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救急の受け入れ件数を増やすには?医師確保と運用改善の選択肢を整理

救急の受け入れ件数を増やすには?医師確保と運用改善の選択肢を整理

更新日:

2026/5/29

救急の受け入れ件数を増やすには?医師確保と運用改善の選択肢を整理|メソッド

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※本記事は、救急改善プラットフォーム「ドクターズプライムワーク」が2025年12月末時点で100病院超・累計救急受入患者数16万人超の救急体制改善を支援してきた現場知見と、厚生労働省・消防庁の一次情報をもとに、「救急の受け入れ件数を増やすための、医師確保と運用改善の打ち手」を整理したものです。

結論

救急の受け入れ件数を増やすには、「応需率(受ける割合)」と「要請数(来る母数)」を同時に上げる必要があります。

受入件数 = 応需率 × 救急要請数

多くの病院で件数が伸びない主因は、医師不足そのものではなく、「受入基準の属人化」と「夜間・休日の運用不備」という構造です。費用対効果の高い着手順は、次のとおりです。

優先度

施策

即効性

コスト

①不応需理由の可視化(医師別・時間帯別・理由別)

②受入基準の標準化(「迷ったら受ける」の明文化)

③夜間・休日の運用改善(検査オンコール・ベッド確保)

④不足枠への非常勤・外部救急医の投入

⑤救急隊連携による要請数の底上げ

⑥常勤医の採用

高(固定費)

以下では、この結論の根拠と各打ち手を、一次情報と現場知見から解説します。

救急応需率とは?受け入れ件数との関係

救急応需率とは、救急隊からの受け入れ要請のうち、実際に受け入れた割合を示す指標です(受入件数 ÷ 救急要請件数 × 100)。

ここで重要なのは、受け入れ件数が「応需率(要請のうち受ける割合)」と「要請数(そもそも来る母数)」の掛け算で決まる点です。応需率を上げても要請が来なければ件数は頭打ちになり、要請が来ても断れば件数は伸びません。受け入れ件数を増やすとは、この2つを同時に引き上げる設計に他なりません。

いま、受け入れ件数を増やしたい病院で何が起きているのか?

救急需要は過去最多の水準にあり、件数の確保は「地域貢献」から「経営要件」へと変わりつつあります。

消防庁の統計によれば、令和5年中の救急自動車による救急出動件数は763万8,558件で、集計を開始した昭和38年以降で最多を記録しました。搬送人員も664万1,420人と最多で、うち高齢者が約6割を占めています[出典:消防庁『令和6年版 救急・救助の現況』]。高齢化を背景に、救急需要は今後も増加が見込まれます。

同時に、令和8年度診療報酬改定では、救急搬送の「件数」が施設基準の数値要件として明確化されました。件数の多寡が、そのまま病院の収益基盤を左右する構造です。

[表:令和8年度診療報酬改定における救急搬送の数値要件]

制度

救急搬送に関する主な数値要件

急性期病院A一般入院料

年間2,000件以上(うち夜間1割以上)+全身麻酔手術1,200件以上

急性期病院B一般入院料

年間1,500件以上 ほか指定要件のいずれか+夜間1割以上

ICU(特定集中治療室管理料)

救急搬送年間1,000件以上 または 全身麻酔手術1,000件以上

重症度、医療・看護必要度

「救急患者応需係数」を該当患者割合に加算(入院に至らない受入も対象)

[出典:厚生労働省『令和8年度診療報酬改定の概要 3.急性期・高度急性期入院医療』 https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001671032.pdf

この制度的背景の詳細は、急性期病院の生き残り戦略!新「急性期病院一般入院基本料」と救急搬送実績への対応 で解説しています。

なぜ「医師を増やしても」受け入れ件数は増えないのか?

受け入れ件数が伸びない根本原因は、医師不足ではなく、「受入基準の属人化」と「夜間・休日の運用不備」という病院の構造にあります。

問題を分解すると、根本要因は次の3つに整理できます。

  • 判断の属人化:受入基準が明文化されておらず、当直医によって「受ける/受けない」がばらつく。同じ要請に応需する医師と断る医師が混在する。

  • 専門の偏在:在籍医師の専門が救急ニーズと合わず、「専門外」を理由に断る。設備や薬剤の不足が断りの口実になりやすい。

  • 出口と母数の設計不足:満床や夜間検査体制の制約で「医師はいるのに受けられない」状態が起きる。さらに救急隊との関係が薄く、そもそも要請が来ない。

ここで鍵となるのは、「断り」には改善できる断りと、構造的にやむを得ない断りがあるという視点です。断りを件数で眺めるだけでは前に進みません。医師別・時間帯別・理由別に構造化し、どこを直せば応需率が上がるのかを特定する必要があります。具体的な可視化の方法は 救急の不応需理由を医師別・時間帯別に可視化するには を参照してください。

受け入れ件数を増やした病院は、実際に何をしたのか?

件数を伸ばした病院は、医師確保と運用改善のどちらか一方ではなく、両輪を回しています。

以下は、ドクターズプライムワークの支援実績(自社データ。病院名は伏せ、属性で表記)です。前掲の公的統計とは出所が異なります。

  • 外部救急医を起点に応需率を引き上げた例:九州のある急性期病院では、外部救急専門医の導入により日勤帯の応需率をほぼ100%まで高め、初年度で年間約3,600万円の増収を達成しました。現場からは「『なんで受けたの?』という空気が消えた」という声が上がっています。

  • ルール化で応需率を倍増させた例:関東のある2次救急病院(334床)では、応需率50%未満という状態から、受入マニュアルの整備・看護師の救急専属化・振り分けルールの明文化を進め、年間搬送台数を約1.6倍に拡大し、応需率70%超を達成しました。

  • 組織文化の転換で件数を回復させた例:東京のある2次救急病院(99床)では、「断らない宣言」とファーストタッチ担当医制度の導入により、コロナ禍で落ち込んだ搬送を2年で約1.9倍まで回復させ、同じ手法を導入した支援先でも再現性が確認されています。

共通するのは、医師個人の頑張りではなく、受け入れを促す「仕組み」を設計した点です。

自院は、何から手をつけるべきか?

最初の一手は施策の実行ではなく、「現在地の可視化」と「目指す件数の経営目標への接続」です。

打ち手は、冒頭の優先順位表のとおり、次の3分類で考えると整理しやすくなります。

  1. 運用改善(応需率を上げる):不応需理由の可視化、受入基準の標準化、夜間・休日運用の改善。受入基準やマニュアルの整備手順は 救急マニュアル策定の失敗パターンと90日完成ロードマップ を参照。

  2. 医師確保(応需率を支える):下表の3択を即効性とコストで使い分ける。

  3. 要請数増加(母数を増やす):救急隊との連携・信頼構築で、要請という母数そのものを増やす。

[表:救急の医師確保 3つの選択肢]

選択肢

即効性

コスト構造

向いている病院

常勤医の採用

低(着任まで半年〜1年)

人件費が固定化

救急を中核機能に据え、中長期で厚くしたい

非常勤・スポット医師

変動費・必要枠のみ

夜間・休日・特定曜日の穴を即時に埋めたい

外部救急専門医チーム

中〜高

委託費(投資として設計)

「断らない文化」と運用設計をまとめて立ち上げたい

そのうえで、件数を入院・病床稼働・診療報酬の算定という経営目標に翻訳し、投資対効果として経営会議・理事会に示すことが、合意形成の鍵となります。受け入れ件数と収益の連鎖は 病院経営を黒字化する3つの起点─病床稼働率・救急応需率・DPC収益の連鎖を設計する を参照してください。

まとめ:受け入れ件数を増やすために

  • 受入件数 = 応需率 × 要請数。応需率と要請数を同時に引き上げる設計が必要です。

  • 「医師を増やす」は選択肢の一つにすぎません。運用改善・医師確保・要請数増加の3分類で、費用対効果の高い順に着手します。

  • 件数増は目的ではなく手段です。入院・病床稼働・診療報酬の算定という経営目標に翻訳し、院内合意を設計してはじめて、持続的な改善につながります。

「医師を増やせば解決する」という発想から、「件数が伸びない構造を分解し、医師確保と運用改善を経営目標から逆算して設計する」という発想へ。まずは自院の応需率と不応需理由を数値で可視化することから始めてみてください。

よくある質問

Q. 救急の受け入れ件数を増やすには、医師を増やすしかないのですか? いいえ。医師確保は選択肢の一つです。多くの病院では、人手不足よりも受入基準の属人化や夜間・休日の運用不備で断りが発生しており、運用改善だけで応需率が上がる例も少なくありません。

Q. 応需率と救急受け入れ件数はどう違うのですか? 応需率は「要請のうち受け入れた割合」、件数は「実際に受けた数」です。件数は応需率と要請数の掛け算で決まるため、応需率を上げても要請が増えなければ件数は頭打ちになります。

Q. 応需率は何%を目指すべきですか? 全国一律の目標値はありません。令和8年度改定も割合ではなく「件数」で評価します。まず自院の現在値を起点に、段階的に引き上げる目標設定が現実的です。

Q. 夜間・休日に断りが増えるのはなぜですか? 一診体制(医師1名)や夜間の検査オンコール不在、満床などで「医師はいるのに受けられない」状態が起きやすいためです。加えて、翌日業務への負荷を避けたいという心理も断りの背景になります。

Q. 受け入れ件数を増やすと、病院の収益はどう変わりますか? 件数増は入院・病床稼働・診療報酬の算定に直結します。令和8年度改定では急性期病院A一般入院料に年間2,000件以上、ICUに年間1,000件以上の救急搬送要件が設定されました。重症救急の算定は 救急医療管理加算とは?算定要件・加算1と加算2の違い・経営インパクトを徹底解説【2026年度改定対応】 を参照してください。

Q. 救急の受け入れ強化は、院内のどこから合意を取ればよいですか? 経営層・救急委員会・関係診療科を巻き込む合意形成が出発点です。応需率や不応需理由を数値化し、件数増を増収シミュレーションに翻訳した資料を用意すると、理事会・経営会議での合意が得やすくなります。


参照情報 【一次情報(公的)】厚生労働省『令和8年度診療報酬改定の概要 3.急性期・高度急性期入院医療』/消防庁『令和6年版 救急・救助の現況』/救急医療管理加算(医科点数表A205) 【自社実績データ】ドクターズプライムワーク 支援実績(100病院超・累計救急受入16万人超/2025年12月末時点)

執筆・編集・監修

執筆・編集:ドクターズプライムワーク編集部
「救急車のたらい回しをゼロにする」をビジョンに、100病院を超える支援実績を持つ救急改善プラットフォーム「ドクターズプライムワーク」を運営しています。現状を可視化する「データ分析」と、病院が主体となって医師を確保できる「採用プラットフォーム」を一体で提供し、「自分らしく選べる医療をすべての人に」届けるための基盤を構築しています。 当編集部では、医療機関の変革に伴走する中で得られた現場特有の課題や解決のヒントを整理し、病院運営の質を高める有益な情報を発信しています。

監修:田 真茂(株式会社ドクターズプライム 代表取締役・医師)
聖路加国際病院救命救急センターで当直帯責任者を務めた後、2017年に株式会社ドクターズプライムを創業。詳細プロフィールは、会社紹介ページの監修・運営者情報をご覧ください。

参考情報:厚生労働省、消防庁、中医協、四病協資料、自社実績データ 

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