更新日:
2026/6/3

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※本記事は、当社が支援する100病院超の2次救急病院での支援データ(医師働き方改革施行から約2年間の運用実績)と、厚生労働省の一次情報に基づき解説します。
【この記事の結論:3つのポイント】
医師働き方改革施行から約2年、当直負担を分散できている病院に共通する運用モデルは「外部医師×受入ルール×データ管理」の三位一体である
規模・地域を問わず再現性があり、谷津保健病院(千葉県・262床)では輪番日応需率が60%台→90%超、長田病院(福岡県・182床)では年間3,600万円超の増収を実現
失敗パターンは「医師補充のみ」「常勤医依存の継続」「KPI不在」の3類型に集約され、運用モデル設計の段階で回避可能
「2024年4月の医師働き方改革施行後、救急当直の負担を分散できている病院の運用モデル事例を知りたい」こうした問いを抱える病院経営者・事務長は少なくありません。常勤医の時間外労働には上限が課され、その影響から医局派遣も縮小傾向にあり、従来通りの当直体制が法的にも実態的にも維持できなくなっているからです。
本記事では、2024年4月施行から約2年が経過した現時点で、実際に救急当直の負担分散に成功している6つの2次救急病院の運用モデルを比較分析します。99床〜334床まで規模も地域も異なる6院ですが、共通するのは「外部医師の質×受入ルール設計×データ管理」の三位一体構造です。各院の数値・運用設計・経営インパクトを、実装事例として詳述します。
救急当直の負担分散とは、夜間・休日・輪番日の救急受入を、常勤医個人の頑張りに依存せず、外部医師の継続供給・受入ルールの明文化・応需率データの月次管理を組み合わせて、組織全体で受け持つ運用モデルへ転換することです。
医師の働き方改革(2024年4月施行)により、A水準(年960時間)が原則となり、B・連携B・C水準(年1,860時間)は2035年度末までに段階的解消することが想定されているため、最終的には全医療機関がA水準で運用できる体制への移行が政策目標です。
出典:出典:[厚生労働省「医師の働き方改革概要」P1]
参照箇所:A・B・C水準の時間外労働上限、2035年度末の段階的解消スケジュール
医師の働き方改革(2024年4月施行)により、時間外労働の上限規制である
A水準(一般の医療機関に適用される年960時間)が原則となり、地域医療確保や
研修目的の特例であるB・連携B・C水準(年1,860時間)は2035年度末までに
段階的解消することが想定されているため、最終的には全医療機関がA水準で
運用できる体制への移行が政策目標です。
出典:[厚生労働省「医師の働き方改革概要」P1]
参照箇所(PDF冒頭): 制度の根本理念(医師の健康確保と医療の質・安全の両立、 持続可能な医療提供体制の維持)
論点 | 結論 |
|---|---|
共通の三位一体 | 外部医師の質×受入ルール設計×データ管理 |
規模別の事例数 | 99床から334床まで6院、すべて2次救急 |
最大の改善幅 | 輪番日応需率60%台→90%超(谷津保健病院) |
経営インパクト | 年間3,600万円超の増収事例あり(長田病院) |
失敗パターン | 医師補充のみ/常勤医依存継続/KPI不在の3類型 |
2026年改定接続 | 急性期病院B(救急1,500件)の生存ラインに直結 |
6つの運用モデル事例(一覧)
病院 | 規模 | 主要数値 | 運用モデルの特徴 |
|---|---|---|---|
谷津保健病院 | 千葉県・262床 | 応需率60%台→90%超 | 外部医師+受入上限ルール |
長田病院 | 福岡県・182床 | 年間3,600万円増収 | 外部医師継続供給+総合診療化 |
北里大学メディカルセンター | 埼玉県・334床 | 受入1.6倍(3,000→4,800台) | 各科役割分担+救急一元化 |
山元記念病院 | 佐賀県・150床 | 病床稼働率90%超 | 医局共存+外部医師緩衝材 |
東京衛生アドベンチスト病院 | 東京都・186床 | 応需率約10%向上 | 看護師合意+組織変革 |
芳珠記念病院 | 石川県・183床 | 上半期1億円増収 | 政策誘導+算定漏れ是正 |
各事例の詳細を順に解説します。
地域の月曜・金曜当番病院として2次救急を担う谷津保健病院(千葉県習志野市・262床)は、常勤医の高齢化(40〜60代)により当直負担が増大し、輪番日の応需率は60%台で停滞していました。
外部の若手救急専門医を継続供給する仕組みを導入
輪番日の当直を従来の2名体制から外部医師1名体制に変更
受入上限ルール(ベッド充足率8割以降は近隣・かかりつけ患者に限定)を設計
指標 | 改善内容 |
|---|---|
救急応需率 | 60%台 → 90%以上に改善・安定 |
輪番日の救急受入 | 1日15〜20台をスムーズに対応 |
病床稼働率 | 約9割で安定 |
院長は次のように述べています。「救急車が7、8台並んでしまう状況もあるが、外部の救急専門医1人でスムーズに対応してもらえるため、安心して業務を任せられる」「救急隊もその医師がいる日は断らないという認識ができてきて、幅広い要請が来るようになった」。応需率改善と並行して、救急隊の口コミ経由で要請件数自体が増えるという副次効果も発生しています。
長田病院(医療法人清和会・福岡県柳川市・182床)は、常勤医の高齢化と属人的な救急体制に課題を抱えていました。「その日に出勤している医師次第」という不確実性が経営の不安定要因となっていた状態から、外部医師活用による再設計に踏み切りました。
外部の救急専門医を継続供給する仕組みを導入
「救急対応」だけでなく「総合診療科的」な役割も外部医師に担当依頼
複数疾患を抱えた高齢患者の対応まで範囲を拡大
指標 | 改善内容 |
|---|---|
日勤帯の救急応需率 | ほぼ100% |
月平均入院患者数 | 12.8人(当初目標「月3人入院増」を大幅超過) |
平均入院率 | 75.8% |
売上増 | 年間3,600万円超(初年度で目標達成) |
事務部長は導入効果を「当初は月に3人入院が増えれば御の字と考えていた。しかし蓋を開けてみれば、月平均12.8人もの入院患者を受け入れることができている」「導入費用はもはやコストではなく、病院の成長を加速させるための確実な『投資』であったと確信している」と振り返ります。
北里大学メディカルセンター(埼玉県北本市・334床)は、応需率50%未満から70%超への改善を実現した事例として知られます。背景には、外部医師の継続供給と並行して、各科の役割分担と救急初療への一元集約という大規模な組織変革がありました。
救急科への初療一元化を徹底
各専門科はオンコール体制へ切り替え
院内全体で「断らない」体制への意識統一
指標 | 改善内容 |
|---|---|
救急応需率 | 50%未満 → 70%超 |
年間救急車受入 | 3,000台 → 4,800台(1.6倍) |
大学病院系の中核機能 | 地域救急への貢献を回復 |
「断る体質」の大学病院系の中核病院が、組織変革で救急受入を1.6倍に伸ばした事例は、大規模病院でも運用モデルの再設計が可能であることを示しています。
出典:北里大学メディカルセンター ドクターズプライムワーク導入事例
山元記念病院(佐賀県・150床)は、医師少数区域という制約のなかで、外部医師を「緩衝材」として位置付け、医局との関係を維持しながら病床稼働率90%超を達成しました。地方病院ならではの「医局共存×外部医師活用」のモデルとして再現性が高い事例です。
外部医師を「医局負担を増やさない緩衝材」として位置付け
医局との本流の人事交流・専門医派遣ラインを維持
救急データの可視化で経営判断を数値化
指標 | 改善内容 |
|---|---|
病床稼働率 | 90%超 |
地域貢献 | 地域2次救急の約3割を担う中核機能の維持 |
経営基盤 | 医局派遣の縮小に左右されない体制を確立 |
院長は「負荷の高い業務を外部でカバーし、自院で体制を整えることで、医局に対して『無理な相談』をする必要がなくなり、本流の人事交流や専門医の派遣という重要なラインでの関係性を維持できる」と語ります。常勤医を増やせない地域での現実解として、医局共存×外部医師活用のモデルが機能しています。
東京衛生アドベンチスト病院(東京都杉並区・186床)は、看護師の心理的安全性に着目した組織変革を起点に、救急応需率を約10%向上させた事例です。医師の供給だけでなく、看護部の合意形成と組織文化の転換を組み合わせた好例として知られます。
救急運営委員会への看護部長の参画
「断る理由を探さない看護師」を生む組織文化の醸成
医師の質と看護部合意を両輪で動かす設計
指標 | 改善内容 |
|---|---|
救急応需率 | 約10%向上 |
看護師の離職率 | 改善 |
組織風土 | 「受けないで」の声が出にくい風土を確立 |
「看護師の心理的安全性」という視点は、医師供給サイドだけを動かす運用モデルでは見落とされがちな論点です。看護部の合意形成を組み込んだ運用モデルが、応需率改善の持続性を担保します。
出典:東京衛生アドベンチスト病院 ドクターズプライムワーク導入事例
芳珠記念病院(医療法人社団和楽仁・石川県能美市・183床)は、救急応需強化・訪問診療・診療報酬の算定漏れ是正という3軸の同時改革で、上半期1億円超の増収を実現した事例です。元厚労官僚の副理事長が指揮する「政策誘導に乗る経営」と、データ駆動の運用設計が両輪で機能しています。
救急応需強化と算定漏れ是正を同時並行
救急医療管理加算をはじめとする加算評価の運用適正化
訪問診療との連携で地域医療貢献と収益の両立
指標 | 改善内容 |
|---|---|
売上 | 上半期1億円超の増収 |
経営状態 | 赤字2% → 黒字2%への転換 |
改革構造 | 政策誘導×救急応需×算定適正化の三層改革 |
「政策誘導に乗る経営」という考え方は、診療報酬改定の方向性と病院運営を整合させる経営判断の典型です。救急医療管理加算の算定要件と経営インパクトについては、救急医療管理加算とは?算定要件・加算1と加算2の違い・経営インパクトを徹底解説【2026年度改定対応】で詳述しています。
6院の事例を横断的に分析すると、規模・地域を問わず再現できる5つの共通パターンが浮かび上がります。
6院すべてが、スポット派遣ではなく継続供給型の外部医師活用を選択しています。同じ医師が定期的に当直に入ることで、救急隊・看護部・常勤医との関係性が積み上がり、応需判断の質が安定します。スポット派遣では「毎回初見の医師」となり、応需マインドが揃わないため、応需率の構造的改善には至りません。
「断らない救急」と聞くと無条件受入を連想しがちですが、6院に共通するのはベッド上限・診療科範囲・条件付き受入などの明文化されたルールです。判断軸が言語化されているからこそ、「受けられる範囲を確実に受ける」が実現します。ルールがないと、現場判断が揺れ、結局は断りが発生します。
「医師を入れたら応需率が上がった気がする」では経営会議で投資対効果を議論できません。6院は応需率・入院率・断り理由の3指標を最低限月次で可視化し、改善サイクルを回しています。データの可視化が、運用モデルの継続的な改善を支えます。
外部医師を導入すると、常勤医の当直手当収入が減少します。基本給見直しや別インセンティブを併用しないと、「結局は常勤医が出ざるをえない」状態が温存されます。看護部については、運営委員会への参画・夜勤帯リーダーへの個別ヒアリングなどの対話設計が必須です。看護部視点の構造的負担と両立設計については、看護部が「受けないで」と言う本当の理由──夜勤負担と救急受入強化の両立設計で詳述しています。
「あの病院は受けてくれる」という救急隊の口コミは、応需率改善の副次効果として要請件数自体を増やします。月次の救急隊との連絡会議、不応需理由のフィードバック、ホットライン応需プロトコルの整備が、地域内での評判形成につながります。
成功事例と対比すると、運用モデルが機能していない病院には共通する3つの失敗パターンが見えます。
項目 | 内容 |
|---|---|
状態 | スポット派遣で枠を埋めるが、受入ルール・データ管理は手付かず |
結果 | コストはかさむが応需率は変わらない |
脱却ルート | 継続供給型への切り替え+受入ルール設計の並行着手 |
外部委託の選定基準と類型の詳細については、「当直の外部委託」という経営判断──2024年働き方改革後、2次救急病院が選ぶべきパートナーの条件で解説しています。
項目 | 内容 |
|---|---|
状態 | 外部医師を入れず、常勤医の当直回数増で対応 |
結果 | A水準(年960時間)の上限超過リスク、常勤医の離職増 |
脱却ルート | 段階的な外部医師導入+宿日直許可の部分取得 |
宿日直許可の部分取得(時間帯限定・診療科限定・輪番日除外)は、厚労省FAQでも明示的に認められています。
出典1:[厚生労働省「医師、看護師等の宿日直許可基準について」
(令和元年7月1日付け基発0701第8号・PDF)P3]
参照箇所:記3「所属診療科・職種・時間帯・業務の種類等を限定した部分許可」
出典2:[厚生労働省「医療機関の宿日直許可に関するFAQ」(2024年8月6日版・PDF)]
参照箇所:「宿日直許可の許可基準等について」セクション
・「輪番日以外の日であることを前提とした宿日直許可申請」が可能であること
・「時間帯を限定した宿日直許可の申請」「所属診療科・業務の種類を限った申請」 が可能であること
項目 | 内容 |
|---|---|
状態 | 応需率・入院率・断り理由を数値で追えていない |
結果 | 投資対効果が経営会議で議論できず、改善判断が遅れる |
脱却ルート | 月次でモニタリングする3指標の選定+ダッシュボード整備 |
3類型のいずれかに該当する病院は、運用モデルの設計段階で問題が発生しています。医師を増やすか減らすかではなく、設計を見直すことが先決です。
判断の組み合わせ次第で、経営インパクトはどこまで変わるのか。仮に、年間救急車受入件数1,800台・入院率30%・入院単価8万円/日・平均在院日数14日の中規模2次救急病院で試算します。
ケース | 応需率 | 年間救急受入数 | 年間入院数 | 推定年間売上 | 増収幅 |
|---|---|---|---|---|---|
ケース1:分散なし(常勤医依存) | 60% | 1,080台 | 324件 | 約3,629万円 | — |
ケース2:スポット派遣で補填 | 65% | 1,170台 | 351件 | 約3,931万円 | +約300万円 |
ケース3:外部医師+受入ルール | 90% | 1,620台 | 486件 | 約5,443万円 | +約1,814万円 |
ケース4:三位一体(最適化) | 95% | 1,710台 | 513件 | 約5,746万円 | +約2,117万円 |
【試算根拠】
年間入院数 = 年間救急受入数 × 入院率30%
推定年間売上 = 年間入院数 × 8万円/日 × 平均在院日数14日
ケース3とケース4を比較すると、応需率の差は5ポイント(90→95%)にとどまるものの、年間で約300万円規模の増収機会が発生します。長田病院の事例で年間3,600万円超の増収を実現できたのは、応需率向上に加えて入院率の改善(75.8%)と入院単価の改善が並行して動いたためです。
なお、本試算はあくまでも仮定の積み上げによる概算です。実額は病院規模・地域特性・DPC係数によって変動します。
出典:[厚生労働省「医師の働き方改革概要」P1]
参照箇所:A・B・C水準の時間外労働上限、2035年度末の段階的解消スケジュール
救急当直の負担分散は、以下の経営指標と密接に連動します。
関連指標 | 当直負担分散との関係 |
|---|---|
救急応需率 | 直接の改善対象。90%以上の到達で経営指標が動く |
病床稼働率 | 救急からの入院増加 → 稼働率上昇 |
救急医療管理加算(A205) | 救急入院症例の評価。応需率向上で算定機会増 |
入院単価(DPC) | 救急搬送症例は重症度が高く、DPC収益への寄与大 |
医師の離職率 | 当直負担軽減で常勤医の定着率改善 |
看護師の離職率 | 受入ルール設計と組み合わせで業務密度を平準化 |
これらを統合的に管理することで、運用モデルの再設計を起点とした病院経営の好循環を生み出すことができます。
2026年度診療報酬改定(2026年6月1日施行・本体改定率+3.09%)では、急性期病院の体系全体が「実績ベース」に再編成されました。
区分 | 主な要件 |
|---|---|
急性期病院A | 救急搬送年間2,000件以上、かつ全身麻酔1,200件以上 など |
急性期病院B | 救急搬送年間1,500件以上、または救急搬送500件以上かつ全身麻酔500件以上 など |
これらの要件は「中小病院にとってのリアルな生存ライン」として設計されており、当直医を確保し救急応需実績を積み上げない限り、到達不可能な水準です。運用モデルの再設計は、単独施策ではなく2026年改定対応の中核に位置付けられます。
▶ 急性期病院A・Bの要件について詳しく:【急性期病院の生存ライン】2026年度改定が突きつける現実
▶ 救急医療管理加算の経営インパクト:救急医療管理加算とは?算定要件・加算1と加算2の違い
▶ 外部委託の選定基準について:「当直の外部委託」という経営判断
救急当直の負担を分散できている病院の運用モデルは、規模・地域を問わず、共通パターンに集約されます。冒頭で示した3つの結論を再提示します。
医師働き方改革施行から約2年、当直負担を分散できている病院に共通する運用モデルは「外部医師×受入ルール×データ管理」の三位一体である
規模・地域を問わず再現性があり、谷津保健病院(千葉県・262床)では輪番日応需率が60%台→90%超、長田病院(福岡県・182床)では年間3,600万円超の増収を実現
失敗パターンは「医師補充のみ」「常勤医依存の継続」「KPI不在」の3類型に集約され、運用モデル設計の段階で回避可能
医師個人の頑張りで救急当直を維持する時代は、2024年4月で構造的に終わりました。これからの病院経営者に求められるのは、運用モデルを組織として設計する力です。本稿の6院の事例が示すのは、その設計は規模や地域に関係なく実装可能であり、応需率と経営収益の両立を実現するということです。
ドクターズプライムワークは、「救急車のたらい回しを解決し、病院経営を黒字化する」ことを掲げる救急改善プラットフォームです。本稿で紹介した6院をはじめ、複数の2次救急病院で運用モデルの再設計を支援し、応需率60%台から90%超、年間数千万円単位の増収という成果を再現してきました。
A:「外部医師の継続供給」「受入ルールの明文化」「応需率・入院率の月次データ管理」の3つを同時並行で実装している病院です。1つだけでは応需率は上がらず、3つが揃って初めて運用モデルとして機能します。
A:可能です。本稿で紹介した6院のうち、長田病院(182床)、山元記念病院(150床)、東京衛生アドベンチスト病院(186床)、芳珠記念病院(183床)は150〜200床帯で、いずれも応需率や経営指標の大幅改善を実現しています。
A:医師少数区域でも支援事例があります。山元記念病院(佐賀県・150床)は、外部医師を「医局負担を増やさない緩衝材」として位置付け、医局との関係を維持しながら稼働率90%超を達成しました。常勤医を増やせない地域では、医局共存×外部医師活用のモデルが現実解です。
A:救急運営委員会への看護部長参画、夜勤帯リーダーへの個別ヒアリング、タスクシフトによる業務密度の平準化が有効です。東京衛生アドベンチスト病院は、看護師の心理的安全性に着目した組織変革を起点に応需率を約10%向上させており、医師の質と看護部合意の両輪が機能した好例です。
A:応需率・入院率・病床稼働率を月次でモニタリングし、入院単価×平均在院日数で売上換算するのが基本です。本稿の試算では、応需率60%→90%の改善で年間約1,800万円の増収機会が発生する計算になります。長田病院の実例では、初年度で年間3,600万円超の増収が実現しました。
A:宿日直許可は「軽度の又は短時間の業務」に限って認められます。救急応需が常態化する時間帯は外部医師に担当させ、軽度業務に収まる時間帯のみ宿日直許可を取得する、という切り分けが現実解です。厚労省FAQも「時間帯限定・診療科限定・輪番日除外」の部分許可を明示的に認めています。
A:「外部医師の継続供給+受入上限ルール」を組み合わせた谷津保健病院のモデルが、規模・地域を問わず再現しやすい設計です。輪番日応需率を60%台→90%超に改善した実績があり、200〜300床帯の2次救急病院の標準モデルとして応用しやすい構造です。
A:「常勤医ごとの当直回数・要請数の数値化」から始めることを推奨します。可視化が、すべての設計の出発点です。数値化された後、外部医師の調達経路の確立 → 受入ルールの明文化 → 月次レビューの設計、という順で進めるのが一般的です。
本記事は、厚生労働省の以下の公式資料を参照しています。
[厚生労働省「医師の働き方改革概要」P1]
- 参照箇所(PDF冒頭):
制度の根本理念(医師の健康確保と医療の質・安全の両立、 持続可能な医療提供体制の維持)
- 参照箇所(PDF下部):
・A・B・連携B・C水準の時間外労働上限
(A:960時間、B/連携B/C:1,860時間)
・2035年度末を目標とした段階的解消スケジュール
・面接指導の義務化、休息時間確保(勤務間インターバル/代償休息)
※すべてP1に集約
[厚生労働省「医師、看護師等の宿日直許可基準について」
(令和元年7月1日付け基発0701第8号F)P1-P3]
- 参照箇所:
P1-P2「記1(2)」宿日直許可対象となる「軽度の又は短時間の業務」
の具体例(少数の要注意患者の状態変動への対応、外来患者の問診等)
・P3「記3」所属診療科・職種・時間帯・業務の種類等を限定した
宿日直許可の部分許可(病棟宿日直業務のみに限定など)
[厚生労働省「医療機関の宿日直許可に関するFAQ」
(2024年8月6日版)]
- 参照箇所:「宿日直許可の許可基準等について」セクション内
・「輪番日以外の日であることを前提とした宿日直許可申請」
が可能であること
・「時間帯を限定した宿日直許可の申請」「所属診療科・業務の種類
を限った申請」が可能であること
執筆・編集・監修
執筆・編集:ドクターズプライムワーク編集部
「救急車のたらい回しをゼロにする」をビジョンに、100病院を超える支援実績を持つ救急改善プラットフォーム「ドクターズプライムワーク」を運営しています。現状を可視化する「データ分析」と、病院が主体となって医師を確保できる「採用プラットフォーム」を一体で提供し、「自分らしく選べる医療をすべての人に」届けるための基盤を構築しています。 当編集部では、医療機関の変革に伴走する中で得られた現場特有の課題や解決のヒントを整理し、病院運営の質を高める有益な情報を発信しています。
監修:田 真茂(株式会社ドクターズプライム 代表取締役・医師)
聖路加国際病院救命救急センターで当直帯責任者を務めた後、2017年に株式会社ドクターズプライムを創業。詳細プロフィールは、会社紹介ページの監修・運営者情報をご覧ください。
参考情報:厚生労働省、消防庁、中医協、四病協資料、自社実績データ



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