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情報共有DXは医師働き方改革の「半分」にすぎない──電子カルテ情報共有サービスが変えること・変えられないこと

    情報共有DXは医師働き方改革の「半分」にすぎない──電子カルテ情報共有サービスが変えること・変えられないこと

    更新日:

    2026/5/14

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    医師の働き方改革が施行されて以降、タスク・シフトや業務効率化への取り組みが多くの病院で加速しています。そのなかで、国が推進する「電子カルテ情報共有サービス」は、情報連携の抜本的な改善を約束する重要な施策です。しかし、制度の恩恵を最大化するためには、システム面のDXと人的運用の改善を同時に進める視点が欠かせません。本記事では、電子カルテ情報共有サービスの制度要点を整理しつつ、「真の働き方改革」に求められる両輪のアプローチについて解説します。

    ※本記事は厚生労働省医政局「電子カルテ情報共有サービス 概要案内 2.0版(令和8年3月)」をもとに編集部が構成したものです。


    夜間救急における医師負担の現状——効率化だけでは限界がある

    医師の働き方改革施行以降、時間外労働の上限規制を遵守するため、書類作成補助者の配置や会議の短縮といった日中の業務効率化が進んでいます。しかし、皆様の病院でも実感されているように、当直業務による長時間拘束や深夜の救急対応は、常勤医にとって依然として重い負担であり続けています。

    業務効率化の取り組みが着実に積み上がっても、夜間帯の当直そのものの肉体的疲労や、翌日の通常業務への影響(睡眠不足によるパフォーマンス低下)は、アナログの運用改善だけでは本質的に解決しにくいのが現状です。この課題を構造的に捉え直す上で注目されているのが、DXによる情報連携の高度化と、人的リソースの再設計を組み合わせたアプローチです。

    📌編集部ピックアップ

    ドクターズプライム編集部の取材によると、常勤医の高齢化と院内整備の限界から応需率が60%台に低迷していたある千葉県内の2次救急病院では、外部の若手救急専門医を輪番日に導入し受入フローを整備した結果、応需率が90%以上に改善し、病床稼働率も約9割で安定しています。「1人でスムーズに対応していただけるため、安心して業務をお任せできています」という現場の声が、人的リソース確保の有効性を示しています。


    電子カルテ情報共有サービスとは何か——制度の要点を整理する

    厚生労働省医政局の「電子カルテ情報共有サービス 概要案内 2.0版(令和8年3月)」では、単なる紙のデジタル化ではなく、全国規模での互換性確保と医療現場の抜本的な業務効率化を目的とした情報インフラとしての位置づけが明示されています。

    仕様の再整理と背景

    令和7年2月〜令和8年3月のモデル事業において、現場運用と仕様との乖離や、既存システムとの接続・変換における技術的課題が顕在化しました。これらを踏まえ、持続的なサービス運用を確保するため、仕様全体の大幅な再整理が行われています。具体的には、処方情報の取り扱いの見直しや、臨床情報項目の定義の再整理などが挙げられます。

    マイナ保険証を介した全国規模の情報連携

    受診時にマイナ保険証で受付をし、情報提供に同意することで、医療機関で記録された電子カルテ情報の一部を全国の他の医療機関で閲覧できる仕組みです。他院で診断された傷病名やアレルギー、検査結果などを迅速かつ正確に把握できるようになります。

    共有される具体的なデータ項目

    共有対象となる情報は以下の8項目です。

    • 診療情報提供書

    • 退院時サマリー

    • 健康診断結果報告書

    • 傷病名

    • 感染症

    • 薬剤アレルギー等

    • その他アレルギー等

    • 検査

    受診時にマイナ保険証で受付を行い、情報提供に同意することで、医療機関で記録された電子カルテ情報の一部を、全国の他の医療機関や患者本人がクラウド上で閲覧できる仕組みを説明する図解です 。

    引用元:電子カルテ情報共有サービス 概要案内 2.0版(令和8年3月)


    DXがもたらす変化——情報連携の高速化が救急現場を変える

    このような情報連携が全国規模で実現すると、救急の現場においても具体的な変化が期待されます。

    初診患者の過去の診療歴・アレルギー歴の確認、他院への問い合わせ電話、紹介状(診療情報提供書)の作成といった情報連携にかかる間接業務が大幅に削減されます。これまで「断る理由」の一つとなっていた「情報がない」という状況が解消されることで、救急受け入れの判断精度も高まりうるでしょう。ただし、搬送要請の電話時点での即時参照には、患者本人の同意取得など実務上の制約が残る点には留意が必要です。」

    特に救急搬送の受け入れ判断においては、患者の既往歴・服薬情報・アレルギーが即座に確認できるかどうかが、現場の医師の心理的ハードルに直結します。「複雑な患者背景」を理由に断らざるをえなかったケースでも、情報へのアクセスが容易になることで、受け入れ判断をより根拠のある形で下せるようになります。

    📌編集部ピックアップ

    過去に配信したセミナーでの発言によると、ある救急専門医は「断る理由はいくらでも見つかる。その多くは臆測でしかない」と語っています。電子カルテ情報共有サービスによって患者の背景情報へのアクセスが容易になれば、こうした「受け入れ文化の醸成」を後押しする環境整備にもつながります。


    DXが変えられないもの——人的負担の本質は残り続ける

    一方で、情報連携がいかに高度化しても、解決できない課題があります。

    事務作業や情報照会の手間が減ったとしても、夜間帯の当直による身体的疲労、翌朝の外来・手術への影響、医師の睡眠時間の短縮といった問題は依然として続きます。デジタルが代わりに当直をすることはできませんし、深夜に救急患者を診察する負担を軽減することもできません。

    システムの投資対効果(ROI)を最大化するためにも、医師が疲弊した状態では最新ツールの恩恵が十分に発揮されない点は見落とせません。DX導入によって削減された間接業務の時間を、常勤医が本来注力すべき診療・教育・経営判断に充てるためには、夜間対応の負荷そのものを構造的に改善する必要があります。


    「DX×人的リソース確保」で実現する真の働き方改革——明日から取れるアクション

    電子カルテ情報共有サービスを最大限に活かすためには、制度への対応と並行して、以下の人的運用改善を進めることが重要です。

    1. 夜間・休日救急のアウトソーシングによる負担軽減

    当直による肉体的負担を根本から解消するためには、夜間・休日の救急外来を信頼できる非常勤医師にアウトソーシングする方法が有効です。外部の医師を活用することで、常勤医の当直負担を実質的にゼロに近づけ、持続可能な労働環境を整えることができます。

    2. 常勤医の余力確保がDX活用の前提条件になる

    どれほど優れた情報システムが導入されても、それを使いこなす医師・スタッフが疲弊していては意味がありません。アウトソーシングによって常勤医の睡眠と健康を確保し、余裕を持って本来の診療やDXツールの活用に集中できる体制を整えることで、導入したシステムの投資対効果を最大限に引き出すことが可能になります。

    3. 応需体制の強化が経営改善にも直結する

    ドクターズプライム編集部の取材によると、「外部救急専門医を導入したある2次救急病院では、救急搬送受入数の増加と入院単価の改善により、初年度から年間数千万円規模の増収につながった事例も確認されています(弊社支援実績より)。」救急応需率の向上は、病床稼働率の改善を通じて経営回復につながります。情報連携の整備で患者背景を迅速に把握できる環境が整えば、受け入れ判断の精度がさらに上がり、経営面へのインパクトも大きくなるでしょう。


    まとめ——DXと人的リソースは「両輪」で進める

    電子カルテ情報共有サービスによる情報連携のDXは、医療現場から多くの無駄を省く強力な基盤です。紹介状や情報照会に費やしていた間接業務の削減は、常勤医の日中業務を確実に軽くします。

    しかし、夜間救急の当直負担や身体的疲労は、いかなるシステムでも代替できません。デジタル化による「業務の効率化」と、外部医師活用による「人的リソースの確保」を同時に進めることで、常勤医を守りながら質の高い医療を提供し続けることが可能になります。

    まずは自院の当直体制の現状を再評価し、外部リソースの活用という選択肢から一歩を踏み出してみてはいかがでしょうか。

    執筆・編集・監修

    執筆・編集:ドクターズプライムワーク編集部
    「救急車のたらい回しをゼロにする」をビジョンに、100病院を超える支援実績を持つ救急改善プラットフォーム「ドクターズプライムワーク」を運営しています。現状を可視化する「データ分析」と、病院が主体となって医師を確保できる「採用プラットフォーム」を一体で提供し、「自分らしく選べる医療をすべての人に」届けるための基盤を構築しています。 当編集部では、医療機関の変革に伴走する中で得られた現場特有の課題や解決のヒントを整理し、病院運営の質を高める有益な情報を発信しています。

    監修:田 真茂(株式会社ドクターズプライム 代表取締役・医師)
    聖路加国際病院救命救急センターで当直帯責任者を務めた後、2017年に株式会社ドクターズプライムを創業。詳細プロフィールは、会社紹介ページの監修・運営者情報をご覧ください。

    参考情報:厚生労働省、消防庁、中医協、四病協資料、自社実績データ 

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