更新日:
2026/5/14

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keyboard_arrow_right「循環器内科 当直」で検索している経営者・副院長・循環器科部長の皆様は、すでに現場の壁に直面されている当事者でしょう。冬場の患者増加に伴う循環器内科の医師不足、平日夜間の内科医師2名体制での当直対応、循環器専門医配置を中心とした体制──多くの病院経営層との対話を通じて見えてきた共通の悩みが、循環器救急の受入体制です。本稿では、循環器内科医が1〜2人しかいない夜間にSTEMIや急性冠症候群をどう受けるかという問いに対し、断り率が高まる3つの構造要因、Door-to-Balloon 90分達成の院内設計、都市部における循環器領域を強みとする急性期病院(200床規模)の事例、外部医師活用の選定フレームを構造的に整理。
論点 | 結論 |
|---|---|
循環器救急が回らない3つの構造要因 | ①循環器内科医の絶対数不足(冬期需要増)、②1〜2人当直体制の限界、③カテーテル室・PCI体制の維持コスト |
冠動脈疾患の受入判断フレーム | STEMIはDoor-to-Balloon 90分、NSTE-ACSはGRACE/TIMIスコアでリスク層別化 |
自院の機能定義 | 24時間PCI可能病院/Drip-and-Ship病院/即時転送病院の3類型 |
経営判断の3つの選択肢 | ①循環器専門医の常勤強化/②ER型総合医+循環器オンコール/③外部救急医+循環器オンコール |
実証された改善事例 | 都市部の循環器特化型病院において、年間救急搬送件数約1,000件を目標とする一方で実績が目標を下回っていたケースに対し、複数疾患対応医師の導入で応需率の大幅改善(70%台から90%台へ)を目指した事例 |
循環器内科の夜間救急が回らない原因は、循環器専門医の絶対数不足、1〜2人当直体制の限界、カテーテル室・PCI体制の維持コストという3つの構造要因の重なりです。本課題を個々の医師の技量や勤務体制の問題として片付けてしまっては、院内の合意形成や経営判断としての実効的な打ち手は見出せません。
消防庁の「令和6年中の救急出動件数等(速報値)」(2025年3月28日公表)によれば、令和6年の救急出動件数は771万7,123件と過去最多を更新し、そのうち高齢者(65歳以上)の割合は約63%に達しています。循環器領域における特有の課題として、多くの病院経営層との対話から浮かび上がるのが、「冬場の患者増加に伴う循環器内科の医師不足支援」という発言です。循環器疾患の救急搬送は冬期に明確なピークを持つ季節変動があり、平時の体制では応需できない時間帯が構造的に生まれます。
2次救急を担う多くの病院で、循環器内科医は2〜4名規模です。当直輪番に組み込むと各医師が週1〜2回の当直に入る計算になります。2024年4月から施行された医師の働き方改革によって、勤務医の時間外・休日労働は、原則として年960時間以内・月100時間未満(A水準)に制限されました。冬期の急性冠症候群・急性心不全の搬送ピークと重なると、上限枠の制約と需要増が同時に発生し、構造的に応需できない時間帯が生まれます。
実際の医療現場において、現実的な選択肢として採用されているのは、「平日の夜間は内科医師2名体制で当直対応」が中規模病院の標準です。常勤医1名の退職・休職で即座に体制が破綻する脆弱性を抱えています。さらにSTEMIや急性心不全は同時並行対応が必要な症例があり、1〜2人体制では対応上限に達しやすいという構造的制約があります。「3月末までの循環器医師1名の短期的な不足」のように、年度末・年度始の医師欠員が発生すると、応需率は直接影響を受けます。
Door-to-Balloon 90分を達成するには、循環器医・検査技師・看護師・カテ室の同時確保が必要です。夜間に常時待機させるコストは中規模病院では年間数千万円規模にのぼり、PCI可能病院としての機能維持自体が経営課題になります。
「循環器の夜間救急を受けるには循環器専門医を増やすしかない」という発想では、2次救急・循環器領域の中核病院の現実解は見えてこないのではないでしょうか。次節で、冠動脈疾患の受入判断基準を整理します。
循環器救急の中核である冠動脈疾患(STEMIとNSTE-ACS)は、症状別の医学的判定基準と自院の機能定義の2軸で受入範囲を明確に線引きできます。この線引きを院内標準として文書化することが、属人化の解除と応需率改善の前提になります。
STEMIの治療には、発症後可能な限り早期に再灌流療法を行うことが生命予後の改善に重要です。病院到着(Door)からPCI(Balloon)までの時間はDoor-to-Balloon時間と呼ばれ、90分以内を国際標準として推奨する指標が広く採用されています。具体的にはDoor-to-Balloon時間が90分以内であること、または90分以内に再灌流療法が施行された患者の割合が50%以上という指標が用いられます。
来院後10分以内に12誘導心電図を実施し、ST上昇または新規左脚ブロックを確認する
確認後、循環器内科医への即時コンサルトとカテ室準備を並行実行する
PCI不可施設の場合は、t-PA(血栓溶解療法)またはPCI可能施設への即時転送判断(Drip-and-Ship戦略)を標準対応に統一する
NSTE-ACSのリスク層別化には、GRACEスコアとTIMIスコアが国際標準として用いられます。高リスク症例は早期侵襲的戦略(24時間以内のカテーテル検査)、中〜低リスクは保存的加療で観察可能、という運用が標準です。
トロポニン値推移・心電図変化・症状持続時間に基づくリスク評価フローを院内標準化する
高リスク症例の3次救急への転送判断ラインを明文化する
中〜低リスク症例の入院管理パスを整備する
冠動脈疾患の受入設計は、自院が「24時間PCI可能病院」か「Drip-and-Ship病院」か「即時転送病院」かを経営判断として定義することから始まります。
自院の機能 | STEMIの対応 | NSTE-ACSの対応 |
|---|---|---|
24時間PCI可能病院 | 自院でPCI(Door-to-Balloon 90分目標) | 自院で侵襲的戦略・保存的加療を選択 |
Drip-and-Ship病院 | 自院で初期治療開始+PCI可能施設へ転送 | 高リスクは転送、低〜中リスクは自院入院 |
即時転送病院 | 救急外来で安定化+即時転送 | 全例転送または救急隊の搬送先選定 |
判断基準と機能定義が文書化されていない病院では、当直医個人の経験値とリスク感覚に依存した「念のため断る」が発生し続けます。次節では、関東圏の心血管疾患治療を担う中核病院での実装事例を匿名化で紹介します。
循環器救急の受入設計は、「医師を増やす」ではなく、「判断基準の文書化+機能定義+複数疾患対応可能な医師の導入」という3つの組み合わせで、専門性の高い中核病院でも応需率を構造的に改善できます。
背景:
同院は、令和8年度診療報酬改定における特定集中治療室管理料の施設基準見直し(救急搬送件数年間1,000件以上等の病院実績要件化)を見据え、年間救急受入目標を1,000件と設定していました。しかし、昨年度の実績は目標の7割程度に留まっていました。その原因は循環器専門医に限定された体制にあり、循環器以外の内科系疾患の受入で「断り」が多発していたことです。循環器科を中心とした専門性の高い体制ゆえに、「専門外の疾患は受け入れにくい」という構造的な課題が、年間300件の受入機会損失を生んでいました。
理事長クラスは次のように課題を認識していました。「ICUベッド維持のためには、循環器専門医に限定された体制の強化が必須であり、内科系疾患を中心に救急応需率を向上させるためには、専門外の疾患も診察可能な医師の導入が必要」。
実装した施策(3点):
複数疾患対応可能な医師の追加配置:循環器専門医のみの体制に、内科系疾患全般を診察可能な医師(救急総合医・内科総合医)を加える設計。循環器専門医はSTEMI・急性心不全等の循環器中核疾患に集中し、内科系疾患は総合医が初期対応する役割分担
冠動脈疾患の受入判断フローの文書化:STEMIのDoor-to-Balloon 90分達成のための初期対応プロトコル、NSTE-ACSのGRACE/TIMIスコアによる層別化フローを院内標準として整備
応需率の継続的可視化:循環器系要請と内科系要請の応需率を分けて月次集計し、運営委員会で振り返るデータ基盤の整備
目標と期待される効果:
救急受入件数:年間700件→1,000件(ICUベッド維持に必要な水準)
応需率:70%→90%(特に循環器系要請の応需率を9割程度に)
専門外疾患の受入機会の構造的回復
循環器領域の中核病院においても、「循環器専門医を増やす」だけでは応需率は構造的には動きません。「循環器専門医+複数疾患対応可能な医師+判断基準の文書化」の組み合わせが、循環器救急の受入設計の現実解です。なぜなら専門性の高い中核病院は、循環器症例を受けるための体制と循環器以外の内科系症例を受けるための体制が別物だからです。専門医の増員だけでは、内科系症例の応需率には影響しません。
自院の循環器救急体制の「現在地」を、以下の8項目で点検します。
確認項目 | チェック |
|---|---|
循環器内科医の常勤体制(医師数・当直可能医師数)を把握している | □ |
自院が「24時間PCI可能病院」か「Drip-and-Ship病院」か「即時転送病院」かを機能定義している | □ |
12誘導心電図の10分以内実施プロトコルが整備されている | □ |
STEMI受入時のDoor-to-Balloon 90分達成のための院内動線が設計されている | □ |
NSTE-ACSのGRACE/TIMIスコアによるリスク層別化が院内標準化されている | □ |
致死性不整脈(VT/VF)への即応体制(AED・除細動器・抗不整脈薬)が整備されている | □ |
急性心不全のCS分類による初期対応プロトコルが文書化されている | □ |
1〜2人当直時のオンコール呼び出し基準と外部医師活用の判断基準が明文化されている | □ |
8項目中5項目以上にチェックが入らない場合、循環器救急の受入設計の再構築が経営判断のテーブルに載るタイミングと考えられます。
1〜2人当直体制から脱却するルートは、自院の病床規模と循環器医構成に応じて、3つの選択肢から選ぶのが現実解です。どの選択肢も「正解」にはなり得ますが、コスト構造と実現可能性は大きく異なります。
選択肢 | 向いている病院 | メリット | 注意点 |
|---|---|---|---|
①循環器専門医の常勤強化 | 300床以上・24時間PCI対応施設 | Door-to-Balloon 90分を自院完結 | 医師紹介手数料が常勤年収の20〜30%、採用競争激しい |
②ER型総合医+循環器オンコール | 150〜300床・2次救急中核病院 | 初期対応を総合医、専門科はオンコール集中 | オンコール呼び出し基準の文書化が前提 |
③外部救急医+循環器オンコール | 100〜200床・心血管疾患に特化した病院含む | 1〜2人当直の負担解消、複数疾患対応で応需率底上げ | 受入ルール設計支援があるサービス選定が必要 |
選択肢①の常勤強化ルートを選ぶ場合、紹介会社依存の構造と採用ポートフォリオの再設計が経営課題となります。このテーマは関連記事「医師紹介会社の手数料が下がらない構造」で詳述しています。
多くの病院経営層との対話の中で、最も多く選択されているのは、②と③の組み合わせです。日勤帯はER型総合医+循環器専門医オンコール、夜間・輪番日は外部救急医+循環器オンコール、という棲み分けで、属人化の解除と働き方改革への対応を同時に満たす設計になります。
この設計は、働き方改革の時間外労働上限(A水準960時間)と、循環器救急の応需体制維持を両立させる構造でもあります。「外部医師は循環器専門医の代替ではなく、循環器専門医の枠を守るための緩衝材」という位置づけが、循環器救急にもそのまま当てはまります。外部医師活用と宿日直許可取得の両輪設計の詳細は、関連記事「宿日直許可が取れない病院で打てる選択肢」で整理しています。
外部医師を活用する際、サービス選定の観点は①医師の質(救急応需力)、②受入ルール設計支援、③データ分析による可視化、④契約柔軟性(時間帯・診療科・輪番日限定の可否)、⑤複数病院での再現性の5つです。この5観点の詳細は、関連記事「当直の外部委託の3類型と選定5観点」で整理しています。循環器救急においては、特に②の「受入ルール設計支援の有無」と③の「循環器系要請と内科系要請を分けて可視化できるか」が、応需率が動くかどうかの分岐点になります。
循環器救急の受入設計は、循環器専門医の確保だけでは成立しません。判断基準の文書化・機能定義・複数疾患対応可能な医師の導入という3点セットが揃って初めて応需率が動きます。この3点セットを自院単独で整えるのが難しい場合は、救急改善プラットフォーム型のサービスを検討する段階に来ていると言えます。
循環器救急の受入を成立させる視点は、次の3点に集約できます。
循環器救急が回らないのは「個人」ではなく「構造」の問題です:循環器専門医の絶対数不足/1〜2人当直の限界/PCI体制の維持コストという3つの構造要因が重なっています。医師個人の技量論で片づけてしまうと、院内合意も経営判断も見えてきません
冠動脈疾患の受入判断は「症状別基準」と「自院の機能定義」の2軸で線引きします:STEMIはDoor-to-Balloon 90分、NSTE-ACSはGRACE/TIMIスコアで層別化。自院が「24時間PCI可能病院」か「Drip-and-Ship病院」か「即時転送病院」かを経営判断として定義することが、応需率改善の出発点になります
2次救急・専門性の高い中核病院の現実解は「ER型総合医+外部救急医+循環器オンコール」の組み合わせです:循環器専門医の枠を守るための緩衝材として外部医師・複数疾患対応医師を位置づける発想が、働き方改革下での循環器救急受入を成立させます
循環器救急の受入設計について、5問で自院の現在地を点検します。
確認事項 | チェック |
|---|---|
循環器内科医2名以上で夜間当直を週5日以上カバーできているか | ◻︎ |
自院が「24時間PCI可能病院」か「Drip-and-Ship病院」か「即時転送病院」かを機能定義しているか | ◻︎ |
STEMI受入時のDoor-to-Balloon 90分達成プロトコルが院内標準化されているか | ◻︎ |
1〜2人当直時のオンコール呼び出し基準が明文化されているか | ◻︎ |
夜間・輪番日の循環器救急をカバーする外部医師の活用を経営判断のテーブルで検討しているか | ◻︎ |
5問中3問以上「いいえ」の場合、循環器救急の受入設計の再構築が経営判断のテーブルに載る段階と考えられます。
自院の循環器救急の受入設計、および1〜2人当直体制からの脱却策を検討したい経営者・副院長・循環器科部長の方は、救急応需体制の改善に特化した外部プラットフォームサービスの活用を検討するのも一つの手段です。救急対応に習熟した医師の継続的な確保により、循環器1〜2人当直の負担を構造的に解消する選択肢と、救急搬送データ・応需率の可視化による循環器系要請と内科系要請の構造化の両面から、循環器救急の受入設計を強力にバックアップします。本記事で触れた関東圏の心血管疾患治療を担う中核病院(年間救急受入目標1,000件・実績約700件、応需率70%→90%目標)のように、「循環器専門医に限定された体制」から「複数疾患対応可能な医師の導入」への移行を検討する病院が急増しています。
救急応需率の改善や病院運営の強化について、さらに理解を深めていただける関連記事をご用意しております。ご関心のあるテーマに合わせて、ぜひあわせてご覧ください。
救急応需率を組織として改善する
応需率を組織として改善する5つの戦略 ▶︎ 関連記事:『救急応需率を改善する5つの組織戦略』
当直医確保の戦略総論 ▶︎ 関連記事:『救急当直医の確保』
病院経営黒字化への影響設計 ▶︎ 関連記事:『病院経営黒字化の設計図』
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常勤医との対話設計 ▶︎ 関連記事:『救急受入強化に反対する常勤医を動かす対話設計』
看護部との円滑な合意形成 ▶︎ 関連記事:『看護部が「受けないで」と言う本当の理由』
循環器常勤強化と採用ポートフォリオ ▶︎ 関連記事:『医師紹介会社の手数料が下がらない構造』
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外部委託の3類型と選定観点 ▶︎ 関連記事:『当直の外部委託の3類型と選定5観点』
宿日直許可と外部活用を両立させる設計 ▶︎ 関連記事:『宿日直許可が取れない病院で打てる選択肢』
時間帯別(夜間・休日等)の要員配置 ▶︎ 関連記事:『夜間・土日・GW・年末年始の要員配置』
診療科別の受入体制事例
消化器系救急の受入設計 ▶︎ 関連記事:『消化器系救急の「断れない」受入設計』
脳卒中救急の体制整備 ▶︎ 関連記事:『脳神経外科・脳卒中救急の受入体制』
参照
消防庁「令和6年中の救急出動件数等(速報値)」2025年3月28日公表
日本循環器学会「ガイドライン一覧」
執筆・編集・監修
執筆・編集:ドクターズプライムワーク編集部
「救急車のたらい回しをゼロにする」をビジョンに、100病院を超える支援実績を持つ救急改善プラットフォーム「ドクターズプライムワーク」を運営しています。現状を可視化する「データ分析」と、病院が主体となって医師を確保できる「採用プラットフォーム」を一体で提供し、「自分らしく選べる医療をすべての人に」届けるための基盤を構築しています。 当編集部では、医療機関の変革に伴走する中で得られた現場特有の課題や解決のヒントを整理し、病院運営の質を高める有益な情報を発信しています。
監修:田 真茂(株式会社ドクターズプライム 代表取締役・医師)
聖路加国際病院救命救急センターで当直帯責任者を務めた後、2017年に株式会社ドクターズプライムを創業。詳細プロフィールは、会社紹介ページの監修・運営者情報をご覧ください。
参考情報:厚生労働省、消防庁、中医協、四病協資料、自社実績データ
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