【医療法改正】「少数区域での勤務1年以上」への要件拡大。病院経営層が直面する課題と次世代リーダー育成の最適解
更新日:
2026/5/15

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keyboard_arrow_right※今回の記事は厚生労働省が発表している令和8年3月9日 第125回社会保障審議会医療部会 資料1 医師確保計画の見直し等に関する参考資料から一部を抜粋し編集した記事となっています。
次世代の院長や副院長など、病院の管理者候補をどのように育成・確保していくかは、多くの総合病院にとって経営上の重要課題です。地域医療を取り巻く環境が急激に変化する中、現場の診療だけでなく、多職種を束ねるマネジメント能力や経営視点を持った人材の価値は高まっています。
しかし、将来のリーダーとなる中堅・若手医師は、現場の最前線で救急医療や病棟管理を支える要でもあります。そうした中、厚生労働省が進める医師偏在是正に向けた総合的な対策により、病院の管理者要件が見直されることとなりました。経営層は、制度の変更を正しく理解し、現場の負担を増やさない新たな人材戦略を描くことが求められています。
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病院経営の現場では、自院のビジョンや診療方針を対外的に発信できているかが、管理者候補となる医師の採用力を左右するとの声が上がっています。管理者候補となる優秀な医師を惹きつけるには、病院が何者であるか、どのような将来像を描いているかを明確に語れることが重要です。制度対応だけでなく、病院としてのビジョンを示すことが求められています。
まず結論として、医師偏在是正の取り組みの一環として、公的医療機関や国立病院機構(NHO)などの病院管理者となる要件に「医師少数区域等での勤務経験」が追加され、その期間が「1年以上」へと延長されます。

求められる医師少数区域等での勤務経験を、現行の6か月以上から1年以上へと延長する方向で議論が進められており、今後の医療法改正を経て施行される見通しです。
これまで、2020年(平成32年)4月以降に臨床研修を開始した医師が地域医療支援病院の管理者となる場合に限り、医師少数区域等での6か月以上の勤務経験が要件とされてきました。今回の見直しでは、対象医療機関を以下のとおり拡大する方向で議論が進んでいます。

地域医療支援病院に加え、新たに公的医療機関、国立病院機構(NHO)、地域医療機能推進機構(JCHO)、労働者健康安全機構(労災病院)が開設する病院の管理者が対象となります。
※なお、制度の施行にあたっては柔軟な対応も検討されており、医師少数区域等に所在する対象医療機関の管理者となる場合は要件から除外されます。さらに、医育機関や臨床研修指定病院で医療従事者の指導等に従事した期間など、管理者に求められる幅広い経験の期間についても、医師少数区域等での勤務経験として一部認められる特例が設けられます。
出典:令和8年3月9日 第125回社会保障審議会医療部会 資料1 医師確保計画の見直し等に関する参考資料
この制度変更により、将来の管理者候補となる中堅〜若手医師に対し、地方や医師少数区域への派遣・赴任を戦略的に組み込んだキャリアパスを構築する必要があります。
一方で、厚生労働省の検討会でも指摘されているのが、要件が厳格化することによる現場への「逆インセンティブ」の懸念です。
具体的には、以下のような声が上がっています。
・病院長のなり手が少ない中で、管理者を断る理由になってしまうのではないかという懸念が示されています。
・若い医師が専門的な医療について集中的に経験を積める貴重な時間を犠牲にしてしまうのではないかという指摘があります。
・若い医師は病院長になりたくないので少数区域には行かないということもあり得るのではないかという声もあります。
また、経営層にとっても、現場の最前線で活躍する医師を外部へ派遣することは、自院の救急体制や病棟管理に大きな穴を開けることになりかねません。将来のリーダー育成と、現在の医療提供体制の維持という、非常に難しい舵取りが求められるようになります。
📌 編集部ピックアップ
医師少数区域で病床稼働率90%超を維持するある病院では、医局との関係を維持しながら外部医師を活用する共存戦略を採用しています。「負荷の高い業務を外部でカバーし、医局に無理な相談をせずに済み本流の関係性を維持できる」という方針により、常勤医の負担を抑えながら地域医療を支える体制を実現しています。
では、病院経営層は明日からどのようなアクションを取るべきでしょうか。
自院の若手・中堅医師が管理者要件を満たすために少数区域へ赴任しても、残された常勤医に負担が偏り、救急体制や病棟管理が崩れてしまっては望ましくありません。常勤医の自己犠牲に依存しすぎない、柔軟なシフト構築が重要となります。
そこで、非常勤医師を戦略的に活用した体制の再構築をご提案します。ドクターズプライムワークの非常勤医師採用ソリューションを活用することで、以下のような体制整備が可能になります。
救急外来や夜間当直の枠に、スキルと意欲の高い非常勤医師を配置することで、常勤医の労働時間を適切に管理できます。
編集部ピックアップ
ある2次救急病院では、外部の救急専門医を導入したことで日勤帯の応需率がほぼ100%に達し、月平均12.8人の入院受け入れ(率75.8%)を実現、初年度で年間約3600万円の増収を達成しました。常勤医の働き方改革と収益向上を両立させた事例として、「導入費用はもはやコストではなく確実な投資だった」との評価を得ています。
シフトに「余白(バッファ)」を持たせることで、幹部候補の医師が1年以上の外部派遣に出た際にも、現場の救急受け入れ体制を縮小することなく維持できます。
幹部候補の医師が安心して要件を満たすためのキャリアパスを描ける環境は、ひいては病院全体の採用力や定着率の向上にもつながります。
病院の管理者要件に「医師少数区域等で1年以上の勤務経験」が求められる対象が拡大することは、病院の人事戦略において大きな転換点となります。逆インセンティブに陥ることなく、次世代のリーダーを育成していくためには、常勤医のみに頼る体制から脱却し、非常勤医師を含めた多様な人材で現場を支える仕組みづくりが欠かせません。
外部のソリューションを賢く活用し、余白のある強靭な救急・当直体制を築くことが、これからの病院経営において確実な一歩となるでしょう。
執筆・編集・監修
執筆・編集:ドクターズプライムワーク編集部
「救急車のたらい回しをゼロにする」をビジョンに、100病院を超える支援実績を持つ救急改善プラットフォーム「ドクターズプライムワーク」を運営しています。現状を可視化する「データ分析」と、病院が主体となって医師を確保できる「採用プラットフォーム」を一体で提供し、「自分らしく選べる医療をすべての人に」届けるための基盤を構築しています。 当編集部では、医療機関の変革に伴走する中で得られた現場特有の課題や解決のヒントを整理し、病院運営の質を高める有益な情報を発信しています。
監修:田 真茂(株式会社ドクターズプライム 代表取締役・医師)
聖路加国際病院救命救急センターで当直帯責任者を務めた後、2017年に株式会社ドクターズプライムを創業。詳細プロフィールは、会社紹介ページの監修・運営者情報をご覧ください。
参考情報:厚生労働省、消防庁、中医協、四病協資料、自社実績データ
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