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※本記事は、当社が提供する救急改善プラットフォーム「ドクターズプライムワーク」を通じて、2025年12月末時点までに100病院超・累計救急受入患者数16万人超の救急体制改善を支援してきた現場知見と、厚生労働省『令和8年度診療報酬改定 重点的な対応が求められる分野(救急医療・小児周産期医療)』をもとに作成しています。
令和8年度改定の救急外来評価(救急搬送医学管理料・夜間休日救急医学管理料。検索では「救急外来医学管理料」とも呼ばれます)は、点数だけでなく施設基準に「職員教育」と「地域連携」の要件が組み込まれました。職員教育は、救急に関する教育コースを年1回以上実施(管理料1)などが必要です。地域連携は、MC協議会への参加・ウツタイン様式調査への協力・救急救命士からの特定行為指示要請への対応・病院実習の受入れなどから、管理料1は2つ以上・管理料2は1つ以上を満たす必要があります。あわせて、専任の救急救命士が救急外来で業務を担い、院内研修を実施していることが望ましいと明記されました。つまり評価の重心は「人員配置」から「教育体制と多職種連携」へ移っています。点数・区分の詳細は関連記事で解説します。
本記事は、救急外来の体制づくりを担う経営層・人事・救急マネジメントの視点で、施設基準の「職員教育・地域連携」要件と、救急救命士を活かすタスクシフト体制のつくり方を整理します。
救急外来医学管理料(救急搬送医学管理料・夜間休日救急医学管理料)の施設基準は、職員教育と地域連携の要件が区分ごとに整理されています。
【職員教育】
救急搬送医学管理料1/夜間休日救急医学管理料1:院内職員に対し、救急に関する教育コースを年1回以上実施
救急搬送医学管理料2/夜間休日救急医学管理料2:上記の実施、または当該コースの受講推奨を職員に周知し、受講状況を年1回以上把握
【地域の救急医療に関する取組】(管理料1は2つ以上、管理料2は1つ以上)
ア:MC協議会・救急医療対策協議会・救急患者受入コーディネーター確保事業に関わる会議への参加
イ:消防機関の実施するウツタイン様式調査への協力
ウ:自院の医師が、消防機関の救急救命士からの特定行為の指示要請に対応
エ:地域の関係機関との連携体制の構築・向上を目的とした検討会の開催
オ:救急救命士の病院実習の受け入れ
カ:在宅医療関係者との協議に参加し、在宅療養等の救急搬送に関する情報共有ルールを策定
点数を取るだけでなく、これらの「体制・連携」を満たして初めて算定できる設計です。点数・区分(救急搬送医学管理料1/2/3=800/600/200点ほか)の詳細は、救急搬送医学管理料・夜間休日救急医学管理料の点数・算定要件の実務解説 をご覧ください。
医師の働き方改革やひっ迫する救急現場の負担軽減を目的に、救急外来(ER)へ救急救命士を採用する医療機関は全国的に増えています。搬送受け入れ対応、事前の情報収集、院内トリアージの補助など、病院前救護で培った専門性を院内でも発揮してもらうことが期待されています。
しかし現場を見ると、期待したほどタスク・シフトが進まないケースが少なくありません。主因は、受け入れる側の医師が救急救命士のスキルや法的に可能な業務範囲を十分に把握していないこと、そして多忙のなかで適切な業務委譲のフローが確立されていないことです。結果として、救急救命士が本来の能力を発揮できず、医師の負担軽減という目的が達成されません。
編集部ピックアップ:ある550床前後の三次救急病院では、救急救命士6名を院内配置し受入率98%を維持。「10年で高齢者救急搬送が3〜5割増加するなか、救命士の院内タスクシフトで下り搬送がスムーズになった」とのこと。成否は配置だけでなく具体的な業務設計にかかっています。
こうした現状に対し、国も方向性を明確にしています。令和8年度改定では、救急外来における救急救命士の効果的な配置と、質を担保するための院内研修の実施が推奨されました。厚生労働省の資料では「地域及び医療機関の実情に応じて、専任の救急救命士が救急外来において適切な業務を担うことが考えられ、その際には当該救急救命士に対して、院内研修を実施していることが望ましい」と明記されています。
これは、単なる人員配置にとどまらず、実効性のある教育体制を通じた「医療スタッフの質の担保」が診療報酬上も評価される方向へシフトしていることを意味します。救急救命士を配置するだけでなく、院内研修と業務設計をセットで整えることが求められます。
制度が救急救命士の活用を後押しする一方で、経営層・人事が直面する新たな課題があります。それは、現場で救急救命士を適切に指導し、安全かつスムーズに業務を委譲できる「教育熱心でコミュニケーション能力の高い救急医」の存在が不可欠になる点です。
医師からの明確な指示出し、適切なフィードバック、日々の業務を通じた信頼関係の構築がなければ、タスク・シフトは形骸化します。コメディカルとの連携を軽視する姿勢は現場の士気を下げ、離職にもつながりかねません。救急現場のボトムアップには、多職種連携を牽引できるリーダーシップを持つ医師の確保が、今後の重要な経営課題として浮かび上がります。
編集部ピックアップ:ある急性期病院では救急搬送が5年で1.9倍に成長したものの、退職が多発し崩壊の危機に直面しました。救急専門医は「人を増やす前に、効率的に動いているかを見直すべき。10〜20秒単位の改善の積み重ねで入院数10%増とスタッフ満足度向上を実現した」と振り返ります。効率化とチーム満足度は表裏一体です。
救急救命士を交えたタスク・シフトを成功させ、施設基準(職員教育・地域連携)を無理なく満たすには、経営層が主体となって次の順で体制を整えるのが有効です。
救急に関する教育コースの年1回以上の実施を、年間計画に組み込む
MC協議会への参加・ウツタイン調査協力・特定行為指示要請対応など、地域連携要件のうち自院で満たせるものを棚卸しする
救急救命士の業務範囲と委譲フローを明文化し、指示・フィードバックの責任者を決める
多職種連携を牽引できる医師を確保する(自院採用が難しい場合は、チーム医療に適性のある外部医師の活用も選択肢)
外部医師の活用を検討する場合の考え方や、人材紹介と救急改善プラットフォームの違いは、医師人材紹介会社と救急改善プラットフォーム──病院経営における5つの構造的違い で整理しています。
救急外来のタスク・シフトは、「救急救命士を採用する」という点の施策から、院内研修の充実や適切な医師配置といった「体制」の構築へとフェーズが移りました。令和8年度改定の施設基準は、職員教育と地域連携という形でこの方向性を明確にしています。経営層・人事が主導し、多職種が前向きに連携できる組織風土と教育体制の整備に、今から着手することが求められます。
まずは自院の教育コース実施状況と、地域連携要件の充足状況を棚卸しするところから始めてみてはいかがでしょうか。
Q. 救急外来医学管理料の職員教育要件は何ですか? A. 救急搬送医学管理料1/夜間休日救急医学管理料1は、院内職員に救急に関する教育コースを年1回以上実施。管理料2は、上記の実施または受講推奨を職員に周知し、受講状況を年1回以上把握することが求められます。
Q. 地域の救急医療に関する取組要件はどうなっていますか? A. 管理料1は2つ以上、管理料2は1つ以上を満たす必要があります。MC協議会等への参加、ウツタイン様式調査への協力、救急救命士からの特定行為指示要請への対応、地域関係機関との連携体制構築検討会の開催、救急救命士の病院実習の受入れ、在宅医療関係者との情報共有ルール策定などです。
Q. 2026年改定は救急救命士の活用をどう評価していますか? A. 救急外来における救急救命士の効果的な配置と、質を担保するための院内研修の実施が推奨されました。専任の救急救命士が救急外来で適切な業務を担う際には、当該救急救命士への院内研修を実施していることが望ましいと明記されています。
Q. 救急外来への救急救命士配置はなぜ進まないのですか? A. 配置自体は増えていますが、受け入れる側の医師が救急救命士のスキルや法的に可能な業務範囲を十分把握していないこと、多忙な中で業務委譲のフローが確立されていないことが主因です。
Q. 点数や区分(何点算定できるか)はどこで確認できますか? A. 救急搬送医学管理料1/2/3=800/600/200点、夜間休日救急医学管理料1/2/3=600/400/50点などの点数・区分の詳細は、関連記事「救急搬送医学管理料・夜間休日救急医学管理料の点数・算定要件の実務解説」で解説しています。
救急搬送医学管理料・夜間休日救急医学管理料の点数・算定要件を実務解説(点数・区分・請求)
救命救急士・診療看護師(NP)・救急専属看護師の院内タスクシフト設計(救急救命士の活用の詳細)
医師人材紹介会社と救急改善プラットフォーム──病院経営における5つの構造的違い(外部医師活用の選び方)
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執筆・編集・監修
執筆・編集:ドクターズプライムワーク編集部
「救急車のたらい回しをゼロにする」をビジョンに、100病院を超える支援実績を持つ救急改善プラットフォーム「ドクターズプライムワーク」を運営しています。現状を可視化する「データ分析」と、病院が主体となって医師を確保できる「採用プラットフォーム」を一体で提供し、「自分らしく選べる医療をすべての人に」届けるための基盤を構築しています。 当編集部では、医療機関の変革に伴走する中で得られた現場特有の課題や解決のヒントを整理し、病院運営の質を高める有益な情報を発信しています。
監修:田 真茂(株式会社ドクターズプライム 代表取締役・医師)
聖路加国際病院救命救急センターで当直帯責任者を務めた後、2017年に株式会社ドクターズプライムを創業。詳細プロフィールは、会社紹介ページの監修・運営者情報をご覧ください。
参考情報:厚生労働省、消防庁、中医協、四病協資料、自社実績データ



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