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高齢化率30%超の地域における後方支援病院の役割設計─地域包括ケアと急性期連携の交点

高齢化率30%超の地域における後方支援病院の役割設計─地域包括ケアと急性期連携の交点

更新日:

2026/6/24

高齢化率30%超の地域における後方支援病院の役割設計─地域包括ケアと急性期連携の交点 |メソッド

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「2040年に向けて自院は何を担う病院になるのか」「地域医療構想の中で自院のポジショニングをどう再定義すべきか」——こうした経営的な問いに直面している院長・理事長・事務長は少なくないのではないでしょうか。

高齢化率が30%を超える地域では、医療は「治療」だけで完結しません。「どこでどのように暮らすか」の延長線上に医療があり、急性期病院だけでは支えきれない構造が浮かび上がります。後方支援病院の役割は、もはや単なる「急性期の出口」ではなく、地域における「治し支える医療」の中核として再定義されつつあります。

本記事は、新たな地域医療構想の方向性と2026年度診療報酬改定を踏まえ、高齢化が進行する地域で後方支援病院が果たすべき役割を、急性期連携・地域包括ケア・意思決定支援の3つの交点から整理します。


本記事のポイント(30秒でわかる後方支援病院の役割再定義)

論点

結論

2040年に向けた構造変化

85歳以上人口の急増により、救急搬送ニーズは75%増。疾患は肺炎・尿路感染症・心不全・骨折が4割以上を占める

新たな地域医療構想の方向性

「治す医療」と「治し支える医療」の役割分担。2028年度までに各病院の医療機関機能を決定

後方支援病院の3つの機能

①急性期からの受け入れ(ポストアキュート)、②在宅・施設との往還支援、③意思決定支援(ACP)

経営判断の核心

「病床機能の選択」ではなく、「地域での役割の再定義」が問われている

着手のタイミング

2027年度から新地域医療構想の実施。2026年度中に院内合意形成を進めるべきタイミング

高齢化率30%超の地域で起きている医療の構造変化

高齢化率30%を超える地域では、医療の前提条件が根本から変わっています。後方支援病院の役割を論じる前に、まず構造変化を3つの視点で整理する必要があります。

構造変化①|85歳以上人口の急増と疾患構造の変化

2040年に向けて、日本では85歳以上の高齢者が急増します。厚生労働省「新たな地域医療構想に関するとりまとめ」によれば、85歳以上の救急搬送ニーズは75%増加すると見込まれています。さらに、その入院患者として上位を占めるのは、内科系では誤嚥性肺炎・肺炎・尿路感染症・心不全・脱水などの感染症および循環器系疾患、整形外科系では股関節骨折や胸腰椎圧迫骨折であり、いずれも地域包括医療病棟・地域包括ケア病棟が中心的に対応する患者層です

つまり、地域での救急医療需要は「重症の若年外傷型」から「中等症の高齢内科疾患型」へシフトしています。この変化は、後方支援病院が地域で担うべき役割の中心に「高齢者救急の受け皿機能」を据えることを意味します。

構造変化②|「治す医療」と「治し支える医療」の役割分担

2024年12月に公表された厚労省「新たな地域医療構想に関するとりまとめ」では、「治す医療」と「治し支える医療」の役割分担が明確に位置づけられました。これに伴い、病床機能報告における「回復期機能」は「包括期機能」へと名称変更され、回復期患者(post acute)に加えて軽症急性期患者(sub acute)にも対応する機能として位置づけ直されました。あわせて、新たに医療機関機能報告が創設され、各医療機関は①高齢者救急・地域急性期機能、②在宅医療等連携機能、③急性期拠点機能、④専門等機能、⑤医育及び広域診療機能、の5機能のいずれを担うかを報告することになります(新地域医療構想とりまとめWeb医事新報)。

つまり、後方支援病院は単なる「治療の場」ではなく、「在宅復帰までを設計する場」として位置づけ直されました。これは病床機能の名称変更ではなく、経営モデルの転換を意味します。

構造変化③|2028年度までに「自院の機能」を決定する時間軸

新たな地域医療構想では、各医療機関が2028年度までに「2040年に向けて担う医療機関機能」を決定することが求められています(社会保障審議会・医療部会等の議論)。具体的なスケジュールは以下のとおりです。

  • 2026年度:地域の医療提供体制全体の方向性、必要病床数の推計を検討・策定

  • 2027年度〜2028年度:医療機関機能に着目した連携・再編・集約化の協議

  • 2028年度まで:各医療機関の機能を決定

つまり、院内での合意形成と地域での協議を行う時間は限られています。2026年度中の院内議論の着手が、現実的な経営アジェンダになっているといえます。


後方支援病院が地域で果たす3つの役割

高齢化が進行する地域において、後方支援病院は単一機能の「治療の場」ではなく、役割が重層化した「地域インフラ」として再定義されます。役割は3つに整理できます。

役割①|急性期からの受け入れ機能(ポストアキュート)

第1の役割は、急性期病院から転院してくる患者を受け入れるポストアキュート機能です。2026年度診療報酬改定では、この機能を経済的に評価する仕組みが大幅に拡充されました。

  • 救急患者連携搬送料の要件緩和と、高次救急医療機関から地域密着型病院への「下り搬送」を搬送元・搬送先の双方で評価する仕組みの拡充

  • 地域包括医療病棟入院料を「一般病棟併設の有無」×「緊急入院/予定入院・手術の有無」で6区分に細分化し、最高3,367点(現行3,050点から+317点)に引き上げ

  • 包括期充実体制加算(80点/日、入院日から14日間まで)を新設。許可病床数200床未満(医療資源の少ない地域では280床未満)で、地域包括医療病棟または地域包括ケア病棟を有し、急性期病院一般入院料(急性期A・B)および急性期一般入院基本料を算定する病棟を有しない病院が対象

これらの制度的追い風は、急性期からの転院受け入れが経営の柱になる時代を明確に示しています。

役割②|在宅・施設との往還を支える機能

第2の役割は、在宅医療・介護保険施設との往還を支える地域包括ケア機能です。高齢者は一度の急性期治療で終わるわけではなく、「自宅 → 急変 → 入院 → 在宅復帰 → 再増悪 → 再入院」を繰り返します。後方支援病院は、この往還の各局面で患者を受け止める機能を持つ必要があります。

具体的には、入退院支援加算1の体制整備、訪問看護ステーションや在宅療養支援診療所との連携、介護保険施設との情報共有プロトコル等が、機能を支える実装要素になります。

役割③|意思決定支援機能(ACP・コードステータス・家族支援)

第3の役割は、本人・家族の意思決定を支えるACP(アドバンス・ケア・プランニング)機能です。厚労省「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン」が示すとおり、ACPは医療機関だけで完結するものではなく、地域全体(医療・介護・本人・家族)で支える営みとして位置づけられています。

特に高齢化率30%超の地域では、独居高齢者・身寄りなしケース・家族関係が複雑なケースが日常化しており、医療判断と暮らしの選択を分離できません。後方支援病院は、「治療の場」から「人生の最終局面の意思決定を支える場」へと機能を広げることが求められます。


急性期連携・地域包括ケア・意思決定支援の交点

3つの役割は独立して存在するのではなく、交点で機能を発揮します。後方支援病院の経営判断は、この交点をどう設計するかに集約されます。

急性期連携 × 地域包括ケア

急性期病院との連携は、ポストアキュート機能だけで完結しません。転院受け入れ時に「在宅復帰までの動線」を同時に設計することが、後方支援病院の本質的な役割です。

具体的には、転院依頼の段階で介護保険申請状況・家族構成・キーパーソンを把握し、入院初日から退院支援を開始する運用が必要になります。これが2026年度改定で強化された入退院支援加算1の基本思想とも一致します。

地域包括ケア × 意思決定支援

在宅・施設との往還を支える機能は、ACPの実装なしには成立しません。再増悪のたびに本人・家族が混乱し、コードステータスが定まらないまま救急受診を繰り返す状況は、地域全体の医療資源を疲弊させます。

後方支援病院がACPを地域の中で実装する責任を担うとき、「治療の選択」が「暮らしの選択」と接続します。この接続が、地域包括ケアの実質を支えます。

急性期連携 × 意思決定支援

急性期病院から終末期患者が転院してくる場合、家族への説明が十分でないまま転院依頼が来るケースは少なくありません。後方支援病院が緩和方針で受け入れたものの、家族が納得しておらず混乱が生じる状況は、現場で頻繁に発生します。

この交点では、「転院時の意思決定の握り直し」が必要になります。具体的には、紹介元の医師との情報共有、家族への再説明の機会設定、ACPの院内運用フローの整備等が、機能の実装要素になります。


経営判断のフレーム──自院の役割を再定義する5つの問い

後方支援病院が2028年度に向けて自院の役割を決定するうえで、経営層が向き合うべき問いを5つに整理します。

問い

検討の視点

① 自院は地域でどの機能を担うのか

包括期機能か、慢性期機能か、または複数機能の組み合わせか

② 急性期病院との連携密度はどの水準か

紹介元数・年間転院受け入れ件数・連携協定の有無

③ 在宅・施設との往還支援の実態はどうか

入退院支援加算1の取得・在宅療養支援診療所等との連携状況

④ ACPの院内運用は仕組み化されているか

コードステータス確認・家族支援フローの文書化

⑤ 院内ステークホルダーの合意形成はどう進めるか

病棟・医師・看護・地域連携室の役割共有が文化として根づいているか

5問のうち3問以上で具体的な答えが出ない場合、自院の役割再定義は組織的な中期プロジェクトとして着手する必要があるのではないでしょうか。

特に⑤の院内合意形成は経営判断の根幹です。日常のベッド確保・転院受け入れ判断の現場で、自院の役割を院内ステークホルダーが共有し、声に出しあう文化を形成することが、機能再定義の出発点になります。


まとめ──後方支援病院は「医療の地域インフラ」である

高齢化率30%を超える地域における後方支援病院の役割について、本記事の主張は次の3点に集約されます。

  • 後方支援病院は「治療の場」から「地域インフラ」へ:85歳以上の救急ニーズが75%増加する2040年に向けて、後方支援病院は単一機能の治療施設ではなく、急性期連携・地域包括ケア・意思決定支援の3機能を担う地域インフラとして再定義される必要があります

  • 新たな地域医療構想は経営判断のタイムリミットを示している:2028年度までに各医療機関の機能が決定される時間軸は、2026年度中の院内議論着手を経営アジェンダに据えるべき期限を意味します

  • 3機能の交点こそが経営の主戦場:ポストアキュート機能・地域包括ケア機能・ACP機能は独立して存在せず、交点で機能を発揮します。経営判断は、この交点をどう設計するかに集約されます

「治す医療」だけが医療ではありません。「治し支える医療」こそが、高齢化が進行する地域における後方支援病院の本来の役割であり、これは政策的な要請であると同時に、自院の経営的な生存戦略でもあります。2027年度から始まる新たな地域医療構想の実施に向けて、自院の役割を院内で語り直すことが、次の経営判断の起点になるのではないでしょうか。

自院の地域での役割定義、後方支援機能の強化、急性期連携・応需率改善の具体策を検討したい経営者・事務長の方は、救急改善プラットフォーム「ドクターズプライムワーク」の活用を検討してみてはいかがでしょうか。「救急を断らない医師」の紹介と、地域連携・救急データ分析による運用改善の両面から、後方支援病院の機能再定義を支援しています。

よくある質問

Q. 高齢化が進む地域で救急医療の需要はどう変わりますか?
A. 厚生労働省「新たな地域医療構想に関するとりまとめ」によれば、85歳以上の救急搬送ニーズは75%増加する見込みです。疾患は誤嚥性肺炎・尿路感染症・心不全・骨折が4割以上を占め、「重症の若年外傷型」から「中等症の高齢内科疾患型」へシフトしています。

Q. 「治す医療」と「治し支える医療」の役割分担とは何ですか?
A. 2024年12月の新地域医療構想とりまとめで明確化された方針です。病床機能報告の「回復期機能」が「包括期機能」へ名称変更され、回復期患者(post acute)に加え軽症急性期患者(sub acute)にも対応する機能として位置づけ直されました。

Q. 医療機関機能報告とは何ですか?
A. 新たに創設された報告制度で、各医療機関が①高齢者救急・地域急性期、②在宅医療等連携、③急性期拠点、④専門等、⑤医育及び広域診療、の5機能のいずれを担うかを報告します。「病床機能の選択」ではなく「地域での役割の再定義」が問われています。

Q. 後方支援病院が地域で果たす役割は何ですか?
A. 3つです。①急性期からの受け入れ(ポストアキュート機能)、②在宅・施設との往還を支える地域包括ケア機能、③本人・家族の意思決定を支えるACP機能。「急性期の出口」ではなく「治し支える医療」の中核として重層的に再定義されています。

Q. 2026年改定はポストアキュート機能をどう評価していますか?
A. 救急患者連携搬送料を搬送元・搬送先双方で評価、地域包括医療病棟入院料を6区分に細分化し最高3,367点(+317点)へ引き上げ、包括期充実体制加算(80点/日・14日間)を新設しました。許可病床200床未満等で急性期A・B等を持たない病院が同加算の対象です。

Q. 自院の機能はいつまでに決めるべきですか?
A. 各医療機関は2028年度までに「2040年に向けて担う医療機関機能」を決定します。2026年度に方向性・必要病床数推計を検討、2027〜2028年度に連携・再編・集約化を協議します。協議の時間は限られており、2026年度中の院内合意形成の着手が現実的なアジェンダです。


参照

  • 厚生労働省「新たな地域医療構想に関するとりまとめ」(2024年12月)

  • 厚生労働省「新たな地域医療構想策定ガイドライン」(2025年8月以降、段階的に公表。最終版は2026年4月)

  • 中央社会保険医療協議会「令和8年度診療報酬改定 答申」(2026年2月13日)

  • 厚生労働省「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン」

  • 国立社会保障・人口問題研究所「日本の地域別将来推計人口」

  • 社会保障審議会・医療部会 関連資料

執筆・編集・監修

執筆・編集:ドクターズプライムワーク編集部
「救急車のたらい回しをゼロにする」をビジョンに、100病院を超える支援実績を持つ救急改善プラットフォーム「ドクターズプライムワーク」を運営しています。現状を可視化する「データ分析」と、病院が主体となって医師を確保できる「採用プラットフォーム」を一体で提供し、「自分らしく選べる医療をすべての人に」届けるための基盤を構築しています。 当編集部では、医療機関の変革に伴走する中で得られた現場特有の課題や解決のヒントを整理し、病院運営の質を高める有益な情報を発信しています。

監修:田 真茂(株式会社ドクターズプライム 代表取締役・医師)
聖路加国際病院救命救急センターで当直帯責任者を務めた後、2017年に株式会社ドクターズプライムを創業。詳細プロフィールは、会社紹介ページの監修・運営者情報をご覧ください。

参考情報:厚生労働省、消防庁、中医協、四病協資料、自社実績データ 

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