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医師偏在対策2026|4月施行の新制度と2028年度以降の医学部定員削減、救急体制をどう守るか

医師偏在対策2026|4月施行の新制度と2028年度以降の医学部定員削減、救急体制をどう守るか

更新日:

2026/7/28

医師偏在対策2026|4月施行の新制度と2028年度以降の医学部定員削減、救急体制をどう守るか|メソッド

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2026年4月、改正医療法に基づく医師偏在対策が施行されました。重点医師偏在対策支援区域の設定、外来医師過多区域での新規開業への要請、そして6月30日には医師確保計画策定ガイドラインが都道府県へ通知されています。さらに骨太方針2026の原案は、2028年度以降の医学部定員削減を明記しました。医師の供給が中長期的に絞られるなかで、夜間・休日の救急をどう維持するか。本記事では制度の中身を一次情報に即して整理し、国が示す方向性と噛み合う打ち手を解説します。

この記事の要点(30秒サマリー)

  • 2026年4月、医師偏在対策が法律に基づく制度に:重点医師偏在対策支援区域への支援が予算事業から法制度へ移行し、外来医師過多区域での開業要請も始まりました。

  • 2026年6月30日、医師確保計画策定ガイドラインが通知:第8次(後期・2027〜2029年度)向けに「医師偏在是正プラン」が新設され、都道府県は2026年度中に計画を策定します。

  • 供給はこれから絞られる:骨太方針2026の原案は、総合的な医師偏在対策とあわせ、地域の実情を考慮した2028年度以降の医学部定員の削減を明記しました。

  • 国は救急を「地域で不足する医療機能」に挙げている:夜間・休日の初期救急医療や土日の代替医師としての従事が具体例として示されており、外部医師の活用は国の方向性と合致します。

※本記事は、当社システム(ドクターズプライムワーク)で2025年12月末時点までに100病院超・累計救急受入患者数16万人の救急体制改善を支援してきた現場知見と、一次情報(厚生労働省「医師偏在対策に関するとりまとめ」、厚生労働省医政局「地域医療構想策定ガイドライン」、内閣府「経済財政運営と改革の基本方針2026(原案)」)をもとに作成しています。本記事が解説するのは、「医師偏在対策と医学部定員削減によって医師の供給が絞られるなかで、急性期病院が夜間・休日の救急体制をどう維持・設計するか」です。

※本記事は2026年7月時点の情報に基づいています。制度の運用は都道府県ごとに具体化していくため、最新の状況は厚生労働省「医師確保対策」でご確認ください。

2026年、医師偏在対策は「制度」になった

医師偏在対策は、2024年12月18日の検討会でとりまとめられた総合的な対策パッケージを起点に、医療法の改正を経て制度化されました。改正医療法(令和7年法律第87号)は2025年12月に成立・公布され、偏在対策に関する規定は2026年4月から施行されています。

直近の動きを時系列で整理します。

時期

内容

2024年12月

「医師偏在対策に関するとりまとめ」公表。医師養成過程での取組・経済的インセンティブ・規制的手法を組み合わせた総合的な対策パッケージ

2025年12月

改正医療法(令和7年法律第87号)成立・公布

2026年4月

重点医師偏在対策支援区域・外来医師過多区域に関する規定が施行

2026年6月30日

「医師確保計画策定ガイドライン-第8次(後期)-」(2027〜2029年度)を都道府県へ通知。医師偏在是正プランが記載項目に追加

2026年度中

都道府県が新たな医師確保計画を策定

2027年度〜

計画に基づく取組を開始

重点医師偏在対策支援区域と「医師偏在是正プラン」

重点医師偏在対策支援区域は、優先的・重点的に医師確保を進める必要のある区域です。厚生労働省が候補区域(各都道府県で医師偏在指標が最も低い二次医療圏など)を提示し、都道府県が地域の実情に応じて設定します。設定した区域については、支援対象医療機関や必要医師数、是正に向けた取組を盛り込んだ「医師偏在是正プラン」を作成することとされました。

必要医師数は、候補区域の要件を脱するために必要な医師数を原則としつつ、地域医療対策協議会および保険者協議会に協議した上で設定されます。

外来医師過多区域での新規開業への要請

外来医師偏在指標が一定数値を超える地域では、新規開業希望者に対して開業の6か月前に提供予定の医療機能等を記載した届出を求め、地域の外来医療の協議の場への参加を求めることができるようになりました。

あわせて、地域で不足している医療機能の提供や、医師不足地域での医療の提供を要請できる仕組みが設けられています。この「不足している医療機能」の中身が、急性期病院にとって重要な意味を持ちます(後述)。

供給はこれから絞られる──2028年度以降の医学部定員削減

中長期の見通しも押さえておく必要があります。骨太方針2026の原案は、かかりつけ医機能の発揮や医師の地域・診療科偏在の更なる是正策を含めた総合的な医師偏在対策とあわせて、地域の実情を考慮した2028年度以降の医学部定員の削減に取り組むとしています。

同時期に動く地域医療構想も、医師確保と無関係ではありません。2026年7月3日公表の地域医療構想策定ガイドラインは、急性期拠点機能を担う医療機関を決める際の判断材料として、診療実績に加えて「医師をはじめとする医療従事者の確保の見込み」を挙げています。医師を確保できる見通しがあるかどうかが、地域での役割そのものを左右する構造です。

また同ガイドラインは、大学病院本院について「医育及び広域診療機能」のみを報告するものとし、急性期医療に従事する医師の確保を都道府県と大学の連携によって進めるとしています。医師の配分が、より計画的・行政主導に近づいていく流れだと考えられます。

つまり病院にとっての環境は、採用競争が激しくなる一方で、供給の総量は絞られていくという方向です。

「自前主義」が成り立たなくなった構造

ここに、医師の働き方改革が重なります。2024年4月から時間外・休日労働の上限規制(原則として年960時間、特例水準で年1,860時間)が本格適用され、常勤医の長時間労働に依存して当直や救急受け入れを維持する運用は成り立たなくなりました。

整理すると、次の3つが同時に効いています。

  1. 時間外労働の上限規制で、既存の常勤医の労働時間はこれ以上増やせない

  2. 医師偏在対策と定員削減で、新たな常勤医の確保はさらに難しくなる

  3. 地域医療構想で、医師確保の見通しが地域での役割判断に影響する

常勤医を増やせず、既存医師の時間も増やせない。この状態が続けば、救急応需率の低下や当直体制の破綻を招きかねません。応需率の低下は地域からの信頼を損なうだけでなく、2026年度診療報酬改定で導入された救急患者応需係数を通じて入院基本料の維持にも影響します。

国が示す「地域で不足する医療機能」に、救急は含まれている

ここで注目したいのが、厚生労働省の「医師偏在対策に関するとりまとめ」の記載です。外来医師過多区域の新規開業希望者に要請できる内容として、次のように示されています。

地域で不足している医療機能(夜間や休日等における地域の初期救急医療、在宅医療、公衆衛生等)の提供や医師不足地域での医療の提供(土日の代替医師としての従事等)を要請することができる

夜間・休日の初期救急医療土日の代替医師としての従事が、地域で不足する医療機能の具体例として明示されています。

さらに同とりまとめは、重点医師偏在対策支援区域内の一定の医療機関に対して、土日の代替医師確保等の医師の勤務・生活環境改善の支援を行うことや、当該区域の医療機関へ医師を派遣する派遣元医療機関への支援を行うことも示しています。

ここから読み取れるのは、常勤医以外の医師が夜間・休日の救急や土日の当直を担うことを、国が「不足を埋める正当な手段」として位置づけているという点です。外部医師の活用は、制度の抜け道ではなく、政策の方向性と噛み合った打ち手だと考えられます。

「自前主義」と「組み合わせ型」の比較

比較項目

自前主義(常勤医で完結)

組み合わせ型(常勤医+外部医師)

労働時間規制への対応

常勤医の時間外が上限に接近しやすい

夜間・休日を切り出し、上限内に収めやすい

採用環境の変化

偏在対策・定員削減の影響を直接受ける

常勤採用に依存しない選択肢を確保できる

夜間・休日の応需

当直医個人の力量と体調に左右される

救急対応に慣れた医師を計画的に配置できる

国の方針との関係

夜間・休日の初期救急、土日の代替医師は国が不足機能として明示

地域協議での説明

「人がいないので受けられない」

「この体制で受け続けられる」と根拠を示せる

自院診断チェックリスト

  • 自院の二次医療圏が重点医師偏在対策支援区域の候補に含まれるか確認している

  • 都道府県の医師確保計画・医師偏在是正プランの策定状況を把握している

  • 常勤医の時間外労働時間を個人単位で月次把握し、上限までの余力を可視化している

  • 夜間・休日と日勤帯で、救急応需率にどれだけ差があるかを数値で把握している

  • 常勤医採用と外部医師活用を、同じ土俵(3年累計コスト)で比較したことがある

  • 救急体制の維持見通しを、地域の協議の場で説明できる資料が整っている

救急体制を守る4つのステップ

  1. 現在地の可視化:救急応需率・受入台数を時間帯別に集計し、常勤医の時間外労働時間とあわせて把握する

  2. 不応需理由の分解:専門外・患者対応中・病床なしのどれで断っているかを分け、院内改善で埋められる部分を特定する

  3. 院内改善の実装:受入ルールの明文化、トリアージ、タスクシフトで、既存人員でも受けられる仕組みをつくる

  4. 不足分の外部補完:残った不足、とくに夜間・休日・輪番日に外部医師を配置し、常勤医の時間外を上限内に収めながら応需率を維持する

実際に、常勤医の高齢化と院内対応の限界から応需率が60%台で停滞していた2次救急病院が、外部の若手救急専門医を輪番日に導入したことで、応需率9割以上・病床稼働率約9割へ立て直した事例があります。また別の2次救急病院では、外部救急専門医の導入により日勤帯の応需率がほぼ100%に達し、初年度で数千万円規模の増収につながりました。

自前主義で行き詰まった状況でも、配置の設計を変えることで体制が安定しうるということです。

よくある質問(FAQ)

Q1. 医師偏在対策はいつから始まりましたか。 2024年12月の「医師偏在対策に関するとりまとめ」を経て医療法が改正され(令和7年法律第87号、2025年12月成立・公布)、重点医師偏在対策支援区域や外来医師過多区域に関する規定は2026年4月から施行されています。あわせて2026年6月30日には「医師確保計画策定ガイドライン-第8次(後期)-」が都道府県へ通知され、都道府県は2026年度中に計画を策定し2027年度から取組を始めます。

Q2. 「重点医師偏在対策支援区域」とは何ですか。 優先的・重点的に医師確保を進める必要がある区域です。厚生労働省が候補区域(各都道府県で医師偏在指標が最も低い二次医療圏など)を提示し、都道府県が地域の実情に応じて設定します。設定した区域については、支援対象医療機関・必要医師数・是正に向けた取組を盛り込んだ「医師偏在是正プラン」を作成することとされています。

Q3. 医学部定員削減はいつから、どう影響しますか。 骨太方針2026の原案では、地域の実情を考慮した2028年度以降の削減が示されています。医師の供給が中長期的に絞られるため、自前での常勤医確保はさらに難しくなる可能性があります。時間外労働の上限(原則年960時間、特例で年1,860時間)を守りながら救急・当直を維持する手段の確保が、いっそう重要になると考えられます。

Q4. 外部医師の活用は、国の方針に反しませんか。 反しません。厚生労働省の「医師偏在対策に関するとりまとめ」では、地域で不足している医療機能の具体例として「夜間や休日等における地域の初期救急医療」が、医師不足地域での医療の提供の例として「土日の代替医師としての従事等」が明示されています。さらに重点医師偏在対策支援区域では、土日の代替医師確保等による医師の勤務・生活環境改善への支援を行うことも示されています。

Q5. 医師確保の見通しは、地域での役割にも影響しますか。 影響します。2026年7月3日公表の地域医療構想策定ガイドラインは、急性期拠点機能を担う医療機関を決める際、全身麻酔手術件数・緊急手術件数や救急搬送受入件数といった診療実績に加えて、「医師をはじめとする医療従事者の確保の見込み」も確認するとしています。医師を確保できる見通しがあるかどうかが、地域での立ち位置に直結する構造です。

まとめ

  1. 医師偏在対策は2026年4月から制度になった:重点医師偏在対策支援区域と医師偏在是正プランにより、医師配分は計画的・行政主導に近づいています

  2. 供給は絞られる方向にある:骨太方針2026の原案は2028年度以降の医学部定員削減を明記しました

  3. 外部医師の活用は国の方向性と合致する:夜間・休日の初期救急医療と土日の代替医師は、国が地域で不足する医療機能として挙げているものです

常勤医を増やすことだけを前提にした救急体制は、制度環境の面からも維持が難しくなっています。まずは自院の応需率と常勤医の時間外労働を可視化し、どこを院内改善で埋め、どこを外部で補うのかを切り分けることが出発点になるのではないでしょうか。

なお、応需率の可視化や、外部医師を活用した当直・救急体制の設計にお悩みがあれば、ドクターズプライムワークでもご支援できます。自院の状況整理の一助として、必要に応じてご活用ください。

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執筆・編集・監修

執筆・編集:ドクターズプライムワーク編集部
「救急車のたらい回しをゼロにする」をビジョンに、100病院を超える支援実績を持つ救急改善プラットフォーム「ドクターズプライムワーク」を運営しています。現状を可視化する「データ分析」と、病院が主体となって医師を確保できる「採用プラットフォーム」を一体で提供し、「自分らしく選べる医療をすべての人に」届けるための基盤を構築しています。 当編集部では、医療機関の変革に伴走する中で得られた現場特有の課題や解決のヒントを整理し、病院運営の質を高める有益な情報を発信しています。

監修:田 真茂(株式会社ドクターズプライム 代表取締役・医師)
聖路加国際病院救命救急センターで当直帯責任者を務めた後、2017年に株式会社ドクターズプライムを創業。詳細プロフィールは、会社紹介ページの監修・運営者情報をご覧ください。

参考情報:厚生労働省、消防庁、中医協、四病協資料、自社実績データ 

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