応が遅れれば、患者様のADL(日常生活動作)や嚥下機能の低下を招き、結果として療養病棟への転棟後もリハビリが難航することになります。

つまり、救急段階での初動の質が、後方病床の回転率や病院全体の経営効率に直結します。チーム医療を最大限に機能させるためには、入り口である救急医療の強化が欠かせない要素となります。

📌 編集部ピックアップ

ある関東圏の2次救急病院では、応需をためらわせる院内の5つの要因(専門外・混雑・病床なし・複雑な患者背景・院内からの圧力)のうち、「院内圧力」は経営層が「受ける」という方針をドーンと掲げることで解消できると語られていました。高齢者救急をはじめとするグレーゾーン症例の受け入れは、マインドセットの転換と組織的な方針の明確化が、最初の一歩になるといえます。

救急専任医師の配置がもたらす4つのメリット

救急搬送の入り口であるERの対応力を高め、誤嚥性肺炎をはじめとする頻発疾患を的確に処理できる体制を構築することは、病院全体の病床管理(出口戦略)の最適化に繋がります。そこで重要になるのが、質の高い救急対応を可能にする医師の確保です。

救急の最前線で的確な初期対応を行える医師が配置されることで、以下のような好循環が期待できます。

  • 誤嚥性肺炎等の患者様に対する迅速かつ適切な初期治療の実現

  • 早期離床・早期リハビリテーション介入へのスムーズな移行

  • 摂食嚥下支援チームの活動最大化による算定要件のクリア

  • 急性期病床の平均在院日数短縮と、病院全体の収益力向上

📌 編集部ピックアップ

ある埼玉県の2次救急病院では、救急応需率が50%未満という深刻な状況から、外部医師活用・診療マニュアル整備・看護師専属化・振り分けルール化を同時推進したことで、年間受入数が約1.6倍まで改善したといいます。「この症例ならこの検査セットを入れる」というマニュアル整備が外部医師でも迷わず診療できる環境をつくり、初期治療の質の均一化にもつながったとのことです。

そこで有効な解決策となるのが、ドクターズプライムワークの活用です。ドクターズプライムワークをご活用いただくことで、「断らない救急」と「病棟へのスムーズな連携」を実現できる優秀な医師を安定的に確保することが可能になります。常勤医の疲弊を防ぎながら救急受け入れ体制を強化し、摂食嚥下支援チームが最大限に機能できる環境を整えることが、病院全体の収益力向上に直結します。

まとめ:加算の恩恵を最大化するには「入り口の質」が鍵

令和8年度の診療報酬改定における「摂食嚥下機能回復体制加算」等の要件緩和は、病院経営にとって前向きな見直しといえます。しかし、その恩恵を最大限に享受するためには、ボトルネックとなりやすい救急受け入れ体制の強化が重要です。

制度改定が評価する機能回復の成果は、救急段階での初動の質なしには生まれません。優秀な医師の確保を通じて入り口の質を高め、チーム医療による円滑な回復プロセスを構築すること——これが、今後の安定した病院経営の鍵となります。誤嚥性肺炎をはじめとする高齢者救急への適切な対応力を磨くことは、単なる加算の算定機会の拡大にとどまらず、地域から選ばれる急性期病院としての信頼を積み上げることにもつながります。

よくある質問

Q. なぜ誤嚥性肺炎が救急受け入れのボトルネックになるのですか?
A. 急性期治療で肺炎が軽快しても摂食嚥下機能が回復しない患者は転棟・退院調整が難航し、急性期病床の在院日数が長期化するためです。これが新規救急患者の受け入れを制限する「出口問題」となり、入口・院内・出口の3層すべてに影響します。

Q. 摂食嚥下機能回復体制加算の要件はどう緩和されましたか?
A. 加算1・2における常勤言語聴覚士の要件が「専従」から「専任」へ緩和され、他業務と兼任しながらチームに参画しやすくなりました。また加算3(療養病棟対象)では、これまで算入できなかった「経腸栄養から経口摂取へ回復した患者」が実績として算入可能になりました。

Q. 経腸栄養管理加算の対象患者要件はどう変わりましたか?
A. 改定前は入院前から経腸栄養を実施していた患者は算定対象外でしたが、改定後は入院前から又は入院後2週間以上中心静脈栄養を実施していた患者について、経腸栄養への移行を目的とする場合に算定可能であることが明確化されました。

Q. 加算要件が緩和されれば算定できるようになりますか?
A. 要件緩和だけでは不十分です。加算を算定し後方病床の回転率を高めるには、前提として救急外来からの適切なトリアージと初期治療の質が問われます。救急段階で全身状態を迅速に安定させ、早く嚥下リハビリに乗せられるかがその後の経過を左右します。

Q. 誤嚥性肺炎への対応は病院経営にどう影響しますか?
A. 救急段階での初動の質が、後方病床の回転率や病院全体の経営効率に直結します。急性期での対応が遅れるとADL・嚥下機能の低下を招き、療養病棟転棟後もリハビリが難航します。入口である救急医療の強化が、加算を活かす前提条件になります。

Q. 何から着手すべきですか?
A. 高齢者救急を「入口・院内・出口」の3層で捉え、入口(救急受け入れ体制とトリアージ精度)の強化から着手します。救急専任医師の配置で初期治療の質を高め、早期の嚥下リハビリ移行につなげることが、加算の恩恵を最大化する鍵になります。

救急部門の体制強化や、質の高い医師の確保にお悩みの経営層・事務長の方は、ぜひ一度ドクターズプライムワークへご相談ください。

執筆・編集・監修

執筆・編集:ドクターズプライムワーク編集部
「救急車のたらい回しをゼロにする」をビジョンに、100病院を超える支援実績を持つ救急改善プラットフォーム「ドクターズプライムワーク」を運営しています。現状を可視化する「データ分析」と、病院が主体となって医師を確保できる「採用プラットフォーム」を一体で提供し、「自分らしく選べる医療をすべての人に」届けるための基盤を構築しています。 当編集部では、医療機関の変革に伴走する中で得られた現場特有の課題や解決のヒントを整理し、病院運営の質を高める有益な情報を発信しています。

監修:田 真茂(株式会社ドクターズプライム 代表取締役・医師)
聖路加国際病院救命救急センターで当直帯責任者を務めた後、2017年に株式会社ドクターズプライムを創業。詳細プロフィールは、会社紹介ページの監修・運営者情報をご覧ください。

参考情報:厚生労働省、消防庁、中医協、四病協資料、自社実績データ 

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