更新日:
2026/6/23

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在宅医療や訪問診療の後方支援を担う在宅療養支援病院・診療所において、常勤医の負担増加は看過できない経営課題です。令和8年度(2026年度)診療報酬改定では、在宅療養支援診療所・病院の施設基準に「業務継続計画(BCP)の策定」が要件化され、あわせて第三者を活用した24時間体制のルールが明確化されました。本記事では、何が要件化されたのか、外部委託をどう設計すれば施設基準を満たせるのかを、厚生労働省の改定資料をもとに整理します。
※本記事は、厚生労働省「令和8年度診療報酬改定(8.質の高い在宅医療の推進)」を参照し、編集部にて再構成したものです(情報基準日:2026年6月)。要件の詳細は、必ず厚生労働省の告示・通知の原典をご確認ください。
在宅療養支援病院のBCP策定はなぜ義務化されたのか/BCP策定要件の具体的な中身は何か/第三者(外部)を活用した24時間体制のルールはどう変わったか/外部の往診医を使うときの要件は何か/施設基準を満たしながら医師の負担を減らすには
令和8年度改定で、在宅療養支援診療所・病院の施設基準に「BCP(業務継続計画)の策定」と定期的な見直しが要件化された
災害時等でも在宅患者への医療提供を継続できる体制を、厚労省の手引き等を参考に整備する必要がある
第三者(株式会社等)を活用して24時間連絡・往診体制を確保する場合の要件が明確化された
事前に氏名を提供していない往診医は、常勤医師と事前面談し診療方針を共有した者に限られ、その人数は常時1人以下とされた
「コールセンターから誰でも派遣する」運用は施設基準を満たさないことが明確になった
多くの在宅療養支援病院では、日中の外来・病棟業務に加え、夜間・休日のオンコールや緊急往診を同じ常勤医が兼務しています。2024年4月から本格施行された「医師の働き方改革」により時間外労働の上限規制が厳格化されたなかで、従来の献身に依存した体制は、常勤医のバーンアウトや離職リスクを高めます。今いる常勤医を守りながら持続可能な地域医療を提供し続けるには、体制の抜本的な見直しが避けられません。
こうした課題と災害への備えを背景に、厚生労働省は在宅療養支援診療所・病院の施設基準を改定しました。
災害時等においても在宅患者への医療提供を継続できるよう、在宅療養支援診療所・病院の施設基準に「業務継続計画(BCP)の策定」および定期的な見直しが新たに追加されました。厚生労働省の「BCP策定の手引き」等を参考に、医療機関の実情に応じた計画を策定し、必要な措置を講じ、定期的に見直すことが要件です。
参考:厚生労働省「令和8年度診療報酬改定(8.質の高い在宅医療の推進)」
第三者(株式会社等)の利用によって24時間連絡体制・往診体制を確保する場合の要件が明確化されました。患者・家族への連絡先をコールセンター等が担う場合は、その旨を事前に患者・家族へ説明したうえで、当該保険医療機関側で「コールセンター等からの連絡を24時間受ける体制」を確保することが要件となります。
さらに、外部の医師による夜間・休日の緊急往診を代行する体制については要件が厳格に明確化されました。患家に事前に氏名を提供していない往診医は、往診日以前に当該保険医療機関の在宅医療を担当する常勤医師と事前に面談し、診療方針等を共有している者に限られます。また、患家に事前に氏名を提供していない往診医による往診体制を確保している場合、当該医師は常時1人以下とされました。事実上、「コールセンターから誰でも派遣する」運用は施設基準を満たさないことが明確になったと言えます。
出典:厚生労働省「令和8年度診療報酬改定(8.質の高い在宅医療の推進)」
これらの改定は、「自院完結型」の運営から、ルールに沿って外部機関を活用する柔軟な体制構築へとシフトすることを促すメッセージです。
今回の制度変更が現場に与える影響は大きく、非常時だけでなく平時からの「持続可能な当直・オンコール体制」の維持が、施設基準を満たすうえでも強く求められるようになりました。夜間に緊急往診で駆けつけた医師が十分な睡眠をとれないまま翌日の通常診療にあたる状況は、医療安全の観点からも望ましくありません。限られた人数の常勤医だけで365日の24時間体制を維持し続けることには、すでに限界が訪れています。
外部リソースの活用ルールが明確化されたことは、医療機関にとっての転換点です。施設基準という要件を満たしつつ医師の労働環境を守るには、「外部リソースの活用を前提として体制を組む」という発想への転換が必要な時代に入りました。ただし要件化されたとおり、外部医師は常勤医との事前面談・診療方針の共有が前提であり、無秩序な派遣では基準を満たせない点に注意が必要です。
外部リソースを活用して施設基準を満たすには、次の3点が要点になります。第一に、BCPを「策定して終わり」にせず、災害時の連絡・往診継続の手順を具体化し、定期的に見直す運用に落とし込むこと。第二に、24時間の連絡受け体制(コールセンター利用時は自院での受け体制)を確保し、患者・家族への事前説明を整えること。第三に、外部往診医を使う場合は、常勤医との事前面談・診療方針共有を仕組み化し、要件(事前面談済み・常時1人以下等)を確実に満たすことです。
夜間・休日の体制負荷の軽減は、救急・当直体制とも密接に関わります。救急の受け入れ体制の見直しは「救急車の受け入れ拒否を減らすには?病院が見直すべき5つの体制」、応需率の改善は「救急応需率とは?計算方法・全国平均・改善方法を医師が解説」をあわせてご参照ください。
これからの病院経営では、地域医療を支える「施設基準の遵守」と、医師を守る「働き方改革」を両立させる必要があります。新たに要件化されたBCP策定と、明確化された外部委託ルールを正しく理解し、要件に沿った外部リソースの活用を設計することが、課題解決の鍵となります。夜間・休日の24時間体制の維持に課題を感じている場合は、まず自院のBCPと連絡・往診体制が新要件を満たしているかを点検することから始めるのが現実的です。
Q. 在宅療養支援病院のBCP策定はいつから要件化されましたか? A. 令和8年度(2026年度)診療報酬改定で、在宅療養支援診療所・病院の施設基準にBCP(業務継続計画)の策定と定期的な見直しが新たに要件化されました。
Q. BCPには何を盛り込めばよいですか? A. 災害時等でも在宅患者への医療提供を継続できる体制です。厚生労働省の「BCP策定の手引き」等を参考に、自院の実情に応じた計画を策定し、定期的に見直すことが求められます。
Q. 外部(第三者)を使った24時間体制は認められますか? A. 認められますが、要件が明確化されました。コールセンター利用時は患者・家族への事前説明と、自院でコールセンターからの連絡を24時間受ける体制の確保が必要です。
Q. 外部の往診医を使うときの要件は何ですか? A. 患家に事前に氏名を提供していない往診医は、往診日以前に常勤医師と事前面談し診療方針を共有した者に限られ、その人数は常時1人以下とされました。
Q. 「コールセンターから誰でも派遣」は可能ですか? A. できません。事前面談・診療方針共有のない医師の派遣は施設基準を満たさないことが明確化されました。
Q. 何から着手すべきですか? A. 自院のBCPの有無と内容、24時間連絡・往診体制、外部往診医の事前面談の仕組みが新要件を満たしているかを点検し、不足を補うことから始めます。
執筆・編集・監修
執筆・編集:ドクターズプライムワーク編集部
「救急車のたらい回しをゼロにする」をビジョンに、100病院を超える支援実績を持つ救急改善プラットフォーム「ドクターズプライムワーク」を運営しています。現状を可視化する「データ分析」と、病院が主体となって医師を確保できる「採用プラットフォーム」を一体で提供し、「自分らしく選べる医療をすべての人に」届けるための基盤を構築しています。 当編集部では、医療機関の変革に伴走する中で得られた現場特有の課題や解決のヒントを整理し、病院運営の質を高める有益な情報を発信しています。
監修:田 真茂(株式会社ドクターズプライム 代表取締役・医師)
聖路加国際病院救命救急センターで当直帯責任者を務めた後、2017年に株式会社ドクターズプライムを創業。詳細プロフィールは、会社紹介ページの監修・運営者情報をご覧ください。
参考情報:厚生労働省、消防庁、中医協、四病協資料、自社実績データ



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